第97話
レーゲンスに戻った二人はその日は休み、翌日はフィールドで乱獲をしながら体を動かした。ギルドでは他の冒険者から暫く見なかったぞと言われダンジョンで鍛錬してたんだよと答える二人。
フィールドで体を動かした翌日、二人は攻略中のダンジョンに潜っていた。10層に飛ぶと目の前に広がる森林を見る。
「さてと、このフロアは魔物系がメインだろうな」
「虎、熊、猿あたりか、素早さが高いタイプかな」
そんな話をしてから森林の中に入っていく二人。予想通り木々の間から四つ足の魔獣が次々と二人に襲いかかってくる中を剣と魔法で倒しながら速度を落とすことなく進んでいく。
11層も同じ森林のフロアだったがここでは4、5体のランクAの四つ足の魔獣が襲ってきた。草むらから、木の影から、そして木の上から次々と襲いかかっては倒されていく魔獣。二人はほとんどペースを落とさずに12層をクリアするとそのまま13層もクリアして地上に戻ってきた。
「しばらく攻略が進んでなかったと思ったら13層まで攻略されている。見なかった間どこかで鍛錬してたのかい?」
ダンジョンからギルドに戻ってくるとそこにいた仲間のトムのパーティに声をかけられた。
「クリアしたダンジョンの下層部でねランクSS相手に鍛錬を続けてたんだよ」
酒を飲みながら答えるデイブ。冒険者は自分達がどこで活動をしているのか余りオープンにはしないのが常だ。良い狩場や鍛錬に良い場所についてはそれぞれのパーティが秘密にしている。
自分達がそうしている以上周囲に聞くこともタブーに近いがランクSの二人は鍛錬している場所に他の冒険者がくることがないので比較的オープンだ。
「ノワール・ルージュなら鍛錬となるともうそう言う場所しかないよな」
「そういうこと。格上と戦闘しないと腕が鈍るからな」
酒場の誰かが言った言葉に答えているデイブ。その後は今日クリアした11層から13層までについて聞かれるままに答える二人。
「森林か。視界が悪い上に上からも襲ってくるってのはいやらしいな」
「10層はランクAが単体だ。ここでしっかり慣れたら11層もクリアできるよ」
「トムらならランクAのリンクには対応できるだろう?」
デイブとダンが言う。
「お前さん達ほど簡単じゃないけどな」
苦笑しながら言うトム。その後もダンジョンの話で盛り上がり遅くまで酒場にいた二人。少し飲み過ぎたと翌日は軽くフィールドで体を動かし、そしてその翌日に再びダンジョンに戻ってきた。
14層になると洞窟のフロアに戻り、ランクAに混じってランクSが登場してくる。14層、15層とランクAとSが混在し16層でランクSのみのフロアになった。
相変わらずの3勤1休のペースでダンジョン2日、地上1日と活動を続ける二人は16、17層をクリアし今18層にいる。ここはランクSの複数体とランクSSの単体の両方がいるフロアだ。薄暗い土壁の洞窟っぽい通路が奥に伸びている。
「このフロアもしらみ潰しに探そうぜ」
両手の剣に風魔法をエンチャントしたデイブの言葉に頷くとダンを先頭にフロアの攻略を開始した。通路と時折ドアのない小部屋がランダムにあるフロア。小部屋には魔獣がいたり何もいなかったりするが全ての部屋を1つずつ調べていく。
部屋を見つけるとデイブが隅々まで探し、その間にダンは部屋の入り口に立って近づいてくる魔獣を討伐する。時間をかけて18層を探索した二人は19層に降りてきていた。
「全てのダンジョンに隠し部屋がある訳でもないからな」
「そう言うこと」
階段に座って19層を見ながら休息している彼らの前には大きな地下空洞が広がっていた。フロア全体が1つの空洞の様に見えるがフロア自体が広いので先は暗くて見えない程だ。そして見える魔獣は全てランクSSになっている。
「左からぐるっと1周まわってくる感じかな?」
前を向いたままダンが言う。
「そうしようか。俺はダンのサポートをしながら隠し部屋を探す。ダンは戦闘に集中してくれ」
「了解」
ダンが立ち上がるとデイブも立ち上がった。そうして階段を降りると左の壁に沿って歩き出す。二人を見つけた魔獣が襲ってくるがダンが単独で倒しながら進んでいく。
「また剣が鋭くなってるな」
あっという間にSSを倒したダンを見てデイブが背後から声をかけてきた。
「わかるかい? 体の動きも軽くなってるんだよ」
「どこまで成長するんだよ、お前さんは」
背後からかかるデイブの声を聞きながらランクSSを次々と倒していくダン。スキルがアップしたことにより総合力もアップ、そして暗黒剣士の特性である敵に与えた際に自分に返ってくる体力も増えて今のダンは永久機関の様に疲れ知らずになっていた。
左壁を進んでいくと20層に降りる階段を見つけたが降りずにそのまま壁沿いに歩いて再び19層へ降りてきた階段に戻ってきた二人。
「無かったか」
そう言うダンの口調はそれほど落胆したものでは無かった。ある方が珍しいというのを知っているからだ。
「結構時間を食ったな。一旦戻るか」
そうして二人で地上に戻るともう夜の帷が降りていた。結局二人はダンジョン入り口近くで野営をする。
「明日は19層を真っ直ぐに突っ切ってそのまま20層に降りてボス戦だな」
夕食をとりながらのデイブの言葉に頷くダン。
翌日朝から19層に降りた二人はそのまま広いフロアを突っ切って20層に降りてきた。
そうしてそのままボス部屋に入ってランクSSの上位クラスのトロルを倒すと魔石以外に金貨、剣、指輪を取り出して地上に戻る。
レーゲンスのギルドの掲示板にダンジョンクリアが張り出されてしばらくしてから二人は街に戻ってきた。
二人がギルドに入るとそこにいた冒険者からダンジョンのクリアのお礼を言われそのままギルマスと面談する。
「どんなダンジョンだった?」
デイブがダンジョンについて説明していく。そうして時折ダンが補足する。これもいつものパターンだ。
「聞いている限りお前達以外でもチャンスはありそうだな」
「あると思うよ。ランクSの複数体でしっかりと鍛錬すれば困難じゃない。ランクSSも結局最後まで単体だったし」
カードを出して精算を終えた二人がギルドの受付に戻ると誘われるままに酒場に移動してクリアしてきたダンジョンについて話をする。
「ギルマスにも言ったけどしっかりランクSの複数体のフロアで鍛錬をすればダンジョンクリアは難しくない」
「ノワール・ルージュがダンジョンの情報をくれるから助かるな。俺達に参考になる話だ」
デイブの話が終わるとこの街のランクAのランスが声を出した。それに答える様にデイブが言う。
「トムのパーティやランスのパーティなら行けるんじゃないか?慌てずにしっかりと敵に慣れてから攻略すればボスまで行けると思うぜ」
「ここまで敵の情報がわかればな。近いうちに俺達も挑戦するよ」




