101. 第二章 プロローグ 動き出す歯車
4月11日の投稿です
小さな看板が風に揺れている。
《POTEN創舎》——ぽてをモチーフにしたそのマークは、温かみのある丸いフォルムと、どこか凛とした意志を感じさせるシンプルなデザインだった。
看板が掲げられてから、日も浅いこの場所は、まだ名もなき創舎。
だが、ここでは確かに、誰かのためを思って生まれた『ものづくり』が、静かに息づき始めていた。
この創舎の目的は、ただ物を作ることではない。
——『想いを形にし、使う人の心に寄り添うものづくり』。
そんな理念を掲げた仲間たちが、今日もこの場所に集っている。
「おーい、ご飯できたぞー!」
奥のキッチンから響く、どこか陽気な声。
エプロン姿のバルドが、巨大な鍋を抱えて現れる。すっかり創舎の“寮父さん”のような存在だ。
元王宮魔導士の肩書きを持つ彼は、今では技術や知恵を伝える“みんなのお父さん”として、頼られることも増えている。
「わーい! ごはんごはん!」
小さな足音を響かせて駆け込んでくるのは、最年少のメンバー・ハル。
風に愛された少年は、冒険者としてひとり素材集めの第一線に立っている。
「あせって運んでこぼさないようにね、ハルくん。急がなくても、私も手伝うからね。」
おっとりと声をかけるのはツムギ。創舎の中心人物であり、創術でちょっと変わったアイテムを作り出すPOTENの看板を背負う職人だ。
その足元には、ぽてっと丸い毛玉のような相棒——ぽてがちょこんと座っている。
テーブルにはすでにリナとナギ、エドの姿もあった。
交渉上手で冷静沈着なリナは、イリア仕込みの商才を活かし、創舎の商業面を担っている。
ナギは生地職人としてツムギを支える幼馴染で、最近では設計や仕入れの管理もお手の物だ。
そして、ギミックと細工の天才・エドは、ツムギのアイデアを現実にするため、日々試作に明け暮れている。
「さて、今日も一日、がんばるとするか」
静かに椅子に腰を下ろすエリアスは、《POTEN》の頭脳として創舎の活動を支える存在。
冷静沈着な分析と調整力で、仲間たちの舵取りをしている。
《POTEN》が作る品は、ただ便利で美しいだけではない。
使う人の心に寄り添い、ときに想いに応えて不思議な変化を見せることさえある。
それが噂となり、創舎の名が広く知られていくのは——
もう少し、未来の話。
本日、連載と短編の二つの物語も投稿しました。
僕だけ戦う素材収集冒険記はツムギの物語と同じく、毎日投稿を頑張っていこうと思っています。
もしよろしければ読んでいただけたら嬉しいです。
⚫︎ 僕だけ戦う素材収集冒険記 〜集めた素材で仲間がトンデモ魔道具を作り出す話〜
https://ncode.syosetu.com/N0693KH/
⚫︎ハルの素材収集冒険記・序章 出会いの工房
https://ncode.syosetu.com/N4259KI/