出会
海堂先輩とは結局、近づくことも嫌われることもなく月日が流れていった。
2年生の夏、満を持して挑んだ県大会で僕らは奇しくも三位入賞に終わった。
下馬評通りなら本来優勝し、全国大会出場の切符を手にしているはずだった。
そして、海堂先輩含め3年生は引退した。
先輩たちが去ったあとの体育館はやけに広く、寒く感じた。
胸に小さな穴が空いたような夏の終わりだった。
時が経ち、僕は高校に進学した。
勉強は好きな方だったので、近所の進学校に進んだ。
高校は校舎も中庭も、中学校より一回り大きくてわくわくした。
でも体育館だけは、同じ大きさだった。
僕は高校では部活に入らないつもりでいた。
ところが、中学から一緒に進学してきた木島に猛烈に誘われ、ここでもバスケ部に入部することにした。
「和葉はチームを裏で支えるのがうまいんだよ。影の大黒柱だよ。」
と木島は調子のいいことを言う。
「影だの裏だの、それ褒めてんの?木島はいいよな。バスケうまいしスタメンだったし。」
僕は口を尖らせてみせた。
実際、木島は中学でエースだった。
背は高くないが、遠方からのシュートが良く入るのでチームの得点源だった。
放課後、2人でバスケ部の見学に行くことにした。
僕はそこで、忘れられない出会いをすることになる。
まだ春風の心地よい、さわやかな体育館。部員の掛け声と、バッシュの床を蹴る音。
(帰ってきた!)
そんな懐かしいような、不思議な感覚に胸が温かくなった。
ふと横を見ると、同じく見学に来たと思われる女の子がいた。
目が合った。
「あのー、先輩ですか?」
その子が聞いてきた。
「いや、1年生です。」
僕が答える。
その子は視線を木島に移し、
「あ!もしかして、北中?」
と尋ねてきた。
「正解!え、なんで分かったの?」
驚きだ。僕らは市立北中出身だ。
「そちらの木島さんを県大会や国体でよく見かけたから。」
木島よ、有名人じゃないか。
当の木島はその子をじっと見て...
「あ!もしかして東中のサクラさん?」
木島は覚えがあるようだ。
サクラさんはコクンと頷いた。
後で聞いたが、彼女は市立東中の副キャプテンだったそうだ。
名は佐倉咲。
笑うとエクボが可愛い、気の強い小柄な女の子だった。
正直に言おう。僕はこの時、彼女に一目惚れをしていた。
こんなに可愛い子、なんで今まで気づかなかったんだろう?
中学の試合で見かけているはずなのに。
そして木島に言われた。
「和葉は視野が狭いんだよ。和葉と佐倉さん同じクラスだよ?」
本当だった。
僕は新しいクラスに中学の知り合いがおらず、隣の席になった子となんとか友達になれたが、他の人はまだ名前も顔も分からなかった。
佐倉さんは弾けるように明るくて、すぐにクラスの賑やかグループの中心になった。
対して僕は、少人数で静かに過ごす方が落ち着くタイプだった。
同じクラスなのに、世界がまるで違う——そんな気がした。




