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044. エリアスとの再会

3月4日2回目の更新です

ツムギは朝からそわそわしていた。


「うーん……緊張する……!」

食卓で朝食のパンを口に運びながらも、落ち着かない様子で何度も椅子の上で姿勢を変える。今日は、証契士しょうけいしヴェルナーのもとへ、アタッチメントと透輝液の商標登録と利益契約の手続きをしに行く日だった。


「大丈夫か?」

ジンが苦笑しながら向かいの席でスープをすすり、ノアも「そんなに緊張しなくても」と微笑んでいる。


「だ、だって、ちゃんと話せるかどうか……!」


「まぁ、ヴェルナーさんは堅物だけど、公平な人だからな。変なことにはならねぇよ。」


「そ、そうだよね……!」


ツムギが深呼吸をしようとしたその時――

「ぽてぃっ!」


テーブルの上で小さな毛玉――ぽてが、ぴょんっと弾むように跳ねた。


「ぽてぃー!(いざ!出陣!)」


ぽては、なぜかやる気満々だ。ふわふわと体を揺らしながら、まるで騎士のような堂々たる佇まいを見せている。


「ぽて……やけに張り切ってるね?」


「ぽてぃ!(しょーめいのたび!)」


「うん、それ、ちょっと違う……」


ツムギが苦笑する一方で、ジンは「まぁ、気負わず行こうぜ」と立ち上がった。


「さっさと準備して出発するぞ。」


「うん!」


こうしてツムギ、ジン、ぽての三人(?)は、証契のしょうけいのとうへと向かうことになった。


証契のしょうけいのとう


証契の塔は、街の中心部にそびえる重厚な建物だった。


外装は歴史を感じる石造りで、入り口には「契約と誓約の場」と刻まれた立派なプレートが掲げられている。格式高い建物ではあるが、商人たちが次々と出入りし、意外と賑やかな雰囲気だった。塔の前では、契約の相談をする商人たちや、証契士と話し込む職人たちの姿が見える。


「思ったよりも活気があるね……」


ツムギは緊張しながらも、あちこちをきょろきょろと見渡した。


「まぁ、商売するやつらにとっちゃ、ここは大事な場所だからな。」


ジンが腕を組みながら言う。

ツムギは息を整えながら、塔の中へと足を踏み入れた。


証契の塔の中は、厳かな雰囲気に満ちていた。

高い天井に響く話し声、契約の証として刻まれる魔導刻印の音が、どこか落ち着いたリズムを生んでいる。

受付で用件を伝えると、すぐにヴェルナーの執務室へ案内された。


「ヴェルナーさん、お久しぶりです!」


ツムギが少し緊張しながら挨拶をすると、ヴェルナーは書類を整理していた手を止め、静かに顔を上げた。


「久しぶりだな、ツムギ。」


彼のグレイッシュブルーの瞳が、落ち着いた光を湛えてツムギを見つめる。


「あなたが証契の塔を訪れる日が来るとは、少し意外だったよ。」


「えへへ……私も、まさかこんな大きな契約をすることになるとは思っていませんでした。」


ツムギが照れ笑いを浮かべると、ヴェルナーの口元がわずかに動いた。


「だが、君の発明は確かに価値があるものだ。しっかりと守るべきだろう。」


彼はそう言いながら、手元の書類をめくる。

そして、その隣――


「……ほう。」


ツムギがふと視線を向けると、もう一人の証契士がいた。スレートブルーの瞳に、プラチナブロンドの髪。微笑みを浮かべながら、興味深そうにツムギを見つめていた。


「まさか、君がここに来るとはね。」


「……え?」


ツムギは一瞬、きょとんとする。


「君の名前は知っているよ、ツムギ。」


彼はさらりと言うと、軽く肩をすくめた。


「え……?」


ツムギは戸惑いながら、彼を見つめる。


「エリアス・ヴァンデール。」


彼は優雅に名乗った。


「証契士見習いとして、ヴェルナー先生のもとで修行中だ。」


「エリアス……ヴァンデール……?」


ツムギはその名前に聞き覚えがあった。

学院時代、証契士を目指す者の中でも、天才と称されるほどの優等生だった人物。

学問だけでなく、商業や契約に関する知識も群を抜いており、学院の教師たちからも一目置かれていた。


「まさか、あのエリアスさん……!」


ツムギは思わず声を上げる。


「おや、私のことは知っていたんだね。」


エリアスはどこか楽しげに微笑んだ。


「……そりゃあ、学院でも有名でしたし……」


「ふむ、なるほど。」


エリアスは顎に手を当て、思案するような表情を浮かべる。


「じゃあ、君は私のことを知っていたけれど、私は君を知らないと思っていた、ということか。」


「え、ええ……?」


「残念ながら、それは違うな。」


エリアスはにこりと微笑みながら言う。


「私は君のことを、ずっと見ていたよ。」


「えっ……」


ツムギは一瞬、息を呑む。


「君の発想力は大変興味深かった。ものづくりに対する熱意は、他の誰とも違ったからね。夢中になると一直線なところ、少しドジなところ……だけど、その分、誰よりもものづくりに対する情熱が強い。そういうところを見ていると、つい気になってしまってね。」


「うぐっ……!」


ツムギは顔を赤くしながら、ジンをちらりと見た。


「へぇ、お前、学院時代にそんなふうに見られてたのか。」


「うぅ……!」


「まぁまぁ。」


エリアスはひとつ微笑むと、書類をツムギの方へと差し出した。


「さて、契約の話を始めようか。」


ヴェルナーも頷きながら、重厚な契約書を机の上に置く。


「ツムギ。君の発明を、正式に守る手続きを進めよう。」


ツムギは大きく息を吸い込み、覚悟を決めた表情で頷いた。


「はい……よろしくお願いします!」


こうして、ツムギの正式な商標登録と利益契約の手続きが始まった――。

この後もしかすると日付が変わる頃に1回、

明日は10時迄と22時までに2回投稿予定です。

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