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僕が私になるまで  作者: 海丸ひとつ


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13/25

受容

あの日僕は、麻里奈にすべてを打ち明けた。

アルバイトで苦い思いをしていることや、セクシュアリティのこと。

――そしてナツキチと田辺さんのこと。

ひとつひとつ打ち明けていくうちに、心が軽くなっていくのを感じた。

麻里奈は真剣に耳を傾けてくれた。

僕はセクマイであることを不快に思われないか心配していたが、杞憂だったようだ。

「カズ、今まで辛かったんだね。私も今までカズを傷つけたことがあったかもしれない。」

麻里奈は分かろうとしてくれた。

僕はそのことが嬉しくて、温かくて、涙が出そうになった。

麻里奈は厳しい助言もしてくれた。

「カズは奥手だからチャンスを取り逃がすんだよ。本気で付き合いたいなら戦略練ってアプローチしないと。」

確かにそうだと思った。しかし、僕は本気で付き合いたかったのだろうか?

「僕と付き合うことが、彼女にとって良いことだと思えなくて――。」

そんな卑屈な僕に、麻里奈は喝を入れてくれた。

「良いことかどうかは、彼女が決めるの!相手のことを思いやるのはカズの良いところだけど、自分を貶めるのはダメだよ。」

そして、こうも言ってくれた。

「カズはいい男だよ。もっと自信持って。」


ちょうどその時、麻里奈にヘルプを頼まれていたヒーコが到着した。

着替えや、温かい食料を持ってきてくれた。

僕はヒーコにも、麻里奈にしたのと同じ話をした。

ヒーコはゆっくり頷いて、こう言った。

「私はカズがマイノリティだって、気付いてたよ。だって、私もマイノリティだもん。」

今度はこちらが驚く番だった。

「でもヒーコ、君は見た目は完全な女性だし、彼氏だっているじゃないか。」

ヒーコは少し笑って、教えてくれた。

「私はバイなの。男性にも女性にも恋することができるんだよ。」

ヒーコはナゼか誇らしげだった。

暴露大会が終わると、僕らは解散した。

後日、病院で卒倒の原因を検査したが、確かな理由は分からなかった。

僕はコンビニのバイトを辞めることにした。


それからは卒論制作に専念した。

乱れた生活習慣を見直し、自炊にも励んだ。

生活が整うと、頭が冴えて論文も捗った。おかげで僕は、卒論発表を無事に終えることができた。結果は最優秀賞こそ逃したものの、優秀賞を取ることができた。


「カズ、おめでとう。」

そう声を掛けてきたのはナツキチだった。ナツキチも卒論発表をしたが、入賞には至らなかった。

「ありがとう。ナツキチもお疲れ様。」

「カズの入賞祝いに、みんなで飲みに行こうぜ!」

ナツキチは上機嫌でそう言った。

僕は恋敵だったはずの奴に、この時清々しさを感じた。

(ナツキチには、敵わないな。)

その晩、麻里奈やヒーコはもちろん、卒論発表を終わらせた同期生の皆と飲み明かし、朝まで騒いだ。

久しぶりに腹の底から笑い、皆と一緒が楽しいと感じた。

「カズ、また飲みすぎだよ。」

麻里奈に小突かれた。

「今日は飲ませてよ。」

僕も上機嫌だった。


そして楽しくて切なくて、苦い味のした大学生活は終わりを迎えた。

最後まで、ナツキチに田辺さんとのことは聞けなかった。


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