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僕が私になるまで  作者: 海丸ひとつ


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21/25

研修

研修は2日間に渡り行われた。

開催は隣町ということもあり、僕は久々に外泊することにした。

この時若干、旅行気分だったことは否めない。


会場に着くと、朝からたくさんのマスク姿の受講者が出入りしていた。

講師がその道で有名な識者であるためか、参加者は多く、名簿を見ると名だたる大手の企業からも研修に訪れていた。

受け取った研修のシオリを見ていると、グループワークの時間が多いことに気付いた。

僕は根本的に人見知りのため、にわかに緊張し始めた。

(早く終わったら、やり残した仕事をしようかな。)

などと考えているうちに、研修が始まった。


まずはテーブルワークだった。

仕事上の対人関係を良好に保つための心構えや、言葉遣いのポイントを学んでいく。

電話応対や接客マナーなど、社会人の基本も学んだ。

(ただのコンプラ研修かと思ったけど、内容が幅広く実用的で、勉強になるなぁ。)

次第に僕は真剣に学ぶ姿勢になっていった。


初日の昼からはグループワーク中心で、午前中に習ったポイントを意識しながら意見交換を行った。

時折トンチンカンな事を言う参加者には、講師から鋭い指摘が飛んだ。

グループを何度か変えていき、いよいよ初日最後の演習となった。

まずは互いに名刺交換をし、軽い自己紹介をする。

僕はなぜか、その内の一人の男性が気になって仕方が無かった。

背が高く整った目鼻立ちで、でも場違いなほど生やしたヒゲがマスクから盛大にはみ出している。

(なんでこの人はこんなにヒゲをたくさん生やしているんだ?)

僕は自分より一回り年上のこの強面の男性に、とても興味を持った。

話してみると容姿に似合わず、紳士的で話が上手く面白い人だった。

名刺を見ると、地元中堅企業の技術部係長だった。

彼も僕の名刺を見て言った。

「君はエンジニアか。これからうちの会社と付き合いがあるかもしれないね。よろしく。」

そう言ってニコっと笑った顔が、僕には可愛く見えた。

(クマさんみたいだ。)

それからワークショップを無事に終え、解散となった。

さてホテルに帰ろうかと荷物をまとめていたところ、先程のクマさん――篠崎さんが声をかけてきた。

「もう帰るのかい?良かったらこのあと何処か食べに行こうよ?」

研修の効果があったのだろうか、僕は珍しく社交的になって、快諾した。


僕と篠崎さんのほかに、研修参加者数名で食事をすることになった。

異分野の職人達と話すのは思いのほか楽しく、仕事人間の僕は夢中で話に聞き入った。

お約束のお酒が入り、まだあと1日研修が残っているというのに、酔いつぶれるほど飲んでいる人もいた。

篠崎さんは変わった経歴の人だった。家業は農家で、サラリーマンをしながら猟もするそうだ。長年勤めた会社だが、家業を継ぐために仕事を辞めるか悩んでいるとのことだった。

「この辺でも猟師がいるんですね。」

僕は興味津々だった。

「あぁ。珍しいかい?良かったら今度鉄砲の大会があるから、見においでよ。」

そう言ってニカッと笑った顔が、印象的だった。

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