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081. みんなの魔導通信作成開始!

3月22日一回目の投稿です

 ツムギは作業台に透輝液や金属パーツ、細かな工具を並べ、深呼吸をした。イリア、リナ、ジン、ノア、そしてバルド。それぞれのための魔導通信アクセサリーを作る準備は整っている。


 ハルは「手伝う!」と意気込んで、糸やパーツを丁寧に並べたり、ツムギが必要な道具を取って渡したりと、一生懸命に動いていた。その姿にツムギは微笑みながら、作業台の上の ハズレ召喚石 を見つめた。


「さて……これを、それぞれのアクセサリーに入れる分だけ砕かないとね」


 ツムギは木箱から拳ほどの大きさのハズレ召喚石の塊を取り出し、慎重に割る準備を始めた。


 専用の細工用ハンマー を手に取り、慎重に力を込める。カツン、と小さな音が響き、表面に微細なヒビが入った。そこに細工用のノミを当て、少しずつ叩いていくと——パリン、と小さな欠片がいくつか生まれた。


「わあ……!」


 ハルが目を輝かせながら覗き込む。


「このくらいなら、それぞれのパーツに入るね」


 ツムギは割れた欠片を慎重に選び、それぞれのアクセサリーに合う大きさに整える。小さな透輝液のパーツに封入するため、破片の形も重要だった。


「よし、それぞれのデザインに合わせて、この石を組み込もう!」


 ツムギとハルは、一つずつ 封入する石の選定 を始めた。


 イリアの指輪は、ハズレ召喚石の中から、 ほんのりと琥珀色を帯びた小さなカケラを選び、

 リナの指輪は、動くたびに表情を変えるような輝きを持たせるため、 光の加減で色が変わるカケラを選んだ。

 ジンのループタイには、細かめのカケラをいくつも入れ、星空のように散りばめ、

 ノアのネックレスは、ぽてのようにとのリクエストがあるので、ぽて風の形にしたフェンネルコットンの目の部分を丸い形のカケラにした。

 最後にバルドのループタイには、少し赤みを帯びた黒鉄色の破片を選び、重厚感のある魔導金属と組み合わせても違和感がないようにした。


 その後、透輝液の中に他の素材と一緒にカケラを閉じこめパーツが完成した。


 ツムギは慎重に封入したパーツを並べて、満足そうに頷いた。

ぽても小さく弾み、ハルと嬉しそうな顔をしていた。


「カケラっていろんな形があるけど、いざ使おうとすると、ぴったりのものってなかなか見つからないんだね。ツムギお姉ちゃん、いつも簡単そうに作ってるけど、実はすごく難しいことをしてたんだね」


「今日はハルくんが手伝ってくれたから、いつもより作業がスムーズだったよ」


 ツムギがやわらかく微笑むと、ハルは少し照れたように笑って、ぽての頭をそっと撫でた。


 他のみんなも、そのやりとりを微笑ましそうに聞きながら、それぞれ自分のパーツを手に取って、嬉しそうに眺めていた。


「これで、みんなの分が揃ったね。そうだ!皆さん、軽量化の魔法陣も描きますか? バルド先生のループタイにもつける予定なんですけど」


 すると、ジンが目を丸くしながら、驚いたようにツムギを見つめた。


「ツムギ、そんなこともできるようになったのか?」


「うん! バルド先生と、魔導裁縫箱の先生に教えてもらったんだよ」


 ツムギは少し得意げに魔導裁縫箱を開くと、蓋に淡い光が灯り、ゆっくりと文字が浮かび上がった。


『おやおや、軽量化の魔法陣が必要なのかい?』


「はい!先生、お願いします!」


 ツムギが答えると、蓋の表面に滑らかに魔法陣が描かれていく。その細かな紋様を見て、イリアやリナが興味深そうに覗き込んだ。


 イリアが感心したように目を細め、リナも「めっちゃ便利そうやん!」と顔を輝かせる。


「この魔法陣は、エリアスさんの魔導通信機にも使っていて、持ち主が触れている間だけ軽量化を発動するようにして、魔力の消費を抑えられるんです」


 ツムギが説明しながら、魔導裁縫箱の中に収められている魔導ペンを手に取り、透輝液の雫にそっと触れる。先生の導きに従いながら、一つひとつのアクセサリーに正確な線を刻み込んでいく。


イリアが興味深そうに、魔導裁縫箱をじっと見つめた。


「本当に、ツムギの先生みたいね」


「ぽぺ!ぽぺ!(ししょー!すごいんだよ!)」


 ぽても誇らしげに胸を張る。


「そうなんです。必要な効果がつくように、一緒に魔法陣を書き直してくれたり、作った魔法陣を記憶しておいて、必要なときに書き出してくれたり。本当にすごいんですよ」


 ツムギがイリアに話しかけながら、最後の線を丁寧に描き終えると、魔法陣がふわりと光を放ち、アクセサリーへとやさしく定着していった。


 ジンはそっとアクセサリーを手に取り、光にかざすようにして眺めた。透輝液の表面に刻まれた魔法陣が、ほのかに輝いている。


「いやぁ、成長したもんだな」


 ジンがしみじみとした声を漏らす。


「ほんまやなぁ。こうやって、ツムギの作るもんが、どんどんすごいものになっていくんやなぁ」


 リナも感慨深そうに頷いた。


『いい出来だよ。頑張ったねえ』


 魔導裁縫箱の蓋に浮かび上がったその言葉に、ツムギは思わず笑みをこぼした。


「ありがとう、先生」


『またいつでも頼るんだよ。次も一緒に頑張ろうねぇ』


 その優しい言葉に、ツムギの胸がじんわりと温かくなる。


「うん!先生、これからもよろしくお願いします!」

今日も最後まで読んでくれてありがとうございます。

明日は夜(22時〜23時)に更新予定です。 また遊びに来てもらえたら嬉しいです。

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