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雨降り町でご飯を 1
雨降り町。
ここは、一年中雨が降り続ける町。
晴れの日というものを、きっとこの町は知らない。雨脚が強いか弱いか、それだけだ。
四角い楼閣のいくつもある窓には、窓の数だけ庇が存在する。そこは誰かの住み処、洗濯物は室内か、町中のそこかしこにあるコインランドリーで乾かすのだろう。
店の商品も看板も、店の前に出されることはなく、店の扉に内側から紙を貼り付けていることがほとんど。
今日も今日とで雨降りの、いつも通りの雨降り町。
そう思えるくらいには、エリスもこの町に慣れた。真っ白な肩までの髪も、宝石のように輝く深紅の瞳も、鮮やかな緑色のレインコートで隠して、彼女は町中を歩いている。
彼女を拐った怪盗にして今はただの付き添いのゾロは、真っ黒な傘を差して彼女の後ろを歩いていた。
「ラーメン……チャーハン……焼き餃子に水餃子……あ、肉まんという手もあるか!」
「今日は中華の気分なのか?」
「そう! たくさん食べる!」
「太るぞ」