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戒めとして公開

 1942年六月五~七日のミッドウェー海戦により、日本海軍は空母四隻と重巡一隻を失い。艦隊の傘であり矛である空母の損失は痛手に過ぎ。ガダルカナル島の消耗戦によって、日本は敗戦へと転がり落ちていく。

 しかしここで諦めることは出来ない。降伏した捕虜を公然と殺す米軍に負ければ、地獄よりも酷いことになるのは確かだから。


 日本海軍は必死に艦艇をかき集めた。三年も保てば十分な戦時標準船を建造したり、浮上可能な艦艇を浮上させたり、普通ならば戦争に使わないようなロートルの艦艇を現役に復帰させたりした。

 そんな中に『吾妻』もいた。


 『吾妻』

 日露戦争のかの『日本海海戦』にも参加した武勲艦であり、1942年七月段階では海軍機関学校の定繋(ていはん)練習艦として働いていた。

 それを現役に復帰させるというのだからさあ大変。

 こびりついた牡蠣やフジツボを必死に剥がしたらとりあえず浦賀ドックに放り込んで点検。

 とりあえずゴミ同然なボイラーのベルヴィール缶二四缶をロ号艦本式混燃缶六缶(空気余熱器付)に変更。煙突は三本から二本に省略。

 艦首構造も燃費向上のためバルバスバウへ。

 骨董品な砲は撤去! なんで魚雷発射管なんてあるんだ撤去撤去!


 とりあえず撤去作業が終わる九月になって問題発生。

「載せる砲がない、だと!?」

 艦政本部曰く。

『そんな骨董品に載せる砲なんてありません。機関は載せたんだからネズミ輸送にでも使えるでしょ?』

 大本営と艦政本部との意志疎通が取れていなかった訳だが、これは艦政本部が正しい。

 しかし砲を載せないのもみすぼらしいので、十二糎七連装高角砲一基を艦前方に設置して終わりとした。

 防空用には、九六式二十五粍連装機銃を艦中央左右に四機ずつ計八機設置。防空火器としては全く不足している。

 そしてネズミ輸送の効率を高めるためデリックを後部甲板に二基、左右に並べて設置。艦の一番後ろに九メートルカッター二隻搭載。

 色々減った内部構造は整理して、三本目の煙突があった辺りを大貨物庫にして、そのすぐ後ろのデリックで荷物を取り出して艦の外に置けるようにする。また艦前方に少し出来た貨物庫と大貨物庫を通路で繋いだ。




 八か月かけて改装の終わった『吾妻』は、最高速度で空荷で三四ノット、満載で二八ノットを出せた。ただし最大船速で舵を一杯切ると船体から軋む音がするという欠陥もあった。

 また、乗員も四二〇人まで削減出来た。機関部以外は新兵揃いだが、問題ないだろう。

 ただ、艦長に適任な人材がなく。また損耗率の高いネズミ輸送程度しかやらない予定の『吾妻』の艦長をやりたがる士官もおらず。という大問題があった。

 おまけに主砲が一基しかないから戦う艦としては扱えないし、貨物船にしては貨物庫が小さすぎるので輸送艦とも扱えない。連合艦隊指令部もどう運用すれば良いのか分からないという有り様だった。

「戦闘か輸送か、どちらかに特化すべきだった」

 関係者一同嘆くも後の祭り。

「仕方ない。なんか民間から『艦長やりたい!』って志願者おるし、そいつ貨客船の副船長の経験はあるみたいだし。腕前は分からんが、そいつにやらせるか」

 というやる気のない大本営判断により、『吾妻』の艦長が決まり。

 『ネズミ輸送艦』とか直接的な艦種名だと士気も上がらないだろうから『封鎖突破艦』という、昔々南北戦争の時代にアメリカで存在した艦種の名前を付けて。

 この艦長のワガママと資金提供により、よく分からない兵器が取り付けられ。

 ろくな習熟訓練も受けさせられず。1943年七月七日、『吾妻』は任務に就いた。

史実で吾妻が現役復帰することはありませんでした。

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