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046. ハルの商標登録

3月5日2回目の投稿です。

予約投稿がうまくいっていませんでした。

申し訳ありません。22時までにもう一話追加します!

証契の塔での手続きを終え、ツムギたちは工房へ戻る途中、街の中央にある魔導郵便局に寄った。郵便局のカウンターにある書き台で、丁寧な字で手紙を書き始める。


『ハルくんへ

この前の透輝液のことなんだけど、正式に商標登録をするために、ハルくんのサインが必要なの。

証契士さんと話をする日を決めたいんだけど、都合のいい日はあるかな?

ツムギ』


「……こんな感じでいいかな?」

「ぽてぃ!(かんぺき!)」


ぽてはツムギの肩の上で、小さく跳ねながら太鼓判を押すように言う。

ツムギは手紙に**「速達印そくたついん」**を押し、郵便窓口の魔導配達員に渡した。


「速達ですね。では、本日のうちにお届けします。」


配達員が手際よく封を確認し、手紙を回収していく。ツムギはほっと息をつきながら、ぽてを撫でた。


「さて、あとはハルくんの返事を待つだけだね。」


ジンは腕を組みながら、「まぁ、すぐ来るんじゃねぇか?」と軽く言う。


その予想は的中し、その日の夕方にはハルからの返事が届いた。


『ツムギお姉ちゃんへ

透輝液のこと、わかりました。すごいことになってるんですね。

大事なことなら、ぜひ話を聞きたいです。

都合のいい日は……いつでも大丈夫です。

ハル』


その後、エリアスにも手紙を送り、返事が届いた。彼の予定を確認しながら何度かやりとりを重ねた結果、10日後に話し合いを行うことが決まった。


ぽてはその間、ツムギの肩の上で「ぽてぃ!(しょーめいのひ!)」と何度も嬉しそうに呟いていた。ツムギはくすくすと笑いながら、ハルとエリアスとの正式な契約の場を迎える日を待ちわびていた。


約束の日、ツムギの工房にハルは少し緊張しながら足を踏み入れた。

いつもは落ち着くこの場所も、今日はなんだか少し違って見える。

ぽてが「ぽてぃ!(しょーめいのひ!)」と楽しそうに跳ね回る中、ツムギは優しく微笑みながらハルを迎えた。


「ハルくん、来てくれてありがとう!」


「う、うん……」


ハルはぎゅっと自分のポシェットを握りしめながら、ツムギの後ろに立っている人物を見た。

長身で、プラチナブロンドの髪を持つ男――エリアス・ヴァンデール。


彼は落ち着いた微笑みを浮かべながら、スレートブルーの瞳でハルを見つめていた。

その整った姿と、大人びた雰囲気に、ハルは少し身を固くする。


(この人が……証契士さん……)


初対面の大人というだけで緊張するのに、彼は証契士というとても頭の良い職業についている人だ。言葉遣いを間違えたらどうしよう――ちゃんと契約の話についていけるだろうか。

そんなハルの不安を察したのか、エリアスは穏やかに口を開いた。


「初めまして、ハルくん。」


「……は、はい。」


「私はエリアス・ヴァンデール。証契士として、ツムギの発明の商標登録と契約を担当することになった。」


彼はゆったりとした仕草で軽く頭を下げる。

まるで威圧感を与えないように、こちらの様子を見ながら言葉を選んでいるようだった。


「今日は少し話が難しくなるかもしれないが、焦らなくていい。まずはリラックスして聞いてくれれば大丈夫だよ。」


「……はい。」


ハルは彼の落ち着いた態度に、少しだけ緊張を解いた。


「ぽてぃ!(だいじょうぶ!)」


ぽてがハルの肩に乗り、ぽふぽふと彼の頬を撫でるように動く。

その仕草に思わずくすっと笑いそうになりながら、ハルは小さく息を吐いた。


(……ツムギお姉ちゃんも、ぽてもいるし、大丈夫。ちゃんと話を聞こう。)


そう自分に言い聞かせながら、ハルはエリアスの話に耳を傾けることにした。

エリアスは手元の書類を整えながら、静かに説明を始めた。


「今回の契約の内容について、わかりやすく説明しよう。」


彼は書類を軽く指で叩きながら続ける。


「まず、透輝液に関する商標登録についてだ。ツムギが『透輝液の作り手』として登録され、ハルくんは『開発協力者』として名前が入ることになる。」


「かいはつ……きょうりょくしゃ?」


ハルは聞き慣れない言葉に首をかしげる。


「そう。簡単に言えば、『透輝液の発明に貢献した人』という位置づけだよ。」


エリアスは穏やかに説明を続ける。


「そして、透輝液を使った製品が販売された際、売上の一部はハルくんにも分配されることになる。つまり、君がこの発明に関わったことを正しく記録し、適正な利益を受け取るための契約だ。」


ハルは驚いたように目を見開いた。


「……ぼくが、こんなすごいことの名前に入っていいの?」


彼は自分の胸を指さしながら、戸惑った様子を見せる。

ハルは小さく肩をすくめた。

透輝液がどれだけすごいものなのか、ツムギお姉ちゃんの話を聞いているうちに、なんとなくわかってきた。でも、それに自分の名前が入るなんて、どこか申し訳ないような、場違いな気がしてしまう。


「ぼく、ただ……ツムギさんに晶樹液を見せただけなのに……。」


その言葉に、ツムギは優しく微笑みながら首を横に振った。


「違うよ、ハルくん。」


ツムギは静かに言葉を紡ぐ。


「ハルくんが初めに晶樹液を見せてくれたし、一緒に森に晶樹液を取りに行ってくれたから、私は透輝液を作ることができたんだよ。」


「……。」


「もしハルくんがいなかったら、私はこの発明にたどり着けなかった。だから、ハルくんの名前が入るのは当然のことなの。」


ツムギの真っ直ぐな瞳に見つめられ、ハルは言葉を失った。彼の中にあった「ぼくなんかが……」という気持ちが、少しずつほどけていく。

エリアスもツムギの言葉に頷き、静かに補足した。


「ツムギの言う通りだ。発明は、一人の手だけで生まれるものじゃない。誰かのひらめきや、誰かの気づきがあってこそ、新しいものが生まれる。」


エリアスはハルを見つめながら、続けた。


「これは、君の功績を正しく残すための契約だ。だから、自信を持っていい。」


「……。」


ハルはそっと自分のポシェットを握りしめた。


(ぼく……本当に、この発明に関われたのかな……。)


でも、ツムギさんがそう言ってくれるなら。

証契士さんが、そう言ってくれるなら。

ハルは小さく頷いた。


「……はい。」


ツムギは嬉しそうに微笑み、ぽても「ぽてぃ!(しょーめい、おっけー!)」と元気よく跳ねた。

エリアスは静かに書類を整えながら、契約の本番へと進む準備を始めた。


こうして、ハルは正式に透輝液の開発協力者として契約を交わすこととなった――。


本日は夜22時までにもう一話投稿します

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