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僕が私になるまで  作者: 海丸ひとつ


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18/25

初雪

引越してしばらく経つのに、荷解きの終わっていない部屋。

僕は仕事の復習をしていた。

新しく始めたIT会社での仕事は順調で、人間関係に悩むこともなく、充実した日々が送れていた。


ふと、携帯の通知が気になった。

アイカからの連絡に備え、無意識に携帯に目がいくようになっていた。

イベントで出会ってからというもの、僕らは頻繁に連絡を取り合った。

彼女との会話はいつも楽しく、生活に色彩を与えてくれた。

僕はまた彼女に会いたくなっていた。

耳の奥で、麻里奈に言われた言葉が反芻する。

「本気で付き合いたいなら戦略練ってアプローチしないと。――」

よしっ!という掛け声とともに携帯を握って立ち上がった。

そのまま、アイカにメッセージを送った。

“また会いたいので、都合の良い日時を教えてください。”

すぐに返事が来て、週末デートの約束を取り付けた。

再び会えることが嬉しくて、笑みがこぼれた。


待ちに待ったデート当日。

といっても、アイカと初めて出会った日から1ヶ月も経っていない。

僕は髪型や服装をしっかり整え、緊張した面持ちで待ち合わせの場所で待っていた。

しかし、約束の17時が来ても彼女はなかなか来なかった。心配になって彼女に電話をしてみたが、繋がらない。

不安になってうろうろと歩き回っていたところに、30分遅れでようやくアイカがやって来た。

「遅れてごめんなさい。」

彼女は申し訳なさそうに言った。

「大丈夫だよ。」

僕は彼女に無事会えたことで、心から安堵していた。

聞くと、友達に捕まって遅くなったそうだ。

気を取り直し、二人は日暮れ前の街へ繰り出した。

ちょうど晩ご飯時だ。

「アイカは夕ご飯、何が食べたい?」

僕は緊張を悟られまいと、明るく話しかけた。

「うーん、走ってきたから白いご飯がたくさん食べたい。」

僕は前もって調べ尽くした周辺の飲食店を脳内に巡らせた。

(彼女は今日、白基調の服装なので焼肉は無し。ご飯となると和食かな。たくさん食べられるとなると――)

うーーん...と目を瞑って悩んでいると、彼女が「あっ」といって指さした。

「あの店にしない?」

それは大衆居酒屋だった。

僕らはその店で楽しくお酒を飲み、気が付くと夜になっていた。

「もうこんな時間だ。そろそろ帰ろうか。」

本当はお店をハシゴしたかったけど、あまり遅くなると彼女の帰路が心配だ。

「もう少し話さない?」

そう言い出したのは、アイカの方だった。僕は心配を態度に出したが、彼女に大丈夫だからと押し切られた。

2軒目を探して歩き出したが、通りがかった駅前のイルミネーションが綺麗だったので、外のベンチで話すことにした。

「寒いね。」

僕が言うと、彼女は笑った。

「前もそう言ってたよ。」

笑顔の彼女が冬の光のなかであまりに美しく、僕は引き込まれそうになった。

(なんて綺麗なんだ。)

お酒を飲み過ぎたせいか、酔った頭に歯止めがきかなかった。

ドクンと波打った心臓の勢いそのままに、口から想いが溢れ出した。

「アイカ、僕は君のこと、好きになったみたいだ。」

そう言った途端、我に返った。

まだ告白するつもりでなかったのに。

慌てて話を変えようとした僕に、彼女は優しくこう言った。

「嬉しい。わたしもカズが好き。」

瞬間、時が止まった気がした。

僕は言葉が出ず、アイカを見つめたまま固まった。

彼女は優しい顔のまま、そっと僕にキスをした。

暖かい氷に包まれて、僕は動けなかった。

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