お手上げ
ケルベロスの三つの頭が、壁の隙間に潜むラリーたちをしつこく覗き込んでいた。鋭い爪が壁をガリガリと引っ掻き、ケルベロスの牙はまるで金属のようにきらめいている。しかし、隙間は意外と奥が深く、ケルベロスの攻撃が届く様子はなかった。
「とりあえず、ここにいる限りは安全ってことみたい」」リアナが小さな声でつぶやく。
「まあ、そうみたいだな。でも、ずっとここにいるわけにもいかないだろうし…」ラリーは呆れた表情で答え、隙間の奥に腰を下ろした。「とりあえず、これでも飲んで落ち着こうぜ。」ラリーが言いながら新しい缶ビールを開け、ダンとリアナに手渡した。
「こんな状況でお酒飲むなんて信じられない…」リアナは少し戸惑いながらも缶ビールを受け取り、ラリーに倣って一口飲む。
「ほら、考えてみなよ。あいつが飽きるまで、ここにいればいいんだよ。焦って動くより、この方が賢いだろ?」ラリーは無駄に前向きな言葉を吐き出しながら、まったく危機感を感じていない様子だ。
ダンも冷静にビールを飲みながら、「ま、ケルベロスが疲れるのを待つのも悪くないな。」と同調した。
時が過ぎ、ケルベロスはラリーたちに興味を失ったのか、たまにちらりとこちらを気にする程度になっていた。その間、ラリーたちは酒盛りを続け、どうするべきかを全く考えずに過ごしていた。
そんな時、広間への階段を誰かが降りてくる音が聞こえてきた。
「ねえ、誰か来たみたいよ。」リアナがささやき、三人は隙間からじっと広間の方を覗き込んだ。
ケルベロスも足音に反応し、突然、鋭い爪を引っ込めて立ち上がった。三つの頭が一斉に階段の方を向き、次の瞬間、階段から現れたエルフとゴルドを狙って猛然と襲いかかった。
「おぉ、はじまったぞ!」ラリーは新しい缶ビールを開けながら、ケルベロスとエルフたちの激しい戦闘を見守る。
リアナもダンも、ラリーに倣って隙間の中から戦闘の行方を静かに観察していた。「ねえ、どうする?見てるだけいいのかしら?」リアナが尋ねるが、ラリーは首を振った。
「いや、今は手を出さない方がいい。俺たちが動くと余計にややこしくなるかもしれない。ここは一つ、ビールを飲みながら様子を見よう。」
「うーん、ほんとにお手上げ状態ね…」リアナは少し笑って、ラリーの判断に従った。
ケルベロスとエルフたちの激闘が繰り広げられる中、ラリーたちはまるで観客のように、隙間からその様子を見守り続けた。




