カオスなビッグバン
「お前...これ持っていくのか」と、ボロボロのぬいぐるみを持って質問する。
「あたりめーだろ!これは俺の宝なんだから!」
「お兄ちゃん...まだそれ持ってたの?」
「おま、莉理が俺の誕生日にくれたんだろ!まさか忘れたのか!?」
「...それ10歳の時の話でしょ。もう8年ぐらい経ってるんだけど。いい加減捨てなよ」
「捨てられるわけねーよ!な!大河!」
「それは捨てられねーな」
「だよな!?」
「...なんで大河さんも便乗するんですか」
「おう。完全に悪ノリだ」
そんなこんなでみんなで御坂部の友人の車に荷物を乗せて、何往復かする。
そんなに距離は離れていなかったこともあり、まぁ、それなりの時間はかかりつつ、なんとか引っ越しを終えることができた。
「ふぅ...」
「マジサンキューなみんな」
「ありがとうございます」と、律儀にお辞儀する妹さん。
こんな感じの女の子が親と不仲ね...。と、少し余計な詮索を入れつつ、なんとか一仕事終えたのだった。
「ほれ、一万」
「いやいいっての」
「いや、流石にこれは渡さんとダメだから。俺が許せんわ」
「ケチなおにぃちゃんが1万なんて太っ腹なだねー」
「うっせーわ。元々お金はあげるつもりだったし、返してくれるっていう気持ちも嬉しかったし。大人しく受け取れ」
「...でも「いいんですよ。持ってっちゃってください」
「...じゃあありがたく」
そのまま家を後にして帰ることになった。
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折角だし、貰った一万円でパーティでも開くかーと思いながら帰宅すると、玄関に見知らぬ靴が一足。
珍しく果南が友達を連れてきたのかな?と思いながらリビングへの扉を開けると、そこには紗希が座っていた。
「...何してんの?」
「えっと...あはは」
「本当におにぃちゃんの知り合いなの?」と、怪しい目で紗希を見つめる。
話の展開はよく見えなかったが、とりあえず頷くことにした。
「そうなんだ...ふーん?...」
「それで何しにきたんだ?」
「...これだよ」と、ハンカチを手渡される。
「おう。さんきゅな。わざわざ」
「じゃ、私はこれで...」と、立ち去ろうとする紗希。
「ちょっと。折角ならパーティしていこうぜ?」と、買いすぎたお菓子と飲み物を指さして誘ってみる。
「...いいの?」
紗希がお菓子に目がないことは知っていた。
「おう。2人じゃ食べ切れないしな」
「...じゃあ...まぁ...少しだけ」
そうして、元彼女、義妹、俺という謎3人でのパーティが始まった。
「てか、妹なんていたの?」
「妹っていうか、義妹だな。父の再婚相手の連れ子」
「あーなるほど。そゆこと」
「それで?2人の関係は?」
「...知り合い...的な?」と、目を配る。
あんまり余計なことを果南には言いたくない。
「そう。知り合い。友達の友達的な」
さすがは元恋人。俺の意図をしっかりと読み取ってくれたようだ。
「ふーん...?」と、やや疑いの眼差しが強めの果南だった。
それからは何をするわけでもなく、3人でテレビを見ながらお菓子を食べていた。
果南がいるからあれだけど...、少し前のことを思い出す。
よく2人でこうやって過ごしていたなー...とか。
未練ではないが、少しだけ懐かしさを覚えるのだった。
すると、それは紗希のほうも同じだったらしく、「...懐かしいね」と、小さく呟いた。
「おう」と、適当に返す。
よりを戻すつもりは毛頭なかった。
また裏切られるのは怖いし、今は果南もいるしで、彼女が欲しい状況ではなかった。
そんな少しカオスな状況の中、更にカオスなことが起こるのだった。
ピーンポーンというチャイムが鳴り、玄関を開けると、そこには御坂部と御坂部妹が立っていた。
「どうした?」
「あー、いや...こいつがどうしてもお礼したいって...」と、妹を指差す。
「お礼って...もう一万円もらったし...」
「あれは私からじゃないですし。ちゃんとお礼したいんです」と、話していると後ろから果南と紗希が様子を見にきたことで、事態は最悪のカオス、いやビックバンが起こるのだった。




