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妹妹妹

「...何してんだよ。こんなところで」



「...」



 少し驚いた顔をしたのち、斜め下を見つめる。



「これ」と、ハンカチを手渡す。



「...なんで...」



「何でって。まぁ、ムカついてないって言ったら流石に嘘になるけど。別にだからって不幸のどん底に堕ちればいいって思うほど、俺は嫌な奴じゃねーし。けど、笑って許せるほど心が広いやつでもないけどな」



「...ありがとう...それと...ごめん」と、そのハンカチを受け取る。



「大学にはちゃんと行けよ」とだけ告げてその場を後にした。



 –––––––––––––



 家に帰って一息つくと、果南が顔を覗かせる。



「なんかあった?」



「いや別に」



「嘘。絶対なんかあった顔してる」



「なんもないっての。てか、その格好は何?」



「メイドさんー。ドンキで買ったの。どう?萌える?」



「萌えとか古くないか」



「古くないし」と、頬をつねられる。



「じゃあ、いいことか悪いことかくらいは教えて」



「...良いことなんじゃないかな。分からんけど」



「なにそれw」と、鼻歌を歌いながら料理をする果南。



 良いこと...だった気がする。

強いて言うなら、事件の謎は全て解けて犯人は分かったものの、その犯人は既に命を絶ったような、。

決して100点とは言えなかったものの、心の中の靄は濃霧から薄霧に変わった。



 –––––––––––––––



『ありがとね』



「何がだよ」



『惚けちゃって。紗希のこと。今日はちゃんとゼミに来てたよ。それになんかスッキリした顔してた』



「...そっか」



『てか、あのハンカチまだ使ってんだ』



「...なんで知ってんだよ」



『見たらわかるっての。あんなにボロボロなんだから捨てれば良いのに』



「...大切な思い出だからな」



『そっか。んじゃ、私が代わりに捨てておくよ』



「悪魔か」



『だね。可愛い悪魔だから』と、笑いながらそう言った。



 すると、一通の連絡が入る。



19:15『ありがとうね』



 それはブロックできなかった彼女のLINEからの連絡だった。



19:20『あいよ』



19:21『ブロックしてなかったんだ。とっくにされてると思ってた』



19:23『悩んだけど、まぁ良いかなって』



19:24『そっか。ハンカチ返したいんだけど』



19:26『あー...まぁ郵便受けにでも突っ込んでくれれば良いよ』



19:28『うん。分かった』



 –––––––––––––– 翌日



 いつもの学校終わり。



「おー!大河!なんか久々だなー!」



「御坂部じゃん」



「そうだぜ!御坂部だぜ!」



「...なんだよ」



「なんだよー釣れない顔しちゃってさー。そんな嫌そうな顔すんなよー。ちょっと良い話があってさー」



「御坂部のいう良い話は大概クソだってアインシュタインが言ってた」



「いや!今回はガチで良い話だから!」



「...はぁ...」



「カツカレー奢ってやるからさー」



「...まぁ、話だけは聞いてやろう」



「それ来た!」



 そうして、2人で学食に向かう。

そのままカツカレーを二つ頼んで適当な席に座ると、お願いのポーズをしてくる。



「引越しの手伝いしてくんね?」



「...良い話って言ったよな?」



「ちゃうねんちゃうねん!あれやねん!バイト代出すっちゅーねん!」



「エセ何弁だよ。それ」



「頼む!」と、テーブルに頭に擦り付けるほど下げてくる。



「...はぁ...分かったよ。それで?いつなの?」



「...今日?」



「...」



「はい!1万円!」と、1万円を握らせてくる。



「...分かったよ。この後か」



「いやー!助かるよ!」



 そのままカツカレーをやや急ぎ目に食べると、御坂部の家に向かう。



 御坂部の家には何度か行ったことがあった。



「そういえばなんで引越すんだよ」



「んー?あぁー...妹がさ、一緒に住みたいって言うんだよ。まぁ元々親と妹の仲が悪くてな...」と、少し予想外な暗い家庭の事情を明かしてくる。



「...ふーん」



 御坂部の妹か。

とんでもない性格をしてそうだな。と、勝手な偏見を抱く。



 家に到着すると、俺と同じくお金に釣られた何人かの大学の友達が来ていた。



「みんな悪いな!無料で働いてくれるなんて!」と、にっこりと笑った後、俺を見つめる。



 ...みんなは善意で働いてんだからお前だけ金をもらって後ろめたくないのか?という顔をしている。



 ...こいつは本当に。



「...わかったよ。後で返すよ」



「えー!?いいのにー!?」と、わざとらしく笑う。



 すると、その中で紅一点、1人の女の子が立っていた。



 もしや...これが御坂部の妹か!?



 俺を見た瞬間、驚いた顔をしたのちに、少し恥ずかしそうに笑いながら声をかけてくる。



「もしかして...大河さんですか?」



「...え?そ、そうだけど...」



「そうですか」と、彼女は意味深に少し笑った。

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