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059. ツムギの負担とリナの報告

3月10日2回目の投稿です。

イリアはコレクションケースの方針が固まったことで満足げに頷き、次の話題へと切り替えた。


「さて、コレクションケースの売り出し方を考える前考えるべきは、ツムギの負担の問題ね。」


その言葉に、ツムギは「え?」と驚いたようにイリアを見上げた。


「負担って……?」


「あなた、すでに月に20個のアクセサリーを作っているわよね?」イリアは淡々と指を動かしながら、帳簿をめくる。「それに加えて、新しいアイテムの試作や、お客様からの個別の依頼も受けている。」


「それは……そうだけど……」


ツムギは考え込みながら、最近の作業量を思い返した。確かに、毎月の生産分だけでも十分忙しいのに、それとは別にお礼の品や試作品の制作、さらにはハルのポシェットのような個人的な修理や特注品も作っている。

一つ一つのものづくりに妥協したくないからこそ、どうしても時間がかかる。


「このままでは、いずれ限界がくるわ。」イリアははっきりと言った。「もっと売れるようになれば、それだけ需要も増える。でも、あなたが全てを作るのは無理がある。」


「それは……」


ツムギは口を開きかけて、言葉を詰まらせた。


「せやなぁ。」リナも腕を組みながら頷く。「ツムギちゃんの作るもんは、どれも丁寧でこだわりがある。せやけど、それを全部自分の手でやろうとしたら、いつかパンクするで?」


「ぽぺ……?」

ぽても、心配そうにツムギの顔を見上げる。


「……でも、私が作らないとPOTENの価値が下がるんじゃないかな?」

ツムギはぽつりと呟いた。


イリアは軽くため息をつく。


「だからこそ、考えなきゃいけないのよ。あなたがすべてを作るのは無理でも、POTENの品質を守る方法を。」


「……例えば、ベーシックラインを作ってる工房で作ってもらうとか?」

ツムギが恐る恐る提案すると、イリアはすぐに首を横に振った。


「それだと、ベーシックラインとの差別化ができなくなるわ。」


「うちもそう思う。」リナも同意する。「POTENの名前がついとるもんは、あくまで特別なもんや。大量生産の工房に頼んだら、それこそベーシックラインと変わらんようになってまう。」


「うーん……」

ツムギは悩ましげに眉を寄せる。


「じゃあ、どうすれば……?」


3人はそれぞれ思案しながら、店の奥で静かに考え込む。

ぽても「ぽぺぺ……」と小さく唸りながら、テーブルの上でくるくると回っていた。


そして、しばらくの沈黙の後――リナがぽんっと手を叩いた。


「そや! 腕のいい職人を探したらええんちゃう?」


ツムギとイリアは、一瞬きょとんとリナを見つめた。


「腕のいい職人……?」


「せや。ツムギちゃんの技術はすごい。でも、一人でできることには限りがあるやろ? せやったら、ツムギちゃんと対等に意見を言い合えて、一緒にものづくりを楽しめる職人を仲間にするんや。」


ツムギは、目をぱちぱちと瞬かせた。


「……私が、誰かに教えるってこと?」


「いや、教えるっていうよりも、一緒に作れる相棒みたいな職人やな。」リナは自信ありげに頷く。「ツムギちゃんのこだわりを理解して、それを活かせる人。欲を言えば、ツムギちゃんと違う視点を持っている人。そういう職人を見つけたら、POTENの品質は守りつつ、もっと自由にものづくりができるんちゃう?」


「職人を探す……」

ツムギは、まだ実感が湧かない様子で呟いた。


「ぽてぃ!(おともだち ふえる!?)」

ぽては嬉しそうにぴょんぴょんと跳ねる。


「ふふ、そうね。」イリアは少し考え込みながら微笑んだ。「ただ、優秀な職人を見つけるのは簡単ではないわ。でも……確かに、いい考えかもしれない。」


ツムギは、今までずっと「一人で作ること」を前提にしていた。

でも、リナの言葉を聞いて、それ以外の道もあるのかもしれないと思い始める。


「うん、ちょっと考えてみる。お父さんにも相談してみようかな。」


ツムギがそう言うと、リナは「ええやん!」と満足げに笑った。


「そしたら、腕のええ職人が見つかったら、コレクションケースとかは本格的に作っていくってことで決まりやな?」


「うん。いまは一人じゃ難しいけど、ちゃんと作れる環境が整ったら……!」


ツムギが力強く頷くと、イリアも満足げに頷いた。


「いい決断ね。焦らず、でも確実に進めていきましょう。」

会話がひと段落すると、リナが「せやせや」と手を叩き、明るい声で話題を切り替えた。


「ほな、次はうちからの報告タイムやで!」


「リナが担当するベーシックラインのことね?」


イリアが視線を向けると、リナはにっと笑いながら帳簿を取り出し、さっと机に広げる。


「そや! ベーシックライン、予想以上にええ感じに売れとるで!」


ツムギは思わず身を乗り出した。


「本当?」


「ほんまほんま! 透輝液のパーツとアタッチメント、組み合わせ次第でいろんな使い方できるやん? せやから、お客さんの好みに合わせて自由に選べるのがウケてるみたいやな。」


リナは帳簿のページを指でなぞりながら続ける。


「特に、イヤリングとかネックレスの需要が高いな。手頃な値段やから、ちょっとしたプレゼントにも選ばれやすいみたいやで。」


「そっか……!」


ツムギは自分の作ったものが、誰かに喜ばれていることを実感し、心が温かくなった。


「カジュアルラインの店舗をメインに置いてるけど、これがまたええ感じに売れとるんよ!」


リナは紙をめくりながら、少し得意げに笑う。


「こないだ、お店のスタッフさんからも連絡あってな? 『お客さんが次々とアタッチメントを試して楽しんでます!』やって!」


「それ、すごいね!」


「せやろ? お客さんが気軽に手に取れる価格帯やし、ちょっとしたおしゃれのアクセントとして人気が出てるみたいや。」


イリアもその報告を聞きながら、小さく頷いた。


「思った通りね。POTENの高級ラインとは違う路線で、しっかり市場に浸透してきているわ。」


「うんうん。でも、ちょっと気になることもあるんよ。」


今日は22時までにもう一度更新します。


「この方が読みやすいかな? ここは図鑑で深掘りしたほうがいいかも?」と考えながら書いていますが、初めてのことばかりで、つい自己満足になっていないかと心配になることもあります。

もし「ここが読みにくい」「この部分、もう少し詳しく知りたい!」などあれば、ぜひ教えていただけると嬉しいです!

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― 新着の感想 ―
この部分同じ文章が続いてるみたいです。 削除の誤字報告はできなかったのでこちらから失礼します。 「うん、ちょっと考えてみる。お父さんにも相談してみようかな。」 ツムギがそう言うと、リナは「ええ…
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