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062. 魔導列車で職人ギルドへ

3月11日2回目の投稿です

「よし、魔導列車に乗って職人ギルドへ行こう!」


「ぽぺ!」


朝の澄んだ空気の中、ツムギは軽やかに歩き出す。工房のある静かな職人街を抜け、大通りへと向かうと、そこには活気ある市場が広がっていた。


店先には、焼きたてのパンや採れたての果物、色とりどりの布や革細工が並び、早朝から買い物客や商人たちの声が飛び交っている。

ほのかに漂う甘い焼き菓子の香りに、ツムギの足がふらっと止まりかけるが、「今は職人ギルドに行くのが先!」と自分に言い聞かせ、駅へと急いだ。


しばらく歩くと、魔導列車の駅が見えてきた。


「ぽぺぺ……!(のる のる!)」


ぽては興奮気味に体を揺らしながら、列車の方を見上げる。ツムギは微笑みながら、列車が停車しているホームへと歩を進めた。


魔導列車に乗りしばらくすると、城下町の駅が見えてきた。列車が減速し、ゆっくりとホームに停車する。ツムギは席を立ち、ぽてを肩に乗せながら、改札へと向かった。


城下町はいつ訪れても賑やかで、道を行き交う人々の間を馬車や荷車が忙しなく走り抜けていく。最近訪れる機会が増えたが、まだ少し緊張してしまう。


「よし、職人ギルドは確か……この通りをまっすぐ進んで、大きな広場を抜けた先だったかな?」


ツムギは地図を確認しながら、しっかりと目的地を定める。

ぽても「ぽぺっ!」と元気よく鳴き、意気揚々と進み始めた。


そして――賑やかな街並みを抜け、ついに目の前に職人ギルドの建物が現れる。

ツムギは深呼吸をし、ギルドの扉に手をかけた。


「よし……行ってみよう!」


意を決し、職人ギルドの扉を押し開いた――。


扉を押し開けた瞬間、ツムギの目に飛び込んできたのは、活気に満ちた職人ギルドの光景だった。


広々としたギルドの中には、仕事の依頼を確認する職人たち、道具を手に真剣な話をしているグループ、さらにはカフェスペースでくつろぎながら談笑する人々の姿があった。


カフェスペースの片隅では、年配の職人が若い職人に熱心に語っている。


「だから言っただろう!金槌の角度が3度違うだけで、仕上がりの強度が変わるんだよ!」


「ええっ!? たった3度で!?」


別のテーブルでは、ガラス細工師らしき職人たちが楽しそうに話していた。


「昨日、透輝液を使って試作したんだけど、予想以上に透明度が上がってさ!」


「まじか!? それ、次の展示会に出せるレベルじゃない?」


「いやいや、まだ改良の余地があるって! ……でも、透明度が上がりすぎて、どこに置いたかわからなくなるのが欠点なんだよな……」


「それは透明すぎるわ!」


ツムギは思わず立ち止まり、耳をそばだてた。


(いいなぁ……! 私も混ざって話したい……!)


ものづくりの話になると、どうしても興味が湧いてしまう。


「ぽぺぺ……(ツムギ もう わくわく)」


ぽてがツムギの肩でくすくす笑うように震える。


「……だって! みんなすごく楽しそうなんだもん!」


ツムギは思わずぽてに小声で言い訳をしたが、ぐっとこらえてカウンターへ向かった。


受付には、穏やかな笑みを浮かべたギルド職員が座っていた。


「いらっしゃいませ。ご用件は?」


「あの、職人を探しているんですけど……紹介してもらうことはできますか?」


「はい、可能ですよ。ギルドに登録している職人の一覧がありますので、ご希望に合う方を探していただけます」


そう言って、職員は厚みのある職人紹介シートの束を取り出した。


「こちらが職人の一覧です。各分野ごとに分かれていますので、ご覧になってくださいね」


ツムギは興味津々でシートをめくる。


「わぁ……すごい……!」


そこには、職人たちの顔写真や経歴、得意分野などがびっしりと書かれていた。


「ぽぺっ!(この人 すごい!)」


ぽてが指し示したのは、錬金術を応用した魔導塗料の専門家だった。


「ほんとだ! 魔法のエネルギーを保持する塗料を開発してるんだって……! こんな技術があるんだ……!」


「ぽぺぺ!(つよそう!)」


「いや、戦う職人さんじゃないから!」


二人(?)で盛り上がりながらページをめくるたびに、新しい技術や面白い職人たちが目に飛び込んでくる。


「この人は……ガラス細工と創術を組み合わせた作品を作ってるんだって!」


「ぽぺぺ!(キラキラ!)」


「わかる! きっとすごく綺麗なんだろうなぁ……!」


興味を引かれる職人はたくさんいた。どの人も魅力的で、一緒にものづくりをしたら楽しそうだ。でも――


(決めきれない……!)


どの人も素敵に見えて、誰を選べばいいのか分からなくなってしまった。


「ぽぺ……(ツムギ まよってる)」


「うぅ……だって、どの人もすごいんだもん……」


困り果てていると、不意にカウンターの端に置かれた別の束が目に入った。


「そちらは、職人を探している人の募集シートです。仕事を受けたい方は、こちらから依頼を選ぶこともできますよ」


職員さんの説明に、ツムギは「ありがとうございます!」とお礼を言いながら、さっそくシートを手に取った。


(へぇ~、職人を探してる依頼もこんなにあるんだ……!)


ペラペラとめくっていくと、色々な募集が目に飛び込んでくる。


【依頼名:特殊織布の研究助手募集】

依頼内容:

希少な魔法繊維を使った新たな布を織る研究をしています。糸紡ぎや織布の経験がある方、大歓迎! 一緒に新しい生地を作りませんか?


「ほうほう……! これはちょっと興味あるかも?」


ツムギは思わず身を乗り出す。


(新しい布の研究ってことは、透輝液と組み合わせたらもっと面白いことができるかも……!)


しかし、“織布の経験がある方” の部分を見て、ちょっと考え込む。


(私、布は使うけど織るのは専門外だしなぁ……。)


「ぽぺぺ。(おしい)」


ぽてが横で小さく相槌を打った。


【依頼名:魔法具の刻印師募集】

依頼内容:

魔法具に細かい魔法陣を刻む作業をお手伝いしてくれる職人さんを募集! 手先が器用な方、魔法陣の知識がある方、大歓迎!


「魔法陣の知識……うーん、ないことはないけど、これはちょっと難しそうかなぁ……。」


ツムギは首を傾げながら、ぽてと目を見合わせる。


「ぽぺぺ。(ツムギ、ふくざつなの きらい)」


「うっ、まぁ、確かに細かい計算とかは得意じゃないかも……。」


二人して苦笑しながら、さらにページをめくる。


【依頼名:カフェの食器デザイン】

依頼内容:

新しく開店するカフェのオリジナル食器をデザインしませんか? おしゃれなデザインが得意な方、歓迎!


「おぉ! なんか素敵!」


「ぽぺ!(おいしい たべもの つくる!?)」


「いや、食器のデザインだからね、ぽて……。」


ツムギはくすっと笑いながら、それでも「こういうのもあるんだなぁ」と感心する。


(装飾を考えるのは楽しそうだけど、デザインだけでなく制作も任されるのかな? それに、私よりガラス職人さんとかの方が向いてそうだし……。)


「どれも魅力的だけど、なかなかピンと来るものがないなぁ……。」


ツムギは、再びシートをペラペラとめくる。


(職人を探してる依頼って、思ったよりも幅広いんだな……。)


そんなことを考えながら、ふと手に取った一枚をじっと見つめた。


【依頼名:「古き魔導具の修繕を共に」】


ツムギの目が、思わずそのタイトルに釘付けになる。


「……魔導具の修繕?」


ぽても気になったのか、ツムギの肩の上からひょこっと覗き込んだ。


(なんだか、気になる……!)


ツムギはシートをしっかりと握りしめ、その内容をじっくりと読み始めた。





今日も最後まで読んで下さりありがとうございます。

明日はお昼(12時〜13時)と夜(22時〜23時)に更新予定です。 また遊びに来てもらえたら嬉しいです。


ツムギの世界図鑑(この物語の設定を書いている小説です)の中の「ギルド図鑑」更新しました


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