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ノワール・ルージュ  作者: 花屋敷
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第8話

 翌日ダンとデイブは新しい武器とローブの効果を確認するために街の外に出ていた。森の中でランクCの魔獣を倒しながら新しい武器とローブの性能を確認する。


「こりゃ剣もローブも想像以上だな」


「全くだ。今までと切れ味、魔法の威力が全然違うぞ」

 

 ランクCの魔獣を数体倒したところで休憩をとりながら話をする二人。


「武器はもちろんだが装備も効果が出ているのがよくわかるな」


 ダンの言葉に全くだとデイブ。そして


「これからだがどうする?先にズボンを買う金策をしてからダンジョンに潜るかそれともダンジョンに挑戦するかだ」


 ダンはデイブに顔を向けると


「俺としては金策でズボンを買ってからダンジョンに挑戦したい」


 そう言うと


「ダンも俺に感化されてきたか?慎重じゃないかよ」


 そう言って笑う。


「まぁな。ただここまで効果の違いが実感できるのなら先ずはしっかりと装備を充実させたいって気があるんだよ。結果的にその方がダンジョン攻略も楽になる気がする」


「その通りだ」


 その後もフィールドで魔獣を倒してクエストをこなしていく。時にダンが前でデイブが後ろ、時にデイブが前でダンが後ろとお互いに武器と防具、剣と魔法のスキルも上げながら二人で戦闘とコンビネーションに慣れていった。


 そうしてフィールドでクエストをこなしていた二人は目標金額に達すると再びレミーの防具屋に顔をだしそこで彼女が勧めていたズボンを2本買った。


「いいじゃない。これでまた強くなってるわよ」


 早速買ったばかりのズボンに着替えた二人を見て言う。


「ありがとう。これで武器も防具も最低限揃ったからそろそろダンジョンに挑戦しようかと思ってるのさ」


 デイブの言葉になるほどねと頷きながらレミーは目の前の二人組に対する評価ポイントを上げていた。大抵の冒険者は何かに追われる様にダンジョンに潜っていく。そうして無理をして奥に進んでいこうとする。たまたま上手くいった、運がよかったことを実力と勘違いしてそのまま進んで大怪我をしたりあるいは帰ってこなかったりした冒険者達を多く見てきたレミー。自分たちの実力を過信すると必ずしっぺ返しが来るのが冒険者という職業だ。


 目の前の彼らは違う。自分たちの足元をしっかりと見て身の丈にあった攻略をしようとしている。一見すると臆病とか安全マージンを取り過ぎだとか言われるが結局そうして身の丈にあった進め方をする者が生き残り、そして早く上に上がっていくのだ。


「先輩の冒険者としてアドバイスしてあげる。ダンジョンの中はずっと同じ明るさよ。時間の感覚がわからなくなる。だから気が付かない内に疲れが溜まってしまって集中力がなくなった時に魔獣にやられることがあるの。ダンジョンでは無理をしないこと。これが一番よ。競争じゃないんだから少しずつ進んでいくといいわ」


 ダンはレミーの話を聞きながらなるほどと思っていた。始まりのダンジョンしかダンジョンを知らないダンだがレミーが言っていることはわかる。


 ダンジョンの中にいると時間の経過がわからなくなる。そして目の前に敵が見えると冒険者の性で倒したくなる。いつの間にか時間が過ぎて疲労が蓄積される。


 5層しかない始まりのダンジョンですら外に出た時はこんなに時間が経っていたのかと思ったダン。隣を見るとデイブもレミーの言葉に頷いていた。



「さてとこれでランクCの装備関係は一通り揃った」


 礼を言ってレミーの防具屋を出た二人はそのままギルドの酒場で打ち合わせをする。時間が中途半端なせいかギルドの中は閑散としていた。


「ということで明日から行くか」


 というデイブにそうしようと言うダン。


「それで俺達の最初のダンジョンはここだ」


 とデイブが手作りの簡単な地図をテーブルに広げる。X印が付いている場所が二人が行くダンジョンだ。地図を広げたデイブが説明を続ける。


「ここはこの街を出て歩いて1時間ちょっと。ランクCが入ることができるダンジョンだ」


「ダンジョンに入るのにランク制限があるのか?」


 デイブと同じ様に地図を見ていたダンが顔を上げてデイブを見る。


「そうなんだよ。ダンジョンはそれぞれ難易度が異なる。難易度の高いダンジョンにはランクの高い冒険者しか入れない。これは中で事故が起こるのを防ぐためだ」


「なるほど」


「俺達はそんなことはしないが、冒険者の中には勘違い野郎も多い。該当ランク以上のフロアに降りていったバカがそこで死んだということが何度か続いたらしいんだ。それでギルドとしてダンジョンにもランクをつけたって訳さ」


 聞きながらダンは自分がやっていたゲームを思い出していた。ソロで無茶苦茶やって格上に何度も挑戦しては死んでたっけ。ただあれはゲーム、今は生身の身体だ。あんな無茶をしたらあっという間に死んでしまうだろう。


「わかった。俺達は無茶せず確実に進もうぜ。それでこのダンジョンはランクCでどこまでいけるんだい?」


「全10層のダンジョンになってるが、下層になるとランクBが複数体固まってる。そしてボスは一応ランクAだ。一応というのはランクAの中でも下位に位置付けされるらしい。なのでこのダンジョンでスキルを磨きながら少しずつ下層に降りていこうと思う。もちろん最終的にはダンジョンクリアだが。すぐには無理だろうな」


「いいんじゃないの?競争でもないし。ダンジョンでスキル上げ、フィールドで金策というのを続けて行こうぜ」


「そうだな」


 その後二人は市内で薬品や携帯用の食料などダンジョンで必須と言われているアイテムを購入する。二人とも魔法袋という見た目以上にたくさん物が収納できるアイテムは持っていないので背中に背負うリュックに入る分だけを買っていく。たくさん買うと重くなって動きが悪くなる。かと言って必要な物を削ると万が一の時に困る。二人で相談しながらアイテムを購入し終わった時には夕方になっていた。


 泊まっている宿で夕食を取ると二人はそれぞれ部屋に戻って早めに床についた。


 ダンはベッドの中で明日からのダンジョンに想いを馳せていたので興奮してなかなか寝付けなかった。念願の魔法が使える冒険者になって明日が初めての本格的なダンジョンだ。ゲームと違うリセットもセーブもできない中で自分がどれだけやれるのか楽しみ半分不安半分の中あれこれ考えているうちに眠りに落ちた。

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