098. 創舎POTENの誕生
4月8日1回目の投稿です
エリアスが軽く咳払いをして、皆の視線を集める。
「本拠地の件が決まったところで、次は創舎の目的と活動内容を明確にしていこう。方向性をしっかり定めることで、今後の発展につながるからな」
ツムギは姿勢を正し、エリアスの言葉を真剣に聞く。ほかのメンバーも、それぞれノートやメモを用意し、議論に備えていた。
「まずは、創舎の活動内容についてだが……ツムギ、お前が考えている基本的な方針を話してくれ」
ツムギは頷き、一度深呼吸してから話し始めた。
「まず、イリアさんへの透輝液アクセサリーの納品を毎月行うこと。そして、メンバーで協力して、いずれバザールへの出店を目指したいです。それぞれの技術を活かして、いろんなアイテムを作って販売したいと思っています」
ツムギの言葉に、ナギやエドが力強く頷いた。バザールへの出店は、職人としての挑戦の場にもなる。
「それから、私は特定の誰かのために作ることも大切にしたいので、直接の依頼を受けたり、職人ギルドを通して面白そうな依頼を受けることも定期的にやりたいです」
「ええやん、ツムギらしい考えやな」
リナが頷きながら微笑む。
「そして、素材やアイテムの研究も欠かせません。新しい技術を生み出したり、まだ見ぬ素材を発見して、それを活かしたものづくりをしていきたいです。ハルくんやエドさん、ナギとも協力しながら、面白いものをたくさん作りたい!」
「冒険者として、面白い素材をたくさん探してくるよ!」
ハルが元気よく拳を握る。
エリアスは一通り話を聞き、頷いた。
「なるほど、大枠としては納品・販売・依頼・研究の四つの柱が活動の中心になるということだな。それに加えて、今後の発展を見据えて職人の育成や交流、ブランド展開の話も考えるべきだろう」
「職人の育成?」
ツムギが首をかしげると、バルドが腕を組みながら説明する。
「いずれは若い職人を育てる場になるかもしれんということじゃ。創舎として技術を共有し、互いに学び合うことができる場を作るのもええかもしれんのう。定期的に技術交流会を開くのも面白そうじゃ」
「確かに、それなら創舎の名が広まるし、より多くの職人と繋がれるな」
ジンも納得したように頷いた。
「ブランド展開についても考えないといけないわよ。今のままではツムギの透輝液アクセサリーが単体で流通しているだけだけど、いずれはPOTENのブランドとして統一した品質を持つ商品を展開するのもいいと思うわ。アタッチメントや魔導通信機、機能性と美しさを兼ね備えたアイテムを揃えていけば、職人たちの信用も得られるはずよ」
「なるほど……POTENのロゴや刻印を入れたアイテムが増えれば、それがブランドの証明になるのか……!」
ツムギは感心しながらメモを取った。
「本拠地の拡張と発展についても話しておこう」
エリアスが手元の書類をめくりながら言葉を続ける。
「今後、転移魔法陣の研究が進めば、王都のメインストリートに店を構える計画も現実味を帯びる。地方の職人たちともつながる拠点を作るのもいい案だ。職人ギルドと提携し、正式な依頼を受けるルートを確立することも可能になる」
「そうなれば、より多くの職人たちと協力できるようになりますね!」
エドが興奮気味に言う。
「要するに、創舎の活動は次のようなものになる」
エリアスは端的にまとめ、皆が見えるようボードに書き記した。
①定期的な納品と販売活動
②職人ギルドを通した依頼の受注
③新技術・新素材の研究
④職人育成・技術交流
⑤ブランド展開と拡張
⑥地方との連携と発展
ツムギはボードを見て壮大になっていく話に思わず息を呑んだ。
「そうやな、これくらいの方が夢があるんちゃう?うちもやる気が出てきたわ!」
リナがニヤリと笑う。
「うむ、目指すなら大きく! とはいえ、まずはできることから一つずつ始めることが大事だな」
バルドが重々しく言い、皆が頷く。
「それじゃあ、最後に創舎の名前を決めようか」
エリアスが言うと、ツムギは迷いなく口を開いた。
「POTENで!」
「異論なし!」
エドやナギ、ハルが即座に手を挙げる。
リナも満足げに頷き、イリアも微笑む。
こうして、創舎『POTEN』の活動内容と目標が決まった。
話がひと段落したところで、ツムギは創舎を作ることになった、そもそもの出来事をふと思い出し、手を叩いた。
「そういえば、以前リナさんとイリアさんと話していたコレクションケースも、エドさんが創舎に加わってくれたので、ようやく本格的に作れそうですね!」
その言葉に、イリアはわずかに目を細め、口を開く。
「それは嬉しい前進ね。楽しみにしてるわ。そうそう、ケースについても話そうと思ってたんだけど……この間、気づいたら、どういうわけか、あのコレクションケース、いつの間にか私しか開けられない仕様になっていたの。」
リナが頷きながら説明を補足する。
「イリアさん、あのケースめっちゃ大事にしてたしなぁ。ツムギが作ったものって、不思議と持ち主に馴染んでいくこと多いやん? もしかして、ケースがイリアさんに応えたんかなー?って話しとったんよ。」
ツムギは「え?」と瞬きをする。
「そんなこと……考えて作ってはいなかったけど……。」
バルドは興味深そうに腕を組む。
「ふむ……創術というのは、使う者の想いに影響を受けることもあるからな。やはり、奥深いものじゃ。」
ジンもその言葉に頷き、エドはノートに何かを書き留めながら、ぽつりと呟く。
「創術……やっぱり奥が深い……。」
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明日は
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