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僕が私になるまで  作者: 海丸ひとつ


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11/25

予感

努力の甲斐あってか、僕は実家近くのゼネコンに就職が決まった。

全国区ではないが、上場している企業だ。


友人たちも次々と就活を終え、あとは大学の卒論に力を入れるばかりとなった。


この頃、僕は大学の研究室で知り合った後輩の女の子と仲良くなっていた。

彼女はとても人懐っこく、勉強の相談に乗るうちに、公私ともに一緒にいる時間が長くなっていった。

人に頼られる経験の乏しかった僕は、彼女に特別な感情を抱くようになっていた。


ナツキチと一緒に自習室で論文を書いていたある日のこと。

「こんにちは、和葉先輩。」

淡いベージュの膝丈ワンピースに、薄手のカーディガン。

足元は低めのパンプスで、髪は耳にかける程度に整えられていた。

ふわっと石鹸の香りが漂う。

「おう。珍しいね、自習室に来るの。」

彼女に声を掛けられ、急に顔が熱くなるのを感じた。

彼女はふとナツキチの存在に気づき、

「お友達と一緒の時にすみせん、また今度にしますね。」

そう言って立ち去ろうとした。

「大丈夫だよ。何か聞きたいことがあったんじゃないの?」

僕は慌てて引き留めた。

「研究室の子?」

ナツキチがこれまた珍しく興味を持った。

「うん、同じ研究室の田辺さん。」

本名は田辺美保だけど、ファーストネームは言わなかった。

「こちらはナツキチ。僕の友達だ。」

田辺さんの方にも、自慢の友を紹介した。

彼女の相談に乗った後、三人で他愛の無い話をした。話は盛り上がり、その晩三人で飲みに行くことになった。

ナツキチと田辺さんは妙に気が合ったようで、それ以降三人で飲みに行くことが増えた。


飲み会を重ねる毎に、僕は二人の仲が親密になっていくことが少し気になっていた。


そしてある日突然、二人の空気が変わった――

近くで見ていたから分かる、何か言いようのない違和感だった。

二人の何気ない会話の端々に、“ただの友達”ではない波長があった。

(なんだろう。胸騒ぎがする。)


ある日、いつも通り三人で飲み、解散しようとした時のこと。田辺さんが少しふらついて転けそうになった。とっさに支えようとした僕より先に、ナツキチが手を出した。

「美保!危ないよ。大丈夫?」

ナツキチは彼女の名前を呼んだ。

(名前――知ってたんだ。)

僕は気が気でなかった。でも聞けなかった。聞くことですべてが壊れてしまう気がしたんだ。


決定的なことが起こったのは、違和感を感じ始めてからすぐのことだった。


僕はいつものように、コンビニでバイトをしていた。4年経っても馴染めない職場で、薄暗い寒空の中、店外で掃除をしていた時のことだ。

通りの向こうを、二人が――ナツキチと田辺さんが、親しげに手をつないで歩いているのを見た。

(...やっぱりな。)

予感が的中し、寒さが一層身に沁みた。

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