猫探しは事件のはじまり
タボールの町はいつもどおりのんびりとした雰囲気で、中央広場では商人たちが活気よく声を張り上げている。そんな中、ラリーたちはいつものようにバルバラの酒場にたむろしていた。
「ねえ、ラリー、そろそろ仕事でも探さないと、また借金が増えるわよ」とリアナが、疲れた顔でつっこんだ。
「わかってるって。ちゃんと考えてるからさ」ラリーはダラっと椅子に腰掛け、ビールのジョッキを傾けながら答えた。
そのとき、扉がガラリと開き、ジョンが入ってきた。彼は町の騎士団に所属しているが、今日は非番らしく、鎧ではなく普段着を身にまとっていた。
「よう、ラリー。ちょっと頼みたいことがあるんだが…」ジョンは酒場のカウンターに座り、バルバラに軽く手を振ると、ラリーに向き直った。
「なんだよ、仕事か?」ラリーが興味なさそうにジョンを見上げる。
「そうなんだが…実は猫を探してほしいんだ」
「猫?またかよ!」リアナがすかさず突っ込む。「あんた、もっと他に頼む人いないの?」
「まあまあ、聞いてくれよ」とジョンは続ける。「その猫、最近いなくなってからというもの、やたらと噂が絶えないんだ。何か妙なことが起こってるんじゃないかってな」
「妙なこと?」ラリーが半信半疑で問いかける。
「そうさ。昨日なんか、質の悪い幻覚薬草を使ってるって話を聞いたんだ。で、今朝、その猫がよく歩き回ってた裏路地で、死体が見つかったんだよ」
「なによ、それ‥!」リアナが一瞬で険しい表情に変わった。「それ、ただ事じゃないじゃない!」
ラリーは一瞬で目を覚まし、ジョンを真剣に見つめた。「それって、俺たちに何をしろって?」
「まずは猫探しだ。もし猫が何かを見ていたり、知っているなら、それを見つけ出せば何か手がかりになるかもしれない」
「そんなこと…いや、まあ、いつも通りか」とラリーはため息をつきながらも、立ち上がった。「しょうがない、行くか」
ダンは何も言わずに黒いハットをかぶり直し、黙々と準備を整える。
「ラリー、また変なことに巻き込まれるんじゃないでしょうね?」リアナが疑わしそうにラリーを見つめた。
「そりゃわからないけど、俺たちがやらなきゃ誰がやるんだ?」ラリーはニヤリと笑って答えた。
こうして、ラリーたちはいつものように、一見なんでもない猫探しから始まる奇妙な事件に巻き込まれていくのだった。