第四章〜地下牢の救世主なのだ!〜
朝早く、大きなお屋敷の地下牢。薄暗い石壁に囲まれた狭い部屋で、すずねは薄っぺらい布団に身を包んで震えていた。
「寒い…」と小さく呟き、冷たい床から逃れるように体を丸める。彼女の服はボロボロで、昨日までの過酷な扱いがうかがえる。
その時、突然重い鉄の扉がバンッと開き、けたたましい声が響いた。
「たー君参上!!今日はたー君が一人お前のご主人様らしいのだ!よろしく!!」
現れたのは、破茶滅茶な正義のヒーロー、たー君。汗だくで制服をだらしなく着た少年が、拳を握って仁王立ちする。
すずねはおずおずと布団から顔を出し、怯えた声で呟く。
「主様…ですか。よろしくお願いします。今日は何をお手伝いすれば…?」
「たー君と喧嘩するのだ!!たー君は喧嘩が大好きなのだ!!」
たー君、目をキラキラさせて提案。すずねは怯えた表情で首を振る。
「え…喧嘩ですか?でも私、痛いのは…嫌です…」
「なんだ、お前……!?腹が減って喧嘩が出来ないのだ!?」
たー君、すずねの弱々しい姿に気付き、驚く。すずねは震える声で答える。
「昨日のスープを飲んでから何も…。でも大丈夫です、主様のために頑張って喧嘩します…!」
「弱っちぃ相手と喧嘩しても面白くないのだ!!飯食ってから喧嘩するのだ!!今から出かけるから早く着替えろなのだ!!」
たー君、即座に方針転換。すずねは急いで汚れた服を脱ぎ始めつつ
「はい…!でも、外は寒いので…もう少しだけ温まってから…」
と頼む。
「お前は面倒臭いヤツなのだ!!ちょっと待っておけなのだ!!」
たー君、苛立ちながらも奴隷部屋から出ていく。すずねは布団に潜り込み、小さな声で呟く。
「主様…戻ってきて…」
数分後、たー君がドヤ顔で戻ってきた。背中には羽毛布団、右手にガスファンヒーターを抱えている。
すずねは目を輝かせて飛び出し、「あ…!ファンヒーター、ありがとうございます…!」と感謝。
「そんな薄っぺらい布団で寝てるから寒くなるのだ!!次からこれ使って寝るのだ!!それと、このファンヒーターを使って早く温まるのだ!!」
たー君、豪快に指示。すずねは嬉しそうに手を伸ばし、「はい、主様…!温かい…こんな贅沢な物を…」と感動する。
「ところでお前はたー君がファンヒーターを持って来ている間に何故着替えてないのだ!!アホなのだ!?」
たー君、突然怒り出す。すずねは慌てて謝る。
「ご、ごめんなさい…!急いで着替えます、主様…!」
「ちょっと待つのだ!!お前、その服に着替えるつもりなのだ!?」
たー君、すずねの手にあるボロボロの服を指差す。
すずねは戸惑い、「え…?この服…ダメですか?」と尋ねる。
「……外は寒いのだ?そんなペラッペラの服じゃ凍えてしまうのだ。別の服にするのだ」とたー君。
すずねは困った顔で、「あ…そうですね…でも、他に着る物が…」と呟く。
「えぇい!!いつになったらたー君は飯が食えるのだ!!ちょっと待ってろなのだ!!それまでそのファンヒーターで身体を暖めておくのだ!!」
たー君、再び部屋を飛び出す。すずねはファンヒーターに寄り添い、暖かさに眠気に襲われていく。
数分後、たー君が戻ると、すずねはうたた寝中。
「なんだ、お前……!?眠いのだ……!?」と驚く。
すずねは慌てて目を覚まし、「ん…あ!ごめんなさい、主様…!寝てなんか…」と弁解。
「眠いなら別に寝ててもいいのだ!!その新しい布団の寝心地を確かめればいいのだ!!朝からバタバタ飯食いにいかんでも別にいいのだ!!」
たー君、意外にも寛容。
すずねは布団にくるまり、「でも…主様と喧嘩する約束だったので…」と申し訳なさそうに言う。
「だから、たー君は万全の状態の相手と喧嘩しないと面白くないのだ!!早く万全の体勢を整えるのだ!!たー君をイライラさせるななのだ!!眠いなら寝るのだ!!」
たー君、熱弁。
すずねは「はい…では少し…主様、おやすみなさい…」と布団に潜る。
一時間後、すずねが目を覚ますと、部屋は見違えるように変化していた。洋服ダンスやテーブル、テレビ、音楽プレイヤー、遊具まで揃い、たー君はゲーム機で遊んでいる。
すずねは目をこすり、「え…?ここは…私の部屋…?主様、これは…夢ですか?」と驚く。
「おっ……?ようやく起きたのだ!?今から説明するから一回で覚えるのだ!!たー君は同じ事を何度も説明するのは嫌いなのだ!!」
たー君、ドヤ顔で話し始める。
「ペンとか筆記用具はここなのだ!!爪切りとかクシはここなのだ!!ここには薬とか入れているのだ!!」
と生活必需品の場所を次々説明。
すずねはメモを取りながら、「主様…こんなにたくさん、私のために…?」と感動。
たー君は続ける。
「それで洋服ダンスはここだけど、中身はまだ空っぽなのだ!!女物の服がなかったのだ!!だから、とりあえず今日はその服に着替えて飯食った後に服を買いに行くのだ!!その後、喧嘩するのだ!!」
「新しい服…?本当に…私に?」
すずね、おそるおそる洋服ダンスを見つめる。
たー君は焦る。
「時間がないのだ!!服買った後は他にも必要な物を買いに行かなきゃいけないのだ!!目覚まし時計はなかったのだ!!だから家電量販店にも行かなきゃいけないのだ!!」
「主様、急いで準備します!」
すずね、慌てて服を着替え始める。
「でも…こんなにたくさん買っていただいくのは、私…」と呟く。
「奴隷を買うと言う事はその奴隷の今後の人生を買うと言う事なのだ!!ここの主人はそれがわかってなかったから、たー君がボコボコにしてやったのだ!!」
たー君、胸を張る。
すずねは胸が熱くなり、「そうだったんですか…前の主人は…私を物のように…」と呟く。
「だから、早く着替えてラーメン食いに行くのだ!!今日はやる事多くて大変なのだ!!喧嘩する時間がなくなっちゃうかもしれないのだ!!急ぐのだ!!ゆっくりするのは明日からでいいのだ!!」
たー君、急かす。
すずねは「はい!朝ごはん、楽しみです…!主様と一緒なら、頑張れます!」と笑顔で応じた。




