表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
息抜きコメディ〜僕、たー君!〜  作者: 星狼
〜僕、たー君!〜

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/16

エピローグ〜愛の雪山日記〜

この夜、山小屋の暖炉のそばで、愛は厚い毛布にくるまりながら、膝に置いた小さな日記帳を開いた。火の揺れる光が部屋を照らし、窓の外では吹雪がまだ唸りを上げている。

隣では、たー君がイビキをかいて眠っている。

あのけたたましい声の主が、今は穏やかな寝息を立てているなんて、信じられない光景だ。

夢はもう布団に潜り込んで寝息を立てており、愛だけがこの静寂の中で今日を振り返る。

ペンを手に持つと、手が少し震えた。雪山での恐怖と、たー君との出会いが胸に重く残っている。


「今日、夢と私は雪山で遭難しかけた。吹雪の中、足が動かなくなり、意識が遠のくのを感じた。あの時、『助けて…』と呟いた夢の小さな声が、心を締め付けた。姉として、妹を守るのが私の役目なのに、力尽きかけてしまった。


ドアを叩いた時、助けが来るなんて思ってもみなかった。でも、たー君が現れた。あの『たー君参上!!』という叫び声は、まるで奇跡だった。


汗だくで制服を着た彼が、雪の中で拳を握って仁王立ちする姿は、滑稽を通り越して頼もしく見えた。『とりあえず温まるのだ!!』と急かされ、火の元に連れて行かれた時、体の芯が温かくなって、涙が出そうになった。」


日記を一時中断し、愛は暖炉の火を見つめた。

たー君のイビキが部屋に響き、なぜか安心感を与えてくれる。ペンを再び動かし、続きを綴る。


「彼が渡してくれたスープは、凍えた体に染み渡った。『お前ら山を舐めんなのだ!!』と怒られた時は、恥ずかしさで顔が熱くなった。確かに、天気予報をちゃんと確認しなかったのが原因だ。姉として、夢を危険にさらしてしまった責任を感じている。


でも、たー君の『命を失ってからじゃ遅いのだ!!』という言葉が胸に刺さった。怒鳴られたのに、なぜか救われた気がした。夢が泣きながら『ごめんなさい…』と呟くのを聞いて、私も頭を下げた。あの時、たー君が一人でこの小屋にいたなんて知らなかった。『缶詰仲間がいるはずだった』と笑う彼の孤独な背中に、胸が締め付けられた。」


ノートに書く文字が、少しずつ穏やかさを帯びてくる。私は目を閉じ、たー君のじゃんけん話を思い出した。


「『たー君は鏡とじゃんけんしてたのだ!!1勝356引き分けだったのだ!!』と自慢げに話す姿に、夢と私は呆然とした。でも、そのアホらしさが、私たちを笑顔にした。『たー君の数時間を返すのだ!!』と強引に話し続けられた夜は、怖かった雪山の記憶を上書きしてくれた。愛は『頼もしいわね』と呟き、夢は『またじゃんけんしようね!』と無邪気に笑った。


私も、たー君の隣で初めて心から笑えた気がする。姉として、夢を守るだけじゃなく、自分も楽しむことを忘れてたのかもしれない。」


ペンを置いて、私はたー君の寝顔を見た。

イビキが大きく響く中、彼の無防備な表情に、なぜか温かさを感じる。


「たー君、ありがとう。この雪山で出会わなかったら、夢と私は凍えていたかもしれない。あなたの無茶な優しさが、私に新しい視点を与えてくれた。山を舐めてた自分を反省しつつも、たー君のおかげで前向きになれた。明日からは、夢と一緒に天気予報をしっかり見て、ちゃんと準備しようと思う。


たー君が『次は2勝目指すのだ!!』と気合を入れた姿、忘れられないよ。旅立つなら、私も一緒に連れてって。雪山での絆を、もっと大きなものにしたい。」


日記を閉じ、愛は毛布に深く潜り込んだ。たー君のイビキがリズムを刻む中、火の揺れる音と一緒に眠りに落ちていく。

雪山の夜はまだ長いが、心は温かさで満たされていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ