第39話
レーゲンスでは最初は2日を地上クエスト、1日をダンジョンにして武者修行を開始した2人。ダンジョンはギルドで聞いたトムらが攻略中のダンジョンにして上層から順にクリアしていた。
2週間程経つと地上1日、ダンジョン2日と変更してダンジョンの攻略を進めていく。12層までクリアしていた2人は13層を昨日クリアし、14層を攻略していた。事前の情報通りにここはランクSが単体で出てきている。
ダンとデイブにとっては単体のランクSは敵ではない。剣と魔法で倒しながらフロアを攻略して15層に降りる。
「なるほど、確かにこれはリンクするな」
それまでの通路と違ってここは洞窟の広場の様な造りになっていて視界に入るだけでも複数体のランクSが固まって広場の中をウロウロと徘徊しているのが見える。
デイブの言葉を聞きながら広場を見ていたダン。
「固まってるがせいぜい3体程だ。倒しながら前に進めそうだな」
「そうだな。気を抜かずに行こうぜ」
そう言って背後から強化魔法をかけるデイブ。礼を言ったダンは両手に片手剣を持つと広場に進んでいった。
2人を見つけたランクSの魔獣3体が襲いかかってきたがあっさり倒すと前に進む、次の3体も問題なく倒して広場のランクSを倒しながら奥に進んでいく2人。
結局3体のみのリンクしかなかったフロアを攻略して16層に降りる階段を見つけた。
16層も15層と同じく3体程度のランクSが固まっているがフロアだったがフロア自体が広くなっていた。この日は16層をクリアしたところで地上に戻ってレーゲンスの街に戻ってきた2人。
ここも他の都市と同じくダンジョンの攻略情報は日々ギルドの掲示板にアップされている。しばらく攻略が進んでいなかったダンジョンの16層がクリアされているという情報を見た冒険者達。
「一体誰が攻略してるんだ?」
という話になっていた。
ダンとデイブがダンジョンからギルドに戻ってきたのは夕刻でちょうど外から戻ってきた冒険者達がギルドに顔を出すピークタイムと重なって、ギルドの中は多くの冒険者の熱気が渦巻いていた。
大きなギルドの受付付近や隣の酒場に多数の冒険者がたむろしている中、ギルドの扉を開けて中に入ってきた2人にその場にいた冒険者達が視線を注ぐ。
赤いローブと黒いローブを着て片手剣を2本持っている2人組。レーゲンスにはいない格好の2人を見ている中、当人達は気にすることもなくカウンターに並んで順番がくるとカードを差し出す。
「結構倒していますね」
「ダンジョンで鍛錬してるからね」
そんなやりとりをしてカードを受け取った2人が飯でも食うかと言いながらギルドを出ようと扉に向かうと、
「見ない顔の奴らがいるぜ」
聞こえよがしの大きな声が酒場から聞こえてきた。そして
「どうせどっかの街からの護衛クエストで大勢の冒険者と一緒に金魚の糞みたいについてきた情けない野郎だろ?」
その声で酒場が静かになる。ほとんどの冒険者が会話を止めて成り行きを見ている中、声を出している冒険者が
「ほらっ、ビビって返事もできないぜ、情けない野郎だぜ」
そういうとそのテーブルから大きな笑い声が聞こえてきた。ダンとデイブは立ち止まると声を出しているテーブルに近づいていく。そうしてデイブが声を出している男に、
「喧嘩を売ってるのならいつでも買うぜ? どっちが情けない野郎か白黒つけようか」
「ふん、俺たちに喧嘩を売るって本当に世間知らずだな。身体が震えてるじゃないかよ、今ならここで土下座してごめんなさいって言ったら許してやるよ」
そしてまた大きな声で笑う男。
「相手の力量も見極めらないくせに偉そうにしてるんじゃないぜ」
黙っていたダンがいうと男はゆっくりと立ち上がる。背丈はダンよりも高く頭1つ抜き出ているそして横幅もでかい。立ち上がって上からダンを見下ろすと、
「おいおい、本気かよ」
「そういうお前は口先だけなのか?本当は俺達とやるのが怖いんじゃないの?」
再びダンが言う。
「おもしれぇ、後で吠えずらかくなよ、鍛錬場に来いよ叩きのめしてやる」
酒場の男達も同時に立ち上がって鍛錬場に移動していく。ダンとデイブはいつも通りの様子で緊張もせずギルド横にある鍛錬場に移動していった。
ワッツとレミーから遠慮するなと言われている2人。鍛錬場に着くと
「あんたの相手をすればいいのかい?」
「ああ。俺が相手をしてやる。レーゲンスのランクAの冒険者の質の高さを見せてやるよ」
そう言って鍛錬場にある片手剣を右手に持つ男。ランクAと言って相手がビビると思ったらしいがダンは全く表情を買えず。
「じゃあ俺が相手をしよう」
ダンは両手に片手剣を2本持つ。
「あいつ、二刀流だぜ」
鍛錬場で見ている誰かが声を出す。鍛錬場の周辺には多くの冒険者が集まってきていた。夕刻で外からギルドに戻ってきた連中も模擬戦の話を聞いて鍛錬場に集まってきていて大勢の冒険者が鍛錬場の周囲にいる。そしてその集まってきた連中の中にはダンとデイブと話をしていたランクAのトムのパーティもいた。
「ジニーがダンとデイブに喧嘩を売ったらしい」
「なるほど。ジニーの奴ランクAに上がって最近一段と態度がでかくなってるって話だ」
「相手をするのはダンか。ちょうどいい、お手並み拝見といこう」
トム達がそんな話をしている中、鍛錬場ではジニーは相手が2本の片手剣を持ったのを見てふんと言い、
「格好だけは一人前じゃないかよ、これ見よがしに2本の剣を持ってよ。使いこなせるのかよ?」
「うだうだ言わずにかかってこいよ。いくら吠えても俺は倒せないぜ」
「この野郎」
そう言ってジニーが立っているダンに突っかかっていった。ダンはその場で2本の片手剣を持って構えたままだ。そこにジニーが突っ込んでいくと軽く体を交わしながらすれ違い様に両手に持った片手剣が目にも止まらぬ速さで動いてあっという間にジニーの身体が鍛錬場の地面に叩きつけられる。
シーンとする鍛錬場。
「たいしたことないな。口だけだったか」
ダンがいうと別の男が鍛錬場に出てきた。
「今度は俺だ。本気でいくぜ」
「ダン、今度は俺がやる」
そう言ってデイブがダンから片手剣2本を受け取る。
「あいつも二刀流だ」
鍛錬場にいた誰かが口に出す。
そうして今度は斧を持った戦士の男が突っ込んでいったがさっきと同じ様にデイブにあっという間に叩きのめされた。2人の男が地面に倒れ込んで全身を痙攣させている。
しばらくして僧侶らしき男が鍛錬場に入るとぶっ倒れている2人に治癒魔法を掛ける。それを見ながらダンとデイブは模擬刀を戻すと
「喧嘩を売るなら相手をよく見てからの方がいいぞ、今度は手加減しない」
ダンが倒れてる2人に顔を向けて言った。




