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053. ツムギの贈り物計画

3月8日2回目の投稿です

イリアが紹介してくれる担当の方は、リナという女性らしい。彼女とはいずれ顔を合わせることになるが、今はベーシックラインを軌道に乗せるので忙しく動いているそうだ。会えるのは少し先になりそうだ。


最近、新製品の開発と販売で慌ただしい日々が続いていたが、そんなこんなで、ようやく少しだけ時間が取れた。ツムギは肩の力を抜きつつ、ふと頭に浮かんだことを口にする。


「そうだ、ノアお母さんに頼まれてたアイテム、まだ作ってなかった……!」


ぽてがふわっと跳ねながら、「ぽぺ!(おやくそく!)」と元気に相槌を打つ。そう、しばらく前にノアが「ちょっとした小物が欲しいのよね」と相談してきたのだ。忙しさにかまけて後回しになっていたが、今ならじっくり取り組める。


それに、気になっていたことがもう一つある。ガルスやナギ、そしてエリアスやイリアへ、これまでの感謝を込めて何か贈りたいと思っていたのだ。


ガルスには、ミストスライムウールや獣甲布の改良のお礼を。ナギには、パッケージや布のことでずっと協力してくれているお礼を。そしてエリアスとイリアには、商売のことを何も知らなかった自分を支えてくれた感謝を。


「ジンお父さんにも、何か作りたいな……!」


「ぽてぃ!(ないしょプレゼント!)」


「うん、内緒でね!」


ツムギはぽてとこっそり顔を見合わせながら、小さくくすっと笑う。大人チームには絶対にバレないように準備しなくては。そう思うと、贈り物を作る時間が一層楽しく感じられた。


机の上に、布や糸、透輝液、木材のパーツを広げ、どんなものを作るかを考え始める。


「さて、何を作ろうかな?」

ツムギは作業机に向かい、スケッチブックを広げた。

ぽてがふわりとテーブルに飛び乗り、「ぽぺ!」と楽しげに鳴く。


「お礼をしたい人がたくさんいるからね。ひとつずつ、ちゃんと考えないと。」


ツムギは鉛筆を取り、軽く回しながら考える。


ノアには何がいいだろう?お母さんは、家事をすることが多いから、肩こりや疲れを癒せるものがいいかもしれない。

それなら、アタッチメント式のネックレスがぴったりかも。透輝液に魔石を封入して、肩こり用や温める用、涼しくする用など、用途ごとにパーツを変えられるようにすれば、便利で楽しいはずだ。


「ぽてぃ!(おかあさん、きっとよろこぶ!)」


ぽてが嬉しそうにツムギの肩に乗る。


「ふふ、だといいな。」


次はジン。お父さんには何がいいだろう?

ノアとおそろいのアタッチメントネックレスもいいけれど、お父さんは工房で作業することが多いから、腕につける方が邪魔にならなそう。

それなら、アタッチメント式の腕輪が良さそうだ。


「おそろいにして、内側にこっそり『お父さん大好き』って刻んでおこう。」


ツムギはくすっと笑いながら、デザインのラフを描き始めた。


ガルスはどうしよう?

精錬屋でいつも熱を扱っているから、涼しくなるものがいいな。

首元につけるアタッチメントループタイなら、実用的だしおしゃれに使えるはず。

でも、あまり飾り気のあるデザインは好まなさそうだから、シンプルなものがいい。

ツムギは、さりげなく「G」のイニシャルを入れることを思いつき、スケッチに小さく書き込んだ。


ナギには何を作ろう?

そういえば、ナギはぽてが大好きだったな。

なら、ぽての姿を模したボタン付きアタッチメントブローチはどうだろう?

ただの装飾ではなく、どこかに不思議な要素を入れたい。

……そうだ!前に手に入れたハズレの召喚石、あれを透輝液に封じ込めてみたら?

少し光ったり、何か面白いことが起きるかもしれない。


「ナギなら、きっとこういうの好きだよね。」


ツムギは軽く頷きながら、ブローチの形をスケッチに描き加えた。


エリアスは……?

証契士の仕事で、日々書類をたくさん扱っている。

なら、書類を押さえるためのペーパーウェイトはどうだろう?

透輝液にハズレの召喚石と魔石を封じ込め、光を受けると淡く光るようにする。

そこに古い木材を組み合わせて、シンプルで洗練されたデザインにしたら――

「うん、これならエリアスさんの机にも馴染むかも!」


最後はイリア。

商人であるイリアには、彼女が扱うアクセサリーを収納できるジュエリーボックスを作るのがいいかもしれない。

木製の箱にアタッチメントをつけて、カスタマイズできる仕様に。

内側にはミストスライムウールを敷いて、アクセサリーが傷つかないようにする。

そして、蓋の裏側にさりげなくメッセージを刻む――


「あなたの目が選ぶものは、きっと特別なもの。」


ツムギはスケッチブックを見つめながら、満足そうに頷いた。


「よし、みんなにぴったりな贈り物になりそう!」


ぽてが「ぽぺぺ!」と楽しげに飛び跳ねる。


ツムギはスケッチブックを閉じ、深呼吸した。

これから、ひとつずつ丁寧に作っていこう――。

本日は22時までにもう一話投稿します!

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