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ノワール・ルージュ  作者: 花屋敷
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第30話

防具を買った翌日、2人はギルドに顔をだした。ジェイとの鍛錬場での一件以来2人はこのヴェルスのギルドでも注目される様になっていた。


「DDだ」あるいは「ノアール・ルージュの2人だ」


 と声が出ると他の連中がギルドに入ってきた2人に顔を向ける。


「見た感じは強くなさそうなんだけどな」


「その外見に騙されたランクBのジェイがダンにあっという間にぶちのめされて10日間動けなかったって話じゃないか。半端ないぞ」


 2人は周囲の視線を感じながらカウンターに向かうとフィールドでのランクAの乱獲クエストを受ける。新しい防具に慣れようとまずは地上での鍛錬を選択した2人。


 クエストを受けてから街を出ていつものランクAがいる森の奥に入っていく。


「これは軽くて動きやすい、それに身体の動きもよくなっている」


 目の前で2体のランクAを倒したダンが言う。その後デイブも同じ様に2体を倒した後、


「防具でもこれだけの差が出るんだな」


 本人のスキルと防具は掛け算の世界だ。掛ける方は装備系、掛けられる方は自分のスキルだというのがデイブとダンの見立てだ。大雑把な見立てだが考え方は間違ってないだろうと2人は経験から感じていた。


 本人のスキル X 装備 = 力(戦闘能力)


 という関係性で今は掛け算で掛ける側の装備の数字が上がってきている。あとは掛けられる側の当人のスキルをあげると一気に合計の数字が高くなる。


 この日は終日フィールドで乱獲をして新しい装備に慣れた2人は翌日ダンジョンの14層に飛んだ。


 いつもの階段を降りたところでキャンプをしてダンが通路の先から複数体のランクSを釣ってきて階段前で戦闘をする。


「2体が魔道士系だ。左を頼む」


 そう叫びながら戻ってくるダン。すぐにデイブが左の魔獣に魔法を撃つとほぼ同じタイミングでダンも魔法を撃つ。そうして2人で魔獣に向かって突っ込んでいき近接戦に持ち込む。デイブが1体を相手にしている間にダンは魔道士系を倒してから前衛系の魔獣を相手にする。


 そうして3体を無事に倒した2人。


「魔道士系2体でも危なげなく倒せたな」


「こちらの素早さも上がっているからだろう。相手の懐に飛び込む時のスピードが上がっているのが体感できるレベルだな」


 その後も14層での鍛錬を続けて夕刻にヴェルスに戻ってきた2人。受付で討伐に応じた換金を終えるとアパート近くにある行きつけの食堂で打ち合わせをする。


 ギルドの酒場で打ち合わせをすると周囲に色々と聞かれるのと周りから勧められて酒を飲むことが多くなる。ダンもデイブも酒は嫌いではないがついつい飲み過ぎると翌朝の鍛錬に支障がでるという理由から酒は自分たちのペースで飲んでギルドの酒場ではたまにしか飲まない様にしていた。


「14層の攻略が見えてきた。そう思わないか?」


 食事をしながらの反省会でデイブが言う


「14層の攻略だけならいけそうな気がするけどさ」


 そこまで言ってデイブを見るダン。デイブもその通りなんだよと言って


「14層から15層に降りるとそこには石板がない。つまり15層に降りたらボス戦に挑んで勝利するか、再び14層に戻って13層から14層に降りる階段の石板まで戻るしかないってことだ」


 で、どうする?とデイブが目で聞いてくる。


「臆病と言われるかもしれないがまだボス戦は早い気がする。もっと個人のレベルを上げたいんだ。14層が低層並にさっくりと進めるくらいにまで」


 この世界に慣れてきたダン。最初はゲーム感覚で敵を倒していたがその内に戦闘の怖さや自分のスキルについても理解してくると無茶をしなくなってきていた。


 一度死んだら終わり、この当たり前の事実を本当の意味で理解したダンは死なない為に自分のスキルをあげる鍛錬を続けている。これに関してはデイブも同様だろう。2人組だからこそ自分たちのスキルを上げないことには生きていけないと知っている。


「そうなんだよな。俺もまだ早いかなと思ってる。ボス戦は勢いでやる相手じゃないしな」


「ワッツに聞いたらボスのレベルは教えてくれるだろうけど、それもしたくないんだよな。自分たちでやらないと本当に強くならない気がするんだ」


 ダンの言葉に大きく頷くデイブ。結局2人はボス戦には挑まずに引き続き14層で鍛錬を続けるという方針を確認する。


「ところでレーゲンスはどうする?ボス戦の後にする?」


「そうだな。やっぱり先にあのダンジョンをクリアしたいな」


 デイブはダンのことだから先にレーゲンスに向かうと言うのではと思っていた。


「いつの間にかダンも慎重な性格になってるじゃないかよ」


「デイブに感化されたかな?」


 そう言って笑ってから真面目な顔になると、


「俺達は2人組だ。そしてあのダンジョンはワッツらが現役の時にクリアしてからは誰もクリアしていない。そのダンジョンをクリアすることで俺達の自信になると思うんだよ。2人組でも鍛錬して強くなったら5人のパーティと同じ事が出来るんだって。そうなったら60日の移動も必要以上に心配することもなくなるんじゃないかと思ってね」


 周りから見ると2人の実力は既に相当のレベルにあるが当人達はまだまだだと思っているしそしてもっと強くなれると信じていた。


「何かに追われてる訳でもないしな。急がずマイペースでやるか。そしてしっかり強くなってから地方に武者修行に行くのも悪くないな」


 デイブが言うとそう言う事だと頷くダン。


 そうして2人は引き続きヴェルスで鍛錬をすることにするが3勤の内2勤をダンジョンに、1勤をフィールドにとダンジョン中心にして自分たちのスキルを上げる鍛錬をすることにした。


 14層に降りたところでひたすらにランクSの単体そして複数体を相手にする2人。

 1ヶ月後には4体まで、そしてその1ヶ月後には最大5体のリンクも全く危なげなく倒せる様になる。


 ダンの剣はさらに威力を増し、デイブの魔法にも磨きがかかってきていた。


「14層に降りてきた頃に比べるとかなり慣れてきてるというかスキルが上がってきてるな」


 5体のリンクを問題なく処理した後で階段に座って水分をとりながらダンが言うと、


「そろそろ挑戦するか」


「ああ。いよいよだ」


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