068. ハズレ召喚石の検証実験
3月14日2回目の投稿です
工房の作業台に集まり、慎重な検証を開始する
ツムギたちは工房の作業台に集まり、慎重に検証を始めた。
ぽてはツムギの肩の上で不安げに揺れながら、「ぽぺぇ……(だいじょうぶかな……)」と小さく鳴く。
ハルは手元のマントどめをじっと見つめ、「さっき、これとぽてのマントどめがぶつかったときに光ったんだよね」と改めて確認する。
「ってことは、通信が発動するには ハズレ召喚石同士が接触することが条件 なのかも?」
ツムギは考え込みながら、手元にある まだ発動していない自分のマントどめ を取り出した。
「じゃあ、まずは これとハルくんのマントどめをくっつけてみよう!」
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【検証1】通信が発動する条件を探る
⚫︎ ハルのマントどめ × まだ発動していないツムギのマントどめ
ツムギが慎重に、まだ発動していない自分のマントどめをハルのマントどめにそっと近づける。
——カチンッ。
ぶつかった瞬間、ツムギのマントどめに埋め込まれた ハズレ召喚石が淡く輝きだした。
「光った……!」
ツムギとハルが同時に声を上げる。
ぽても驚いて「ぽぺぇっ!?(また光った!!)」とふわふわ揺れた。
「ってことは、新しいマントどめにも通信機能が宿ったってこと?」
ツムギは驚きながらも、すぐに冷静になって考察を始める。
「じゃあ、これはどうかな?」
今度は、未加工のハズレ召喚石と、自分の発動済みのマントどめをくっつけてみる。
⚫︎ ツムギのマントどめ × 未加工のハズレ召喚石
結果—— 何も起こらない。光らないし、通信の気配もない。
さらに、ハズレ召喚石同士だけをくっつけてみる。
⚫︎ ハズレ召喚石 × ハズレ召喚石
結果—— 何も起こらない。やはり光すらしない。
ジンはじっとマントどめを見つめ、ふむ、と唸る。
「つまり…… ツムギが作ったアイテムに加工されて初めて、通信機能が発動するってことか ?」
「ぽぺぇ……(すごいことになってる……)」
ぽてはツムギの肩の上で、まるで事態を整理するかのようにふわふわ揺れる。
「すごいね……! でも、なんでツムギお姉ちゃんが作ったものだけが通信機能を持つんだろう?」
ハルが不思議そうに首をかしげる。
「それは……まだ、わからない」
ツムギは小さく首を振りながらも、心の中で (でも、何か意味があるはず……) と思っていた。
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【検証2】通信がどうやって発動するのか?
ツムギは意を決して、次の検証へと移る。
⚫︎ 触らずにしゃべる
結果—— 何も起こらない。
やはり、ただの会話では発動しない
⚫︎ マントどめに触りながらしゃべる
結果—— 何も起こらない。輝きすらしない。
ツムギは、ハルの顔を見て提案する。
「ハルくん、私のことを思い浮かべながらマントどめを触って、何か話してみて?」
「えっ、思い浮かべる?」
ハルは少し戸惑いながらも、ツムギの顔を見つめる。そして、ゆっくりとマントどめに触れながら、ツムギのことを強く意識する。
——すると、
ぽぅっ。
ハルのマントどめが やわらかく光を帯び、空気がかすかに震えた。まるで、何かが応答したような、そんな感覚だった。
「光った!!」
「すごい、やっぱり何か関係がある……!」
驚いたツムギだったが、すぐに冷静になり、ハルの輝いているマントどめに向かって話しかける。
「ハルくん、なにか言ってみて!」
「う、うん……」
ハルは少し緊張しながら、そっと呟いた。
——《もしもし、ツムギお姉ちゃん?》
その瞬間——
ツムギのマントどめが ふわりと光を帯びた。
ツムギは 反射的にマントどめに触れる。
——すると、
—《もしもし、ツムギお姉ちゃん?》
今度は ツムギのマントどめから、ハルの声が響いた。
「ぽぺぇぇぇぇ!?(ハルの声がした!!)」
「うわっ!! 本当に通信できた!!」
ハルが驚いてマントどめを握りしめる。
「ぽぺぇぇぇぇ!?(ふしぎすぎる!!)」
ツムギは改めて、じっとマントどめを見つめながら呟いた。
「…… 送りたい人を思い浮かべながら触ると、通信が発動し、メッセージを送りたい人のマントどめが光って、そのマントどめに触れるとメッセージが再生される仕組みなのかな……?」
ジンが腕を組みながら、深く頷く。
「なるほどな……この機能、間違いなく本物の 魔導結晶通信 だ」
「でも、どうして私の作ったものだけが、こんな機能を持つの……?」
ツムギはまだ疑問を抱えながらも、確実に一歩前進していることを感じていた。
そして、彼女達はまだ気づいていない——
ツムギが「仲間」と思う人のために作ったアイテムだけが、この通信機能を持つ ということに。
それがわかるのは、もう少し先の話になりそうだ……
検証が終わると、ツムギとハル、そしてぽては興奮冷めやらぬ様子で顔を見合わせた。
「すごい……! これで、いつでも連絡が取れるようになるね!」
ハルが満面の笑みで言うと、ツムギも嬉しそうに頷く。
「うん! こんなに便利なものが偶然できるなんて……すごいよね!」
「ぽぺぇぇぇ!!(しゅごい!!)」
ぽては興奮しすぎてぴょんぴょんと跳ね回る。その姿に、ツムギとハルは思わず顔を見合わせ、笑い合った。
「これ、めちゃくちゃ便利じゃない? 何かあったらすぐ連絡できるし、お互いの声がちゃんと届くんだよ!」
「うん! ぽてもおやつが欲しくなったら、ツムギお姉ちゃんにお願いできるね!」
「ぽぺっ!(おやつ!)」
「ダメだよ、そんなことに使っちゃ!」
ツムギが笑いながらぽてを指でつつくと、「ぽぺぇ……(こっそり やる)」とぽては小さく鳴いた。
そんな楽しげな様子を、少し離れたところでジンが腕を組んで眺めていた。そして、ぼそりと呟く。
「……俺もほしい」
「え?」
ツムギが振り返ると、ジンは少し照れくさそうに視線を逸らしながら、小さく咳払いをした。
「いや……その、ツムギと連絡を取れるのなら、俺もほしいなって思っただけだ」
ツムギは一瞬驚いた後、ぱっと笑顔になった。
「お父さんも!?」
「ぽぺぇ!(つくる!つくる!)」
「通信機能がつくかどうかはわからないけど……お父さんとお母さんにも、作ってみるね!」
ジンは嬉しそうに微笑んだ。
「頼むよ。何かあった時に連絡がつくと安心だからな」
ツムギはコクリと頷き、さっそく何を作ろうかと考え始める。
すると、ふとハルが思い出したように声を上げた。
「あ、そういえば!ナギさんとエリアスさんへのプレゼントにも、ハズレ召喚石を使ったよね?」
ツムギはハッとした。
「そうだ!! 今度試してみなきゃ!」
「ぽぺっ!(つうしん できる かも!)」
「ナギさんのは、ブローチで……エリアスさんのは、ペーパーウェイトだったよね?」
「うんうん、もしかしたら、私たちと同じように通信できるかもしれない!試してみるの、ちょっと楽しみかも!」
わくわくしながら話すツムギとハル、そしてぽて。ジンはそんな二人と一匹の様子を見て、穏やかに目を細める。
「まあ、やるならほどほどにな。変なことにならないように気をつけろよ?」
「もちろん!」
ツムギが元気よく答えると、ハルとぽても「ぽぺっ!」「うん!」と揃って頷いた。
今日も最後まで読んでくれてありがとうございます。
明日はお昼(12時〜13時)と夜(22時〜23時)に更新予定です。 また遊びに来てもらえたら嬉しいです。
ツムギの世界図鑑(この物語の設定を書いている小説です)の中の「会社システム図鑑」更新しました
読んでくださる皆さまのおかげで、あと2ptで100ptに到達します。物語を書き始めたときは、こんなに多くの方に読んでいただけるとは思ってもいませんでした。拙い文章にもかかわらず、見捨てずにお付き合いくださったこと、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
これからも物語は続いていきますので、どうぞよろしくお願いします!
まずは改稿から……と思いつつ、最近はサイドストーリーを書きたい気持ちが抑えきれなくなってきました。どちらも楽しんでいただけるように頑張ります!