表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ノワール・ルージュ  作者: 花屋敷
55/126

第55話


 完全休養日のこの日、ダンは市内を目的もなくぶらぶらしていた。2人組だが四六時中一緒に行動している訳ではない。デイブが部屋にいるのかいないのかも知らない。お互いにプライベートには干渉しないという約束事ができていた。


 通りを歩いて特に目的もなく雑貨屋黒猫の扉を開いたダン。


「あら、お久しぶりね」


「いらっしゃい」


 同時に2人の女性の声がする。店主のミンとレミーが店の中にあるテーブルに座ってお茶を飲んでいた。


「ダンもこの店に来るんだ」


 ダンはこの店にレミーがいてびっくりするがそれはレミーも同じだった様だ。


「ギルドに紹介されてここで何回か品物を買ったことがあるんだよ、それよりここにレミーがいてびっくりしているんだけど」


「あら、そうなの?。私とミンは以前からの知り合いよ」


「ということはミンも元冒険者だったってこと?」


 冒険者に詳しい店主だなと思っていたダンが聞くと


「そうよ。あっ、でも私はレミーやワッツのパーティじゃなかったのよ。彼女とは別のパーティで活動してたの。それより立ってないで座ったら?」


 ミンに勧められて空いている椅子に腰掛けるダン。ミンがダンにもお茶を注いでくれた。カップに挿れてくれたお茶を一口飲んでダンが言った。


「それでか。最初に来た時に冒険者について詳しいなとは思ってたんだよ。元冒険者なら頷ける」


「隠すつもりはなかったんだけどね、もし聞かれたらそうよと答えるつもりだったの。でも聞かれなかったしまぁいいかなって」


 ミンがそう言うとレミーが


「ミンは元精霊士なの。ここは元々は彼女のお婆さんがやってた店」


「お婆ちゃんがね、私が冒険者を引退したって聞いたらこの店を継いでやってくれないかって言ってきたの。自分はもう歳だからのんびりしたいって。それで引退してからお店を引き継いだのよ」


 レミーの言葉を引き取ってミンが言う。


「雑貨屋黒猫って名前はそのお婆ちゃんの時から?」


「そう、お婆ちゃんが黒猫を飼ってたの。もう随分前に死んじゃったけどね。長生きした猫だったわ」


 二人の説明で納得したダン。元冒険者がやっているということもあるのだろう。以前はどうだったかはもちろん知らないが今は冒険者必須のアイテムが綺麗に店の中に並んで陳列されている。


 お茶を飲みながら見るともなく店の中を見るダン。その視線に気づいたのか、


「この前買ってくれた寝袋はどうだった?」


 ダンは陳列物を見ていた視線をレミーに戻すと、


「いやあれは助かった。荒野の寒い夜もぐっすり眠れるし2人で買ってよかったって言ってたんだよ」


 その言葉を聞いてよかったわとミンが言う。そして


「武器と防具を買うのならワッツとレミーの店が一番ね。良いものを揃えている」


「ありがと。そして武器と防具以外だとここもいいのを置いているわよ」


 ミンの言葉にレミーが言うとダンもそうだよなと言ってから、


「魔法袋もギルドの紹介でこの店で買えたし、本当に冒険者に寄り添ってる店だよな」


 そう言ってから思い出した様に


「ところでアイテムボックスがこの店で手に入ることってあるのかい?」


 その言葉にはう〜んと言うミン。しばらく考えてから


「あれってダンジョンの宝箱とか強いNMが落とすって言われてるよね。そしてそれが売買されるときって凄い金額になってるのよ。大抵は手に入れた人が使うだろうし。パーティに1つあればすごく便利になるからね」


 ミンの言葉に頷くダン。確かに見つけた冒険者が売りに出すことはまずないだろう。


「引退する冒険者がそれまで使っていた武器や装備を処分するときに出ることがあるんだけど、まず出品が少ないのとその売値がものすごく高いのよ。当たり前と言えば当たり前なんだけどさ」


「となるといつかわからないが売り物が出るのを待つか、それとも自分たちで宝箱かダンジョンのボスを倒しまくってそれを狙うしかないって事になるな」


「そうね。ダンなら自分たちであちこちのダンジョンを攻略した方が確率が高いんじゃない?」


 ミンが言うとレミーもダンとデイブならそっちの方がずっと早いわよと言う


 ダンがそうしようといい、その後もしばらく雑談をして、お茶美味しかったよ、ありがとうと言ってダンが椅子から立ち上がり店を出ていった。

 

 ダンの姿が見えなくなるとミンが、


「あの子ね、ワッツとレミーが一押ししてる冒険者って」


「そう。暗黒剣士のダンと赤魔道士のデイブ。2人で組んでるけど2人とも才能の塊よ。デイブも凄いけど今ここにいたダンはそれ以上ね。うちのワッツが抜かれたと言ってるけどその通り。聞いたらレーゲンスのダンジョンでランクSSが複数体固まっているフロアで鍛錬してそれ以上のランクのボスを2人で倒したって」


 聞いていたミンはびっくりする。


「それって当時このヴェルスで圧倒的な強さだったワッツとレミーらのパーティでも厳しいんじゃないの?」


「厳しいというかおそらく無理ね。でも彼らは2人でクリアしている。ワッツの二刀流を完璧にマスターしているし元々持っている素材が素晴らしいの。ワッツはまだまだ伸びるって言ってるし私もそう思っているの」


 ここまでワッツとレミーが褒めちぎる冒険者は見たことも聞いたこともない。ミンはランクAの冒険者として活動していたが、その当時ワッツのパーティはダントツで強かった。そのワッツとレミーが抜かれたと認めている2人はどれほどの実力者なんだろうとレミーの言葉を聞きながらミンは考えていた。


 ダンはその後街をぶらぶらして必要な日用品を買い、その後1人で露店で夕食を食べてアパートに戻ってきた。冒険者としての活動を全くしない日だったがいい気分転換になったと部屋に戻り、早めに就寝した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ