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090. エドとの出会い

3月31日1回目の投稿です

 「で、さっきのアイテム、どんなふうに作ろうとしてたんですか?」


 ツムギが興味津々に聞くと、エドの表情が一瞬で変わった。さっきまでの恥ずかしさはどこへやら、一気に生き生きとした顔になる。


 「そうだ! それなんだけど、やっぱり摩擦係数を調整するべきか、それとも——」


 エドはがっと身を乗り出し、さっきまでの試作品を机に広げる。ツムギとバルドもそれに引き込まれるように覗き込み、すぐに考察が始まった。


 「でも、その素材だと長期的に見ると摩耗が激しくなりそうです。もう少し硬度を……」


 「確かに、それなら接触面の素材を変えるのがいいか?」


 「待て待て、それより、ここの機構に調整を加えたら根本的に解決するんじゃないか?」


 「それだ!!」


 まるで長年の仲間のように、3人は白熱した議論を交わし始める。エドはもう周りを気にすることもなく、ツムギとバルドに夢中で語り続けた。


 その様子を見て、ぽてはじっと目を細める。


 「ぽぺ……(気が合いそう……)」


 エドは細かい部品を手に取りながら、改めて考え込んだ。

「うーん……ここまではなんとかなるんだけど、この構造だと負荷がかかりすぎるな……」


 ツムギも部品の配置を見つめながら、試しに手でなぞる。

「確かに……この部分、魔力の流れが偏りすぎるかも。負荷を分散させる方法を考えた方がいいかもしれませんね」


 バルドも腕を組み、じっと観察する。

「ふむ……わしもいくつか考えはあるが、決定打に欠けるな。構造を変えるか、素材を変えるか……」


 3人で意見を交わしながらも、どうしても突破口が見えない。

 ツムギはしばらく考え込んでから、ふと顔を上げた。


「……これ、お父さんに聞いたら何か分かるかもしれない!」


 そう言って、ツムギは胸元のマントどめにそっと手を添える。


——《お父さん、ちょっといい?》


 魔導通信機が淡く光り、ジンのもとへとツムギの声が届けられる。


 少しして、ツムギのマントどめがふわりと光った。


——《おう、どうした?》


 ジンの落ち着いた声が響く。


「今、ちょっとある構造の問題で行き詰まってて……負荷を分散させる方法を考えてるんだけど、なかなかいい案が浮かばなくて……」


 ツムギが簡単に状況を説明すると、ジンは少し考え込んでから答えた。


——《ふむ……それなら、アタッチメントのときに使った、方法が応用できるかもしれないな。確か、強度と負荷のバランスを取るために試した手法があってな》


 さすがお父さん!と、ツムギの顔がパッと明るくなる。


——《あの方法なら、アタッチメントの仕様書に記録してある。職人ギルドに行けば閲覧できるはずだ。エドくんが参考にしたいなら、そこで見てみるといい》


「ありがとう、お父さん! すごく助かった!」


——《おう、うまくいくといいな。頑張れよ》


 魔導通信機の光がふっと消え、ツムギは笑顔でエドに向き直った。


「ってことで、職人ギルドにあるアタッチメントの仕様書を見たら、もしかしたら突破口が見つかるかもしれないです!」


 しかし、ツムギの言葉を聞いた瞬間——


「えっ……アタッチメント?」


 エドがピタリと動きを止めた。


「え? もしかして……あのアタッチメント?」


 ツムギが首をかしげると、エドの顔色が変わった。


「ちょ、ちょっと待って! さっき『お父さん』って言ってたけど……そのお父さんって、まさか……」


 エドは息を飲み、震える声で尋ねる。


「あのアタッチメントを作った、あのジンさんのこと!?」


「え? うん、そうだけど……?」


 ツムギが何気なく答えた瞬間、エドの目が見開かれ——


「うわぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


 突然、頭を抱えてしゃがみ込んだ。


「じ、ジンさんの娘!? まじで!? えっ、えっ!? ちょ、待って!!!落ち着こう。まず落ち着こう……」


 エドの様子に、バルドがじっと目を細める。


「おい、最初の人見知りはどこへ行った?」


「それどころじゃないです!! だって、あのアタッチメントを生み出したジンさんが!! アドバイスを!? ええええ!!!」


 エドは明らかに大興奮し、目を輝かせながらツムギを見つめる。


「僕、初めてアタッチメントを見たとき、まるで雷に打たれたみたいな衝撃を受けたんだ!

 あんな繊細な金属加工を僕は見たことがないんだ。話せるなら話してみたい!どうしてあんな発想になったのか聞いてみたい……」


 エドの熱量に圧倒されつつ、ツムギは少し笑いながら提案した。


「じゃあ、今度工房に遊びに来る?」


「いいんですか!? ぜひ!! いやもう、本当にお願いします!!!」


 エドは感動したように拳を握りしめる。


「ジンさんの技術について話が聞けるなんて……こんな機会、絶対逃せない……!!」


 そんなエドの様子を見ながら、バルドは肩をすくめた。


「……まったく、こいつはまた面白いのが出てきたな」


 ぽてはじっとエドを見つめた後、ぼそりと呟く。


「ぽぺ……(なんか、ツムギのまわり、すごい人たちばっかりになってきたな……)」


 こうして、エドは正式にジンの工房を訪れることになった。

 ツムギと日時をしっかり約束し、何度も何度も『本当にありがとう!』と感謝を伝えられたうえに、

 『絶対に忘れないでくれ! くれぐれもよろしく!!』と、念押しまでされる始末。

 その熱意に、ツムギは思わず苦笑しながらも、しっかりと頷いたのだった。

今日も最後まで読んでくれてありがとうございます。

明日も夜(22時〜23時)に更新予定です。 また遊びに来てもらえたら嬉しいです。

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