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悪意

 その日は俺しか目を覚まさなかった。



 それでも奴はやっぱりいて、今日も謝罪を続ける。

やっぱりこの男は...。



 ––––––––––



「...ぐっすり眠れた」



「...そっか。それなら良かった」



「もしかして寝れなかった?」



「いや、普通に寝れたよ」と、嘘をついた。



 変な心配をかけたくなかったからというのもあるが、俺自身あの生き霊自体は悪くないのではないかと思うようになっていた。



 問題はむしろ...人間のほうである。



 窓からこっそりと外を覗く。

そこには人の姿はなかった。



 それでも警戒はしておくべきだろう。

昼間なら1人で行動もできるし。



 そう思って朝から家を出る。

名目は友達に会うということだったが、そんな予定はなかった。



 しばらく近くで身を潜めて待っていると、昨日のあの男が家の周りを彷徨き始める。



 黒い服と黒いパンツ。

そしてサングラスにマスクといかにも怪しい見た目をしていた。



 やっぱりか...。

いつからこんなことをしているのだろう。

俺は証拠を残すために動画を撮影し、その後声をかける。



「何してるんですか?」



 びくっ!と反応して逃げようとしたところで、「全部撮ってたので逃げても無駄ですよ!」と叫ぶ。



 すると、観念したように走るのをやめた。



 何を持っているかわからない。

一応一定の距離を保ちつつ、できるだけ人の多いところに行くべきだろう。



「話、聞かせてもらえます?」



「...はい」



 そのまま2人で喫茶店に行く。



 喫茶店に着くと男はサングラスとマスクを取った。



 それはあの男とは別の見知らぬ青年だった。



「...君は誰?なんであんなことしてたの?」



「...アルバイトです。あそこの家の周りを見張ったらお金がもらえるって聞いて...」



「...誰に?」



「知りません。ネットで知り合った人なので」



 いや、聞くまでもない。

その依頼主は間違いなくあの男だ。



「どうやって連絡とっていたんですか?」



「普通にメールで...」



「そのメールアドレス教えてもらえますか?」



 そうして俺はやつのメールアドレスを手に入れた。



 2度とそんなことはしないよう注意した後、彼の本名を運転免許証で確認し、解放した。



 そして、俺は早速そのメールアドレス宛にメールを送った。



『はじめまして。ネットで見たアルバイトの件で連絡しました』



 すぐに返事が返ってきた。



『よろしくお願いします。現金は後払いとなります。規定の時間内ずっとある家の周りをうろうろしてください。GPS機能で場所を確認していますので』



『わかりました。ちなみになぜこんなことをしているのですか?』



『それを話す必要はありません』



 まずったか。

結局それ以降連絡が返ってくることはなかった。



 あまり明確な回答を得ることが出来ないまま家に帰った。



「...ただいま」



「遅い」



 玄関先で待っていた果南にそう叱られた。



「悪かったよ」



「もう...馬鹿」



 事件が起きたのはそれから少し経った日のことだった。

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