『電災都市』-2
「ふぅ……アリス、終わったぞ。帰ってメシにしようぜ」
安堵と同時に、急に腹の底から空腹感が襲ってきた。ここ数日は碌なものを食っていない。
今の東京じゃ食材の賞味期限なんてもはや誰もが気にする余裕はなくなった。
日本が誇る食品メーカーの品質基準を信じたいところだが、それも電災前までのお話だ。
電災から三年近く経った今では、消費期限が一年以上も余裕で過ぎたものが平気で出回っている。
……腹でも壊してその辺で催した挙句、尻を丸出しでレヴュラに撃たれるなんて、悔やんでも悔やみきれない、間抜けな死に方は御免だ。
だから、真は前日ぐらいからエナジーバー等の補助食品で空腹を紛らわせている事が多い。
……尤も、最近じゃそのエナジーバーですら、消費期限が過ぎているものが多く、さらに品薄でもあるのだが。
サバイバル食だの、高タンパク食などと言えば聞こえはいいが、材料を聞いたら間違いなくトラウマになりそうな食い物ですら、当たり前の世の中になってしまった。
それでも、太平洋戦争末期の話などに聞く犬や猫……愛くるしい愛玩動物達が哀れな姿で食卓に並ぶという、イカれた食糧事情でないことだけは、まだマシなのかもしれない。
安定した食料供給など望むことができなくなった今、食料や物資の価格は天井知らずに高騰し、今や消費期限のとうに過ぎたカップラーメンが一個五千円もするような有様だ。
得体の知れない最近のサバイバル食なんぞを食うより、腹を壊す覚悟で電災前の完成された味を求めたがる奴は多い。
アリスとペアで行動しているとはいえ、基本的にはソロハンターであり、こなせる依頼の数に限りのある真はいつだって財布の寒さに頭を悩ませている。
……弾代だって安くはないのだ。
レヴュラを狩って生計を立てているなどと言っても、これは決してゲームの世界ではない。
良い金策モンスターなどは、何処にもいないし、美味しく稼げる狩場なんてものもない。
嘘か本当かは知らないが、上野の方じゃトラやクマが動物園から逃げ出し、腹を空かせてその辺を彷徨ってるなんて話も聞く。
人間様が食物連鎖の頂点に君臨する時代なんてものはとっくに終わったのだ。
万が一ドジでも踏もうものなら、セーブポイントに戻ってやり直す事などできず、自分の命を差し出してこの世界から永遠に退場する事となる。
……コンティニューは、この世界に存在しない。
無線機に接続されたヘッドセットを通じ、アリスの声がハウジングに響く。
〈――了解、記録終了。撤収準備に入るね〉
いつもならこれで終わりだ。
いつもであれば、このまま我が家へと帰り、さっきから空腹感を訴える胃袋を黙らせるように飯を喰らって惰眠を貪る。
今日稼いだ自分へのご褒美に、久々の酒を飲んだっていいだろう。
……だが、その日は明らかに何かが違っていた。
そう、電災が起こった日もそうだったが、真の『何か違う』と言う感覚は幸か不幸か良く当たる。
さっきから高所に留まるカラスの群れが、やかましいほどの鳴き声を執拗に上げ、転がっていたペットボトルの濁った液体が細かく震えるように揺れた。
「待て、何かいる」
真はヘッドセットのマイクを摘んで、小さな声で話しながら姿勢を低くした。
静寂を揺さぶるように響きはじめた音……それは次第に大きくなり、さっき討伐したレヴュラ共の残骸の更に奥……もとは区役所であった建物の陰から、それは聞こえてくる。
無人の街に響き渡る、何かがメキメキと潰れ、拉げる嫌な音。
明らかにまともではない何かが迫ってきている事だけ確かだ。
「アリス、記録はそのまま続けてろ。間違いなく何かいるぞ!」
真がアリスに記録撮影を続けるよう叫んだ瞬間、そいつは姿を現した。
「…………嘘……だろ?」
モーターの音を響かせ、四本の脚で闊歩する4mを超えた金属の体躯。
――それは、この状況では決して遭遇したくない存在。
「おいおいおいおい!B級が混じってるなんて聞いてないぞ!」
B級レヴュラとは、どの個体も4m近い大きさがある中型の戦闘種。
いつもの討伐で相手をしているD級やC級等とは比べ物にならない攻撃力と脅威度、人間を『狩る』ために存在すると推測される個体で、本来なら装備の整った小隊単位で対応する事が定石の相手だ。
真のようなソロハンターが馬鹿正直に、オンボロのアサルトライフル一丁で対峙していい相手ではない。
レヴュラはゆっくりと作動音を響かせ、機械仕掛けの脚でこちらへ向かって歩いてくる。
先ほどの狙撃で銃声を盛大に響かせたせいなのか、こちらの存在も位置も完全にバレてしまっているようだ。
「アリス、B級だ!絶対顔を出すな!」
真が無線機のマイクに向かって叫んだその瞬間、レヴュラの一部が見つめるようにこちらを向いた。
本体の後端に取り付けられた球体の構造物……そこに穿たれた小さな穴がこちらを目掛け指向する。
ぽっかりと口を開け、何処までも深淵へと続くような……黒く深い穴がこちらを見つめると、低く唸るようなモーター音と共に、火を噴いた。
まるで土砂降りの雨のように飛来する、周囲を引き裂くような銃弾から本能的に身を躱した真は、部屋の陰へと間一髪のところで飛び退いた。
だがその時、手には強烈な衝撃を感じ、金属の拉げる嫌な音が響く。
〈――真!大丈夫!?〉
無線機を通じ、アリスの心配そうな声が聞こえる。
数秒前まで真がいた場所には、全てを薙ぎ払う勢いで弾丸が雨霰とばかりに撃ち込まれていた。
「俺は大丈夫だ……くそ、銃がやられた」
身を躱す時、奴の銃弾を喰らったのだろう……手にしていた56式歩槍は、スチール製の機関部が激しく抉れ、いくつか部品も脱落していた。
……残念だが、もう使い物にはならないだろう。
その手にも被弾の残滓が如く、痺れが暫し残っていた。まともに喰らっていたらと思うと、真の額に脂汗が噴き出す。
〈――真、危険すぎる。依頼破棄しよう?〉
アリスが悲痛な声で提案するが、真はそれを拒否した。
「バカ言え、このままじゃ大赤字だ!それに、あいつを振り切って逃げるのは無理だぞ」
レヴュラの討伐依頼というものは、 『どこに』『どんなレヴュラが』『何をしているのか』といった探索情報を『購入』する事で、初めて依頼内容を独占する事ができ、他者からの妨害を防ぐことができる。
依頼を受けた者でなければ報酬を受け取る事もできないのだ。
アリスの言う『依頼破棄』……遂行が難しいと判断した場合、依頼内容を無視して撤退する事もできるが、その場合は依頼の独占権を失うばかりか、依頼内容を購入した費用も、遂行に要した経費も一切返ってくることはない。
無論、このまま逃げれば、さっき討伐したレヴュラの報酬も受け取る事が出来なくなってしまう。
……冗談のようだが、『帰るまでが討伐ですっ!』なのであり、このまま帰れば、丸損というわけだ。
この世の中、出鱈目に暴騰した物価のせいで、さっきの狙撃で使ったたった三発の弾代だけで豪勢なメシが数食、腹一杯になるほど食える。
討伐依頼の情報を『購入』した費用も考えると、それだけの経費や報酬を全部ドブに捨てるのはあまりにも惜しい。
真は留まる事のない硝煙弾雨の中で、建物の奥へと這いながら、ひとまず後退し、考え込む。
……だが、生憎とこのビルには裏口がない。
あらゆるビルや建造物犇めくこの東京で、裏口が存在しないビル等珍しくもないが、このビルにも裏口は存在していなかった。
今では動くこともなく、もう何の役にも立たないエレベーターと、ビルの横に備わる非常階段が唯一の出入口だ。
その非常階段を下りた先の細い路地も、隣のビルから崩れてきた瓦礫などが堆く積み重なり、通りを塞いで一方通行となってしまっている。
電災が起こる前ならば、さぞかし多くの人達で賑わった事だろう一階のコーヒーショップでさえ、電災のどさくさで発生した略奪行為のせいなのか、店の中はもう滅茶苦茶だ。
何に使うつもりなのか椅子やテーブル等も全て持ち去られている酷い有様で、隠れる場所ひとつありはしない。
どちらにせよ逃げるためには、このビルの正面へ出なければならず、それは当然、あのB級レヴュラの前に我が身を曝してご対面という事になる。
……もちろん、奴が親切丁寧に通してくれるわけなど、ありはしない。
白旗を掲げようと両手を上げて出て行こうと、奴の返答は単純明快、銃撃でのみ行われるだろう。
レヴュラ相手に友好的対話なんてものは、宇宙人との対話を試みるより不可能だ。
居場所がバレてしまってる以上、ここであいつを仕留めるしか確実に生き延びる手段はない。
「くそ……スカウトの連中、いい加減な仕事しやがって」
真は呪詛を吐くが如く、悪態をついた。
B級レヴュラの存在を報告しなかったスカウトに対して、憤りを通り越して怒りしか沸いてこない。
この世界では、レヴュラの動向を探る『スカウト』と呼ばれる偵察者が現場の情報を集めている。
スカウトが集めた情報を真のようなハンターが購入することで、依頼を受けられる仕組みになっているため、その情報の正確性が生死を左右するのだ。
高い金を払って購入した情報がこんな有様では、命がいくつあっても足りはしない。
〈――真、あのB級の情報がわかったよ……〉
B級レヴュラの巨躯は眼下に見える交差点手前で停止し、8階建てのこのビルの最上階……つまり、真の潜む位置を消し飛ばそうかと言う勢いで掃射し続けていた。
トリガーハッピーどころの騒ぎではない。
止むことがない弾雨の中で、アリスからの通信が真の不安な心を容赦なく抉る。
アリスはタブレット端末を操作し、目の前のB級レヴュラについて情報を見つけ出していた。
今はインターネットこそ使えないが、通信を伴わないスタンドアロンでなら、タブレット端末は情報共有ツールとして未だ有用で、多くのハンターが活用している。
未知数のバリエーションを持つレヴュラの姿を撮影した情報などは、タブレット端末や、なんらかの情報ガジェットで他ハンターと共有されているのが常だ。
アリスはそれらの共有情報の中から、探し当てた今回のB級レヴュラの情報を読み上げる。
――コードネームは『スカラベ』
主脚が接続される本体部と後部に張り出した球体の砲塔に、5.56mmガトリングガンの搭載が確認されている四脚歩行型のレヴュラだ。
これまでにもこの近辺で何度か目撃されており、一ヵ月程前に別のハンター小隊が遭遇した際にも、交戦したハンター数名が犠牲となった上、他のメンバーも逃げて来る事で精一杯だったらしい。
当然、その後の討伐報告はあがっておらず、世が世なら未だ狩られていない賞金首という奴だろう。
「何がスカラベだ。ふざけた名前しやがって」
スカラベは真の隠れるビルに向かって歩を進め、全てを薙ぎ払うかのようにガトリングガンの弾雨をぶちまける。
その銃撃で、周囲の物はまるで紐の切れた凧のように吹き飛び、転がっていたペットボトルが中身を撒き散らしながら宙に舞った。
その中身が何なのか知りたくもない不気味な液体が真の顔に降り注ぐと、とても形容し難い悪臭が鼻腔を苦しめる。
外装が焼け焦げた状態で転がっていたコピー機は、もはや何の機械だったのかわからない姿になっていた。今なら、「これは洗濯機です」と言われても信じられそうなほどに原形を留めていない。
それでもスカラベは全てを洗いざらい消し飛ばす勢いで辺り一面を掃射し続ける。
レヴュラに意志があるのかは定かではないが、こちらを狩る気だけは満々と言ったところか。
真は太腿のホルスターに目をやった。
そこには拳銃が収められてはいるが……だめだ、D級やC級と違い、奴の装甲は金属製だ。こんな豆鉄砲じゃ歯が立たない。
留まる事がない銃撃をフロアの奥の方で免れつつ、真は焦りだしていた。そんな時だ。
スカラベの銃撃が突如止む。
散々続いていた、無慈悲な銃撃が突如止まったのだ。
「弾切れ?いや、故障か?」
そのどちらかであってほしいが、事態は真が望むような展開に進んではくれない。
それは実に気の抜けた音だった。
例えるなら、景気よくコルクを抜いたような音、冷えた炭酸飲料の栓を抜いたような音……なんでもいい、そんな緊張感の欠片もない音が響き渡る。
「まずいっ!」
真は身を起こして、部屋のさらに奥へ駆け出し始めた。くそ、B級の登場のみならず、あんなものまで付いてたなんて想定外もいいとこだ。
風を切るような音が徐々に近づき、そしてその瞬間、大音響と激しい衝撃が真を襲う。
そこら中のゴミや瓦礫が出鱈目な動きで吹き飛び、宙へと舞い上がった。
間一髪、ひっくり返っていたオフィス机の陰へ飛び込んだ真の頭に、次々と壁材の破片や巻き上げられたゴミがこれでもかという程に落ちてくる。
そしてなおもスカラベからは続けざまに発射音が鳴り響いた。
その数秒後には、真が潜むビルに連続で爆発音が轟き、様々な破片が乱れ飛びながら壁の一部が崩壊した。
思わず吐いた言葉は着弾の轟音に掻き消され、ガラガラと音を立てて天井が崩落し、崩れたコンクリートの破片が嫌と言う程降り注ぐと、鈍い衝撃と共に真の記憶はそこで途切れ、視界が暗転した。
――と!
――と!
――と!だいじょうぶっ?。
視界は暗黒なまま、ヘッドセットのハウジングの奥で悲痛な声が何度も響いている。
……ああ、女の子の声だ。天に召される前の天使の声だろうか。
俺はここで死ぬのか?
暗転した視界の中で、真は声を聞いていた。
〈――真!?大丈夫?ねぇ、大丈夫だよねっ?返事して!〉
だが、ヘッドセットのハウジングに響く懸命な叫びが真の意識を徐々に呼び覚ましてゆく。
……勿論呼び掛けていたのはアリスだ。
だが、耳鳴りがし、混濁するかのように回る視界のせいで、自分がどういう体勢なのかさえもわからない。
どうやら、スカラベの放ったそれ……擲弾攻撃のせいで崩落した天井の破片が真の頭を直撃し、脳震盪を起こしていたらしい。
どの程度、意識が飛んでいたのかは、わからない。
――まだ世界は白黒状態のままでピントが合わず、完全な色彩が戻ってこない。
だが、天井の崩落に巻き込まれ、頭に破片を受けて意識を失っていた割に、身体の方には特に異常を感じなかった。
手足も問題なく動くし、出血等もしている様子はない。口の中が砂と埃でジャリジャリするだけだ。
この期に及んで骨折ひとつない我が身の頑丈さには感謝せざるを得ない。
お父さん、お母さん、丈夫な身体に産んでくれてありがとう……うるせぇ、クソくらえ。
ただ、ひとつ言えば、明らかに頭にズキズキとした痛みがある。
そっと、そこに触れると頭皮がこんもりと盛り上がり……なだらかな丘を作っていた。
「……あんのスカラベ野郎……」
真は誰に聞かせるわけでもなく一人憤り、毒づく。
スカラベはまだ真を仕留めていない事を確信でもしているのか、「汚物は消毒だぁ!」とばかりに、ガトリングガンによる無差別な掃射を再開していた。
低いモーターが唸る音と、周囲の何もかもを消し飛ばす勢いの弾雨が容赦なく降り注いでいる。
こちらは貴重な弾丸を一発一発、大事に、慎重に撃っているというのに、あっちは景気よく弾をバラ撒けるなんて不公平極まりない。
電災前なら無理ゲーだクソゲーだとコントローラーを投げて喚き散らしていたことだろう。
〈――真!?大丈夫?怪我はない?……無事で良かったよ〉
「ああ、なんとか生きてるよ。くそ……あの野郎、好き放題バカスカ撃ちやがって……」
真の無事に安堵の声を漏らすアリスに生存を伝えつつ、思わず愚痴もついでに漏れた。
しかも、崩壊した天井が細かい破片を何度も落とすたびに、それが真の頭へ次々落ちて来る様は、まるでコメディのようでムカっ腹が立ってくる。
スカラベの弾薬があとどれだけ残っているのかは見当もつかない。
このまま、じっとし続け、弾切れを待つという手もある。
だが、ワンフロアぶち抜きでロクな遮蔽物すらも無く、更に崩落した天井の瓦礫が山積している現状では、奴の擲弾を撃ち込み続けられると、今度こそ逃げ場がない。
例え階段を駆け降りたって、横の狭い路地はどうせ塞がっており、結局奴の前に姿を曝す事になる。
……勿論、お出迎えは5.56mm弾の雨で熱烈歓迎だ。冗談じゃない。
昔流行ったハリウッド映画でもあるまいし、身を反らして弾を避けるなんて、冗談みたいな真似は到底無理だ。
……いや、まぁ常識的に考えて、そんな芸当が出来る人間なんてのは、この地球上のどこにもいるわけはないのだが。
結局、行動を起こす以外の選択肢はないらしい。
真は部屋の隅に転がっている行軍嚢を睨み、ヘッドセットのマイクを摘んでアリスへ呟いた。
「……アリス、合図したら10秒だけスカラベの注意を引き付けてくれないか?」
危険極まりない選択である事は、真自身も十二分に理解している。
本来なら、女の子であるアリスにこんな危ない橋を渡らせたくはない。だが、今はこれくらいしか思いつく策がなかった。
純然たる攻撃種であるB級は下位のレヴュラを呼び寄せる機能を持っている。
他のレヴュラを追加で呼ばれても生還の可能性がさらに低くなるため、やるなら今しかない。
暫しの沈黙の後、無線機越しのアリスは答える。
〈――依頼破棄じゃないんだね……うん、わかった、10秒でいいんだね?準備が出来たら合図して……その代わり無茶しちゃだめだよ?〉
アリスは覚悟を決めたようで、この状況下で唯一の選択肢を理解しているようだった。
ここ一番で泣き言を吐き散らかし、尻込みしたりしないアリスの胆力にはいつも助けられる。
……尤も、無茶をするなと言われても、これからやる事は紛れもなく『バカ』が『無茶』をする事になるのだが。
真は部屋の中を芋虫のように這いながらオリーブ色の行軍嚢を掴むと、ファスナーを乱暴に引き開けた。
その中には69式火箭筒……世間では『RPG-7』として知られるロケットランチャーをコピーした中国製の発射器が鈍い光を放っている。
万が一の事態に備えて持って来ていたのは正解だったようだ。
発射器と予備弾頭だけで重量は8kg近くある大荷物ではあったが、いざという時のその破壊力は折り紙付きで、この状況を一変させるであろう、頼もしき切り札だ。
唯一の問題は、これを使用する時点で間違いなく『赤字』になるという事。
この世界では、銃や武器というものは食料に匹敵するほどに貴重だ。
戦車相手にも有効なRPG-7弾頭の価格なんて、D級レヴュラを数体狩った程度ではペイできない。
だが、金に代えられないものがたったひとつだけある。
プライド?
信用?
違う、決してそんなものじゃない。
…………それはただひとつ……己の命だ。
なろう作品は3000文字程度が読まれやすいなんて、
意見もあるようで、その方が手軽に読めるとも
聞きます。
この第一章『電災都市』はこの世界観へ読者の皆様を
お連れするプロローグ的な意味合いもありますので、
何処で区切ろうか悩んだ結果、少しボリューミーと
なってしまい、本当に長くなってしまいました。
今後は少し一話の文字量を減らして、もう少し
読みやすい量で投稿していこうと思っていますので、
どうかお容赦いただければ幸いです。