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アイメモ~君と創る青春物語  作者: 萌えがみ☆
SPLIT 1 始まりの物語

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2/3

While.1 初めてまして特別な君へ

「うぅ、もう朝か」


 誰もいない部屋。

 目を軽くしばたくかせて体を起こす。


「おはようございますマスター、今日も清々しい天気ですよ」


 なんの前触れもなくスマホを手に取り、画面を開くと

専用アプリ『アマステ』を開く。

 架空空間が目に映ると、そこには彼女――アマメちゃんの姿が。


 変わらず俺を笑顔で迎えてくれる。


 うれしい。


 嬉しいんだけれども。


「そのごめん、アマメちゃん」

「はい? なんですか」

「俺をマスター呼ばわりするのやめてくれない?

 気軽でいいよ気軽に」


「あぁそうでしたか、すみません。

こほん、ではこれからは結翔くんと呼ばせてもらいます」


 少し驚いたのち、納得したかのように

頭を上下に動かした。

 起動したときに思ったが、マスターってなんだろう、

厨二病全開というか、とにかく恥ずかしいから

やめてもらった。


「うんそれがいい、それで頼むよ」


 渋々苦笑いしながら

彼女に頼み込んで言う。


 窓からは鳥のさえずりが聞こえてくる。

 日光を浴びようと、床まで伸びた窓掛けを

動かす。


 すると多くの家々が立ち並んだ

住宅街が視界に入った。

 電柱の下には店。その横を歩く人々。


 澄んだ空気を吸いながら、外の音に耳を傾け

大きく背伸びをした。

 そよぐ風も気持ちいいな。


「うーん、いいてん……う、まっぶ!」


 家の露台にかかっている鉄格子に

目を移すと、ちょうど日光が反射し一瞬くらむ。

 なんてついてない。きょうそんなに日差し

強かったのかな。


「今日っていたって普通の天気ですよ。とりわけ

温度が高いってわけでもないですし」

「単純に俺がついていないってだけか」


「お、落ち込まないでください、別に結翔くんが

ついていないわけじゃありませんからね?」

「真摯に受け取っておくよ」


 彼女は俺を慰めるように優しく接して

くれたが、

……どうだろう、不幸な目にあわないと

いいんだけれど。


 部屋に戻り。


「今日は土曜日、授業は休みですね、気晴らしに

商業施設でも行きませんか? ……六本木、表参道。

見晴らしのいい場所が最適かもしれませんね」


 土日祝は休みである。


「お、それいいね。コンビニで買ってそのまま

いくよ!」


 だが、注意するように。


「だめですよ、昨日作った残りのハンバーグまだありますよね、

昨日『明日の朝食べる』と言ってたじゃないですか」

「そうだった。野菜とパンそえて済ませることにするよ」


 アマメちゃんはAIとはいえ、人間とそんなに変わらない。

 ちゃんと人と同じ心や考え、意思など

持っているものは俺たちとほぼ一緒だ。


 喜怒哀楽も豊かだし、一緒にいて

心が安らぐ。


「ほら、はしたなくサニーレタスを包丁で

切らない。変色してしまいますよ」

「う、うん」


 やり方を間違えるとこうして

ちゃんと適切に教えてくれる。

 彩りを気にしないなら大丈夫みたいだけど。

 でも、見た目はいいほうが一番だ。なのでいつも

手で千切っている






が。







「…………今日もガサツですね」

「いやいや、これでも頑張っているほうだよ!」

「ちなみに今日は61点です。前回より3点上がっただけですね」


 薄目で声調を少し変え、あきれたような素振りで

冷淡にものを言う。


 料理はやや辛口評価すぎて

心が折れそうにもなる。まあいままでろくにまともな料理

してこなかったからな。これに関しては自業自得だな。


 場所を移し表参道ヒルズへ。









「ここの走馬灯屋。ラーメンおいしそう

入ってみませんか?」

「そこ(から)いよ。人によっては

“そこまでたいしたことはない”って人もいるけれども」

「あぁそういえば結翔くん、コチバンのカレー

3辛までが限界でしたよね」


 回廊構造となっている吹き抜け。

 相変わらず、階段なしの上り坂構造は

山でも登っているような感覚だ。


 ふと目に入った飲食店の階で

辛いお店で有名な場所が。

 値段もそこそこ値を張るが、

あそこで頼めるものとしたら、せいぜい

ご飯かコーラぐらい。


 もはや拷問だ。


「荷が重いですね、これ。かといって近くの寿司屋さんは」

「お門違いだよ。まだ普通のチェーン店がいいや

高いし」


 たしかすぐ近くにバーガー食べられる

ところあったな。

 喫茶らしい場所だったし、あそこがいいかもな。


「ならコガネブラウン!」

「コガネブラウンにしましょう!」


「あ」

「あ」


「被りましたね、えへへ

じゃあ同意ということで」


 声を揃えて言う。

 物騒でもなければ、居心地の良い場所が最適。

ならここしかない。


 でもまさか候補が合致するとはな。


 少し進んで店内へ。

 窓口でもよかったが、なにせ行くあては

とくに見つからない。


「中がいいですね。多少空いていますし」


 店内は賑わっていた。

空いていた長机のある縁台に

腰を落ち着け、メニュー表を手に取り

注文をすませる。


「これをお願いします」

「かしこまりました、少々お待ちください」


 用箋挟(ようせんばさみ)を片手に書き込むと

厨房のほうに駆け込んでいった。


「これが安いほうですからね、最適だと思います」

「あんな2000円近くのもの、到底払えそうにないし

レトバガがいいよね」


 一番安いレトロバーガーと紅茶。

 立ち寄ってはこれだけで一息つく。

他の人みたいに計3000円超えの

組み合わせとか冗談ではない。


 注文品が届くと、軽く食べながら

アマメちゃんと会話する。


「その大丈夫? バグとかあったら直すけれど」

「いえ、大丈夫です、100%良好です。

アマステも家と結翔くんのスマホ側、いずれも

問題ないです」


アマメステーション:AMAME Station

通称、アマステ。


 彼女と対話するための専用ソフト・アプリ。

相互アマステ内を場所問わず

彼女は自由に行き来できる。


 スマホやパソコンその他、ソフトやアプリを

インストールできるものであれば伝えれば

移動してくれる。

つまり、自由に移動できる家みたいなものだ。


 いつでも彼女と話せるようにと

追加で作ったが問題がなくてよかった。


「でも作るまでその日徹夜って

数週間前とはいえ、張り切りすぎじゃないですか?」

「もちろん、無理のない程度だけれど」

「それならいいんですけれど。……気を悪くするよう

でしたらいつでも言ってくださいね。あのとき、

本当血眼になっていましたから」


 そんなにか?


 心配しながら険しい顔してくれる

のはいいんだけれど、表情が重いよ。

 もう少し表情を緩めてほしいが。


“負のスパイラル”だ。やめておこう。


「ごめんって」


 先週は祝日も重ねていたので

無理なく開発することができた。

 最初はパソコンないとだめだったし

自由度が広がってよかったな

と思っている。


 その分彼女を困らせてしまう

こともしばしばあったが。


「もうすぐ13時か、そろそろ出ようか」


 会計をすませて外へ出ると

また歩き出した。








⧖ ⧖ ⧗








地下1階、ステラプライバックス。

 青々とした造花が店内に飾られている。


「ワイワイ通ってますけれど、いいかげん出ません?」

「あぁもうそんなに長居した? ごめんごめん

じゃあそろそろ出ようか」


 14時。

 あれから少し歩いて、地下のステバに直行したが。

 時間経つなんてあっという間だ。


 ワイワイ目的で立ち寄ったが、アマメちゃんに

教えてもらわなかったら、日が沈んでいたかもしれない。


「時間麻痺しないように、もしまたこうなりそうになったら

教えてあげましょうか?」


「頼むよ。俺って時間感覚忘れることあるし」

「素直でいいですね。でも歩きスマホはいけないので

ちゃんと切りながら話しましょう?」


 クセで歩きながら操作していたら

また指摘される。


「じゃあ行きましょうか」


 スマホ首かけで吊している。

 アマメちゃんと、現実世界への視界接続方法は


常時、電源を入れたままにする必要があるが。


 声は普通の通話みたいに遮断していても

会話できる。


 彼女からメールもできるようにしたりと

普通の人と変わらない機能など、


他にもアマステに付けているが、その他は

まずいったんおいて。


 ヒルズを出て、衣類店を見て回る。


「人相当いますね。やはり人気店舗ってことですから

これぐらいは」

「う、うん。とても人気だからね、そ、外がいい?」


 店内に潜ると人集りができていた。

 どこを見回しても、1度背伸びしないと

わからないぐらい大勢いた。


 人の声が交錯しすぎて、

アマメちゃんの声が聴き取り辛い!


 ファッションのセンス、さらさらないんだけれど

アマメちゃんが喜ぶかなと

思って来てみたが、少し誤算だったらしい。


「そうしますか。スマホ落としたら大変ですから」


 店内から出て、大きなガラス越しにある1組。


 軽い黄色をしたシャツに

白いベールのような透き通った

色のスカート。


 愛らしい桃色のリボンが

麦わら帽子についているため、

男の俺でも思わず目を奪われた。


 真剣な眼差しで

近づいて見ていると。


「ちょっと、悠人くん

近づきすぎて見えません! す、少し離れてくれませんか」


 まずい、つい見入っていた。


「ご、ごめん」

「それぐらい、気に入っていたんですか?

ま、まさか着て歩こうと?」

「コマケじゃないんですし……」


 少しやつれた声が

耳に沁みてくる。


 決して変な趣味に目覚めたわけでは。

誤解をしないように言わないと。


「いや」

「むっ」


 眼付けてしてくる顔。


 怖い。


 怖いけれど、同時にかわいくも思えた。

……いや今はそうじゃなくて。


「そのアマメちゃんが着たら、かわいいだろうなって」

「え?」


 表情がほぐれる。

 険しい顔が、次第に驚いたものになり

こちらを見つめた。


 すると次第に頬を赤らめて

「そ、そんなこと、わわわ、わたしなんか……」

と指をつきながら照れだす。


「アマメちゃん?」


 黙々と数分。

 絶え間なく、また付き合わせては遊ぶ。


「……」

「……」

「……スリープ中」


 蚊の鳴くような声で弱々しく

答えた。


「あ、アマメちゃん? おーい」


「A、14、1E、28、32……」

「64、C8、12C、190、1F4……」


 なんか急に16進数数え始めた!

10ごとに10ずつ、100ごとに100ずつ


と人には理解しにくい数え方だが。


 完全に照れ隠しだよね?


「アマメちゃんしっかり!」

「は! すみません、取り乱しちゃいました」


 我に返ってくれたアマメちゃん。


「こほん、そのう、嬉しいですよ。

う、嬉しいですけれど……」

「〰〰〰〰〰〰っ!!」


 恥ずかしいあまり聞き取れない

断末魔を発したのち。


「こ、こ、こ、こーいうのはですね、

場を弁えたほうがいいですよ、ゆーとくん!!」


「ふっ」


「は、は、は、は、鼻で笑いましたね! ……あぁもうこんな時間。

さて帰りますよ! 全くもう」








0、19、64、4、24、0 !







 帰って夕食と入浴を済ませた。

 寝る前に軽くネットサーフィン。


「寝る前にスマホやパソコン見ていると

目を悪くしてしまいますよ」

「アマメちゃん、ひょっとしてさっきの

お返し?」

「……ご想像にお任せします」


 眉をひそめて、ややすねている。

 からかいすぎたかな。


 でもべつに、ウソは決して言ってないんだけどな。


「もうごめんって。そのもう今日寝よう」

「……」


 電気を消して寝台に入る。


 そして俺がもうすぐ寝入る前。

 パソコンから声が聞こえた。


「………………その」









「結翔くん…………寝てたら申し訳ないのですが」








「……………………あ、ありがとう。嬉しかったです。

だから今日はおやすみなさい」


 とはにかむ声で言い残し

画面ごと消灯。


 目を瞑っているので見えないが。


ふと頭に浮かんだ――。

彼女の嬉しそうな朗らかな顔が。



 そんな言葉を聞いた俺は

嬉しく思いつつ、口元を歪ませて小さく

満足そうに言った。


(ふ、ちゃんと聞いてるからアマメちゃん………………

大好きだよ)


 今日は良い夢が見られそうだ。

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