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069. ツムギの弟子入り初日

ごめんなさい。少し時間が早いのですが、12時に投稿できなそうなので、先に投稿します。

3月15日1回目の投稿です

 ツムギは朝から工房で、泊まり込みの準備に勤しんでいた。


「えーっと、着替えと……作業着も持って行ったほうがいいよね。あと、筆記用具にスケッチブック、ノート……」


 ぽてが作業台の上で小さく揺れながら、「ぽぺぺ!(ツムギ いそがしい!)」と楽しげに言う。


「ふふ、ぽても一緒に行くんだからね。ちゃんと準備しないと!」


「ぽぺ!(まかせて!)」


 ぽてはふわっと膨らみ、ぽよんっと跳ねる。どうやら準備万端のようだ。


 そんなツムギの様子を、工房の奥で作業していたジンがちらりと見て、口元に小さく笑みを浮かべた。


「楽しそうだな」


「うん! だって、バルドさんの工房に泊まって、いっぱい学べるんだよ!」


 ツムギは目を輝かせながら荷物をまとめる。


「……まったく、お前は相変わらずだな。昔の俺を見ているようだよ。」


 ジンは腕を組み、苦笑しながらぽつりと言った

ぽてが首をかしげると、ツムギはにっこり笑った。


「バルドさんの弟子部屋、お父さんも一年くらい住んでたんだよね!」


「ふっ、そうだな」


 ジンは懐かしそうに頷く。


「……そう思うと、ちょっと不思議な感じがするな」


 ツムギは荷物を背負いながら、どこか嬉しそうに呟いた。


「お父さんがいた場所で、私も学べるなんて……なんだか、すごくワクワクする!」


 ジンはそんなツムギの様子を見て、小さく笑いながらぽつりと呟く。


「まあ、俺の弟子時代のことは気にしなくていい。お前はお前のやり方で学べばいいさ」


「うん! じゃあ、行ってくるね!」


「ぽぺ!(いってくる!)」


 ツムギとぽては、工房を出て魔導列車の駅へと向かった。


 魔導列車に乗ると、ツムギはぽてを膝の上に乗せながら、窓の外を眺めた。


「ぽぺぇ……(ながめ いいねぇ)」


 ぽてがふわふわと揺れながら、小さく感嘆の声を漏らす。

 列車はゆっくりと進み、街並みが遠ざかっていく。ツムギは改めて、バルドの工房での修行に思いを馳せた。


(お父さんもこの列車で通っていたのかな……? それとも、一度住み込み始めたら、あまり帰らなかったのかな?)


そんなことを考えているうちに、列車は目的の駅に到着した。


「さて、着いたよぽて!」


「ぽぺ!(しゅっぱつ!)」


 バルドの工房に到着すると、バルドが迎えてくれた。


「おお、来たか。まあ、荷物もあるだろうし、まずは弟子部屋へ案内しよう」


 ツムギはワクワクしながらバルドの後をついていく。工房の二階へ上がると、長い廊下の奥に数部屋の扉が並んでいた。


「ここが、かつて弟子たちが使っていた部屋だ。今は誰も住んでいないが、寝具や最低限の家具は残してある」


 バルドが扉を開くと、そこにはシンプルながらも居心地の良さそうな部屋が広がっていた。


 木製のベッドに、作業用の机、本棚には古い技術書が並んでいる。窓からはやわらかな光が差し込み、部屋全体に落ち着いた雰囲気が漂っていた。


「わぁ……!」


 ツムギは感動したように部屋を見回し、早速荷物を置く。そして、少しずつ自分の使いやすいように整え始めた。


「ぽぺぺ!(ここ いいね!)」


 ぽても部屋の中をころころ転がりながら、嬉しそうにしている。


 ふと、壁に目をやると、そこに小さな落書きが残っていた。


「え……?」


 ツムギは壁に近づき、指でなぞる。


 そこには、 「絶対負けない! 修行がんばる!! ――ジン」 と、しっかりとした字で書かれていた。


「これ……お父さんの……?」


 思わず呟くと、バルドが小さく笑った。


「そうだ。ジンはここで修行していた頃、壁にちょこちょこ落書きを残していたよ」


「そ、そうだったんですね……!」


 ツムギは思わずくすっと笑った。


(お父さんも、ここで頑張ってたんだ……!)


 なんだか、不思議と心が温かくなる。


「よし、私も頑張らなきゃ!」


 ツムギは拳を握りしめ、改めてやる気をみなぎらせた。


 バルドはそんなツムギを見て、満足げに頷いた。


「……では、少し休んだら、さっそく修理に取り掛かるぞ」


「はい!」


 ツムギの新たな修行の日々が、ここから始まろうとしていた。


 バルドが部屋を出て行き、ツムギは一息ついた。荷ほどきもひと段落し、ふと視線を机の上に置かれていた技術書へ向ける。

 古びた表紙の手触りを確かめながら、そっと開いてみる。最初の数ページは、基礎的な魔導具修理の技術がびっしりと書かれていた。ページをめくるたびに、細かな修理のコツや、部品の適切な加工方法など、実践的な情報が詰まっているのが分かる。


 ふと、ページの端に小さな書き込みがあることに気づく。


『部品を温めると加工しやすくなる。ただし温めすぎると変形するので注意。』(※追記:バルド師匠に怒られた)


『この工程、めちゃくちゃ難しい……でも成功すると気持ちいい!』


『この修繕手順、もっと簡単な方法があるはず。また試してみよう。』


 さらにページをめくると——


『バルド先生は口数が少ないけど、質問するとちゃんと答えてくれる。怖がらずに聞くべし!』


『失敗したら、なぜ失敗したのかをまず考えろ。何度でもやり直せる』


『魔導回路の接続は慎重に。前に適当にやったら爆発した(※バルド師匠にめちゃくちゃ怒られた)』


『魔導具の修繕には根気がいる。うまくいかないときは、一度深呼吸して気分を切り替えろ(※焦るとろくなことにならない)』


『これを読んでいるお前! もし修繕がうまくいったら、この本に「できた!」って書き込め!』


 ツムギはくすっと笑う。


(ここで学んだ人たちが、ずっと積み重ねてきた知識なんだ……)


 バルドのもとで学び、修繕の技術を磨いてきた弟子たちの試行錯誤の跡が、この技術書には刻まれている。まるで、彼らが今もそばで励ましてくれているような、そんな気がした。


 ……私も、ここに何か残せるようになりたいな

ツムギはそっと本を閉じ、胸に抱えた。

最後まで読んでくれてありがとうございます。

本日、夜(22時〜23時)も更新予定です。 また遊びに来てもらえたら嬉しいです。


今日で投稿をはじめてから丁度1ヶ月になりました。

初めの頃の文章を読むと全て書き直したい気持ちに襲われますが、又1ヶ月後も今書いている文章を見たら同じ事を思うのかな?と今から楽しみです。

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