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電災都市  作者: あるふぁ
第二章『新宿クオム』
5/18

『新宿クオム』-2

 「きゃっ」

 「痛っ……どこ見て歩いてんだ!」


 突然の怒声に、真は反射的に振り返った。


 視線の先――路上には、尻餅をついた初老の男。

 男とその周囲には、鼻を突くほど濃密なアルコールの臭気が立ち込めている。

 ……どう見ても素面じゃない。

 

 アリスが申し訳なさそうな顔で立ち尽くしていた。

 どうやら、男がふらついた際に彼女とぶつかり、そのまま転んでしまったらしい。


 「ごめんなさい……大丈夫ですか?」

 アリスはすぐに頭を下げると、心配そうな顔を浮かべ、慎ましく手を差し伸べる。

 その動きには、彼女らしい、一分の曇りもない善意が込められていた……が。


 「触るんじゃねぇ!」

 男はその手を乱暴に振り払うと、憎々しげにアリスを睨みつけ、語気を荒げた。


 「偉そうに歩いてんじゃねぇよ、この()()()()がっ!」


 ――アリスの表情が凍りついた。

 鋭い痛みが胸の奥を突き刺し、言葉にならない衝撃が心を締めつける。

 目を伏せ、肩を僅かに震わせながら……静かに唇を噛んだ。


 

 ――だが、その言葉を聞いた次の瞬間、真の中で何かが弾ける。

 気がつけば、男の襟首を荒々しく掴み上げていた。

 「……あ?」


 間近で吐き出される、男の酒臭い息が、真の鼻腔に不快感をもたらす。

 だが、そんなものはどうでもいい。


 「おい……てめえ、今なんつった? もう一遍言ってみろ」

 低く、しかし殺意を押し殺した声が、男の耳元に捻じ込まれる。


 ――初老の男の目が揺れた。

 焦点が合わないまま、それでも真の目を見てしまったが最後、その奥底にある何かに気づいたのだろう。


 ――それは、まるで剥き出しの刃のようだった。

 容赦なく喉元に突きつけられた、冷たい凶器のような光。


 「おい、おっさん。てめえ、誰のおかげで、今ここで酒なんか飲めてんだ?」

 真の指が、襟元をさらに締め上げた。

 ――男の喉が鳴り、くぐもった呻きを漏らす。


 「てめえが呑気に酒盛りしてる間に、誰が命懸けで外を這いずり回って、クソみたいな現実からここを守ってると思ってんだ?」


 男は必死に何かを言おうと口を開く。パクパクと口だけよく動いている……まるで、まな板の上の魚みたいな間抜けな顔だ。

 ……だが、真の目は、その言葉を発する事さえも許さない。


 「首輪付き? おい、笑わせんなよ……」

 真は冷ややかに鼻で笑う。


 「てめぇみたいに、真昼間から呑気に酒飲んでるだけの奴が、誰かを見下す資格なんてあると思ってんのか?」


 周囲が静まり返り、張り詰めた緊張が、まるで濃霧のように辺りを包み込んだ。

 静かな騒めきが広がり、何事かと足を止める者たちの視線が集まる。


 やがて、真の怒気が膨れ上がるにつれ、広場の空気もじわじわと変わっていった。


 近くに座っていた老人たちが手を止め、訝しげに視線を寄せる。

 若い男女のグループが「なんだ、揉めてんのか?」と面白半分に集まり、一人の男が「やっちまえ!」と煽りたて、口笛を吹いた。

 

 近くの屋台に並んでいた母子連れや他の難民たちも、何事かと足を止め、騒めきが広がってゆく。


 それでも初老の男は、酒に染まった脳から、必死で苦し紛れの悪態と侮蔑の言葉を捻り出した。


 「へっ……なんだよ、飼い主サマってわけか……テメェも所詮、首輪付きの――」


 ……だが、その言葉は最後まで言い終えることができない。


 「おいッ!」

 慌てた声が響く。


 血相を変えた数人の男たちが駆け寄って来た。

 男の仲間らしいが、こいつらも揃って酒臭い。


 だが――彼等の表情には焦りが滲んでいる。

 彼等の視線は、自然と真の大腿部――そこに収まる拳銃(ハンドガン)に吸い寄せられていた。


 途端、彼等の顔がみるみる青ざめてゆく。


 ――それも当然だ。この世界で、レヴュラを狩る者――ハンターが銃器を携行していることなど、クオムに住んでいる者なら子供でも知っている。

 

 長物をむき身で持ち歩くことは稀だが、拳銃(ハンドガン)程度であれば、ホルスターに提げているハンターは珍しくもない。


 「おい、バカ野郎! やめろ! こいつハンターだぞ!」


 その言葉を聞いた瞬間、初老の男も僅かに肩を震わせる。

 それがどういうことなのか、酒に溺れたおつむでも理解はできるようだ。

 だが、すっかりアルコール漬けになった脳には、恐怖の方が追いついていないらしい。


 「お前ぇら、何ビビって――ぐぅッ!」


 仲間の一人が、強引に男の腕を取ると、力任せに引き離した。

 足元がもつれ、ふらついた初老の男を、もう一人の仲間が肩を抱えて支える。


 「悪かった! 悪気はねぇんだ、な? 酔ってるだけなんだよ、勘弁してくれ」


 仲間の男たちは必死に頭を下げる。


 顔には冷や汗が浮かび、今にも「どうか撃たないでくれ」と言い出しそうな様子だ。


 ――もし、真が怒りに身を任せ、その太腿にある暴力の象徴を引き抜いたが最後、初老の男の命は、いとも簡単に消し飛ぶ……彼等はそう悟ったのだろう。


 ――日本という国は、もともと銃社会とは無縁の国だった。

 電災がすべてを変えてしまったとはいえ、未だ実銃を手にした事など一度もない者、間近で見た事すらない者はいくらでもいる。

 

 クオムの外に出て、レヴュラとやり合う生き方を選ばない限り、銃と無縁のままで生きてる奴の方が多いのだ。

 

 ――そんな連中からしてみれば、ハンターと揉めれば、容赦なく、その身体に銃弾が撃ち込まれる……そんな風に思われているのかもしれない。


 

 「ほら、行くぞ!」


 男たちは、なおも何かを喚こうとする初老男の口を押さえ、慌ただしくその場を離れていく。

 そのうちの一人は、何度も何度も、真に向かって拝み手を繰り返していた。

 どうか撃たないでくれ、どうか殺さないでくれ……そういった無言の主張なのだろう。


 騒ぎを遠巻きに見ていた者たちは、元凶である初老の男が消えた途端、興味の火が燃え尽きたかのように、思い思いの方向へとつまらなそうに散りはじめた。


 堕落した酔っぱらいが射殺される……そんな、ショッキングなシーンでも期待してたのだろうか。

 興味本位で集まっていた若者たちは「つまんねぇな」と舌打ちしながら、屯に戻ってゆく。


 老人たちは「最近の若いもんは……」とぼやきながら、暇つぶしの世間話と共に、仲間と将棋を指し始めた。

 

 屋台の列は何事もなかったように進み、香ばしい匂いが辺りに漂い、列に並んでいた子供が嬉しそうに、出来たてのホットサンドを持って走ってゆく。

 

 ――結局のところ、この世界じゃ、こんな騒ぎなど、よくある日常の些末な出来事に過ぎない。

 大した娯楽もない今の世の中だ、自分が巻き込まれるわけでなければ、見知らぬ誰かの喧嘩すらもいいエンターテイメントなんだろう。

 

 やがて広場には、真とアリスの存在すら見えていないかのように、いつも通りの時間が再び流れ始め、誰もが無関心を決め込む。

 

 ――だが。

 

 ……アリスだけは、まるで時間が凍りついたかのように立ち尽くしている。

 

 浴びせられた、たったひとつの言葉が、胸の奥へと鈍く突き刺さり、その傷口から冷たい痛みがじわりと広がっていった。


 その一言が氷の刃のように鋭く、冷たく、何度もアリスの心の奥底を抉り続ける。

 

 ……ただの罵倒ではない。

 

 それは、彼女の存在そのものを否定し、踏みにじり、そして心に大きな穴を穿つかのように深く突き刺さる。



 アリスは、そっと自らの首筋に手を伸ばした。

 

 指先に触れたのは、硬質な冷たい感触。


 ――そう。


 彼女の首には、それがある。


 生まれた瞬間から刻まれた、逃れられない異質の証。

 忌まわしく、そして決して外れることのない鎖。


 アリスの瞳に、一瞬、影が差した。

 逃れられない現実が、突きつけられる。

 


 ――そう……アリスは……。

 


 …………人間じゃない。

 

 

 否、人間のように振る舞い、微笑み、言葉を交わすことはできる。

 誰かを気遣い、共に歩き、時に怒り、時に悲しむことも。

 

 だが――それでも、彼女は『本物』ではない。

 

 アリスの瞳に映るのは、ただの風景ではない。

 瞳孔の奥に隠された精密なレンズが、光の反射を計算し、像を結ぶ。

 彼女の肌は、人肌に近い温度を保ち、柔らかさもある。

 けれど、それは精巧に作られた疑似組織の機能に過ぎない。

 

 ――彼女は、『人間のように造られた存在』

 

 最新鋭の自律思考型AIを搭載したヒューマノイド――『メカドール』

 

 その証が、彼女の首にある。

 

 肌に密着する細い輪――制御用のチョーカー。

 それは本来、メカドールが『安全に運用されるため』の装置だった。

 

 しかし今は、彼女のような存在を忌み嫌う者たちにとって、『それ』こそが見分けるための象徴になっている。

 

 そして――彼女を蔑むための、安っぽい呼び名でもあった。

 

 『首輪付き』

 

 まるで奴隷のように、あるいは家畜のように。

 彼女を、『それ以下』の存在として扱うための、呪詛にも似た言葉。

 

 ――初老の男にとって、アリスのような存在は、須らく文明を滅ぼした憎むべき亡霊でしかないのかもしれない。




 人類が築き上げた文明を、容易く破壊した機械の群れ。

 クオムの外で跋扈する、異形の自律兵器――『レヴュラ』


 ――誰が、何のために、あんなものを生み出し、そしてどこから現れたのか。

 その正体も、目的も、電災から三年近くが経過した今なお、誰ひとりとして知る者はいない。


 分かっている事は、ただひとつ。

 レヴュラは未知のAIで動き、人類に対して無条件の敵意を向けるという事。

 ……それだけだ。


 AIの反乱によって日常を奪われた怒りや憎しみを抱き、アリスのようなメカドールや、人類に友好的なAIにすら敵意を剥き出しにする者たちがいる。


 ――A.I.A.(Artificial Intelligence Anticognism)……人工知能反認知主義。


 AIを決して人類の仲間とは認めず、徹底的に拒絶する思想。

 それを信奉する者たちは、新宿クオムにも一定数存在し、日常的にメカドールへ難癖をつけては騒ぎを起こしていた。


 もちろん、電災を引き起こしたのはアリスたちのようなメカドールではない。

 メカドールとレヴュラは、たとえ同じAI技術を基盤としていようとも、まったくの別物だ。


 だが、A.I.A.に染まった者たちにとっては、AIという存在そのものが敵であり、レヴュラもメカドールも等しく憎悪の対象に過ぎなかった。

 ――まるで、「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」とでも言わんばかりに。


 もし本当にレヴュラへの憎悪を晴らしたいのなら、クオムの外へ出て戦えばいい。

 命を賭け、一世一代の決闘でも挑めばいいのだ。


 だが、それができないからこそ、彼等は安全なクオムの中でメカドールを理不尽に罵り、鬱憤を晴らしている。

 結局のところ、彼等の行いはただの『やつ当たり』でしかない。


 「……アリス、大丈夫か?」

 真の問いに、アリスは一瞬言葉を失った。

 沈黙の後、小さく頷く。


「うん……大丈夫……」

 だが、その言葉の端には、抑えきれない悲しみが滲んでいた。

 真は歯噛みし、あの初老男を追いかけようとしたが、アリスはそっと腕を掴み、首を振った。


「もう、いいから……」

 その声音には、静かな哀しみと、諦めにも似た優しさがあった。


 ――メカドールは決して、人間の敵ではない。

 それは、真が誰よりも理解している。


 今日だって、アリスは命を懸けて戦った。

 たった一丁の拳銃でB級レヴュラ(スカラベ)の猛攻を引きつけ、それでも、彼女は自分の無事より、まず真の安否を気にかけてくれていた。


 そんな彼女のひたむきな優しさが、どれほど貴いものか。

 ――それは、共に生き抜いてきた日々の中で、幾度となく刻まれている。


 メカドールたちは、今も人間のために働いている。

 電災によって膨大な労働力が失われたこの世界で、彼等は必死に人類を支えてくれている存在だ。


 例えば、焼きたてのホットサンドが香ばしい香りを漂わせる、目の前の屋台――それを切り盛りしているのも、メカドールだ。


 食材を丁寧に焼き、調味料を調節し、ひとつひとつ手際よく調理していく。

 かつての世界なら、何の変哲もない光景だったかもしれない。

 だが、今のこの世界において、温かい食事を提供するその営みが、どれほど尊いものか。

 この荒れ果てた世界、人手はいくらあっても足りる事はない。

 それを補ってくれているのが、メカドールという者達なのだ。


「お、見ろよ。ホットサンドの屋台が出てるぞ……ちょっと食っていくか」


 真は、無理にでも明るく声を弾ませた。

 アリスの表情を少しでも和らげたかったのだ。


 しかし、そんな意図など、アリスにはお見通しだったのだろう。

 彼女はふっと微笑み、首を傾げながら答えた。


「いいけど……でも、先に報告しないとダメだよね?」


 真は肩を竦め、わざとらしく溜息をつく。


 ……まぁ、空腹だったのも事実だが、話題を逸らすためなら、何でもよかった。

 それに、クオムへ戻った以上、先に片付けなければならない用件がいくつかある。


 ホットサンドよりも、アリスの笑顔を取り戻すことの方が、ずっと重要だった。

 もし彼女の表情が晴れないのなら、目の前で派手に転んででも笑わせてやる。


 ――真は本気で、そう思っていた。


 ――――――――――――――――――――


 「ったく、A.I.A.の老害(クソ)どもが……」


 顔を顰め、吐き捨てるように呟きながら、真は足を踏み出した。

 その背中を追いながら、アリスは苦笑を漏らす。


「仕方ないよ……あの人たちも、きっといろんなものを失ったんだから」


「だからって、メカドールに当たってどうするよ?」

 真の語気がわずかに強まる。アリスは一瞬言葉に詰まり、けれど、やがて小さく頷いた。


「それは……そうなんだけど……ね」


 メカドールへの偏見は、今に始まった話ではない。

 アリス自身、それがどうしようもないことであると理解している。

 それでも、A.I.A.のような思想が生まれてしまった理由を考えれば、彼等の憎悪に一切の理解を示せないわけでもなかった。


「みんな、先が見えなくてイライラしてるんだよ」


 確かに、電災が発生してから、すでに三年余りの時が経った。

 それでも未来は依然として霧の向こうで、誰一人として確かなものを掴めずにいる。


 行き場を失った怒り、苛立ち、憤り、先の見えない不安と悲しみ。

 それらを受け止めるのも、人間に寄り添うことを目的として造られたメカドールの宿命なのだと、アリスは言う。


 諦め、あるいは開き直り――どんな言葉を使おうと構わない。

 不安と焦燥に満ちたこの世界で、A.I.A.の連中の罵声や侮蔑をいちいち気にしていては、心が持たない。そう笑うアリスの表情には、どこか達観した色があった。


「でもな……A.I.A.の連中は、何も昨日今日、生まれたわけじゃねぇだろ」

 真の言葉には、呆れにも似た静かな怒りが滲んでいる。


 ――電災など起こる前から、あの手の連中はどこにでもいた。


「AIは人間の仕事を奪う」 「技術が社会を壊す」


 彼等はそう喚き散らし、そして、いざ本当に世界が壊れた今、「AIのせいでこんなことになった」と、さらに声を大にしただけだ。


 ……いつの時代も、変化を恐れ、流れに逆らう者は必ず存在する。


 過去の栄光や年功序列に縋り付き、何の生産性もない持論を振りかざし、進歩を妨げることばかり躍起になる。

 まるで、自分たちこそが歴史の中心にいるのだと言わんばかりに、場違いな誇りを胸に居座る。


『為さず、作らず、請うばかり』

 そんな人間は、電災以前から嫌というほど見てきた。


 今だって、AIを毛嫌いするくせに、体調を崩せば医療施設へ駆け込み、看護担当のメカドールに世話をさせる。


 メカドールが用意した炊き出しには、我先にと群がり、当然の権利のように腹を満たしながら、なおも「世の中をこんなにしたのはAIだ」と罵声を浴びせるのだ。


 都合のいい時だけ利用し、都合の悪い時には憎悪を向ける――自分の都合に合わせ、立場を使い分ける連中。

 きっと、昔から変わらないのだろう。


 ――電災以前。

 少子高齢化が深刻化し、社会保障費が膨張を続ける中で、その負担を食い潰しながら生きてきたのは、まさにそういった手合いの人間たちだった。


 彼等の口癖は決まっている。


「俺たちの若い頃はな……」

 語る過去はいつも誇張され、己の功績を偽り輝かせる事には熱心に。

 だが、歴史の主役であったはずの彼等が、何も成し遂げなかった事実には頑なに目を背ける。


 いつだって、次の世代に尻拭いを押し付け、あらゆる責任から逃げ続けてきたのだ。


 ――そして、2027年4月8日、電災が発生し、文明社会は終わりを告げた。


 だが、それでも、人間の本質というものは、そう簡単には変わらない。


 電災から約三年の時間が経過した今でさえ、自分たちは最も庇護されるべき被害者だと信じ込み、何もせず、ただ権利だけを主張しようとする。


 クオムの安全が、どれほどの犠牲の上に成り立っているのか――そんなことを考えたことすらないのだろう。


 ましてや、自らその一員となり、戦おうという矜持など、最初から微塵も持ち合わせてはいない。


 真やアリスのような者が命を懸けてレヴュラを討伐し、クオムを守っている事実すら、彼等にとってはただの『他人事』なのだ。


 それを証拠に、彼等は昼間から呑気に酒を煽り、陽の下で愚痴を垂れ流している。  汗水を垂らし、クオムの設備維持や食料生産などで働く、多くの人間がいる平日の昼間に……だ。


 ……この世の中、酒だって決して安くはないはずなのに。


 まともな酒など、今の時代、簡単には手に入らない。

 真ですら、最後に酒を飲んだのは一ヵ月以上も前のことだった。


 もちろん、個人で密造している者もいるし、今の世の中、酒税法等と言う野暮なものも存在しない。

 酒を求めた連中はあの手この手で、自分たちの嗜好を満たしてくれるものを作りだしているが、真はそこまでしてアルコールを求めようとは思わない。


 ――酒なんて、腹の足しにもならない。


 今の世界で、生き延びるために必要なのは、栄養価の高い食糧だ。

 満たすべきは、虚無を埋める酩酊ではなく、命を繋ぐための糧なのだから。

ここでアリスの正体について、やっと明らかにすることが出来ました。


この『メカドール』と言う存在に関しても今後、少しずつ明らかになっていきますし、

二人の出会いなども描いていきます。


真やアリスを取り巻く、新宿クオムの様々な人物が出てきますし、この世界に関する

お話がしばらく続いていきますが、どうかお付き合いくださいませ。



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