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ノワール・ルージュ  作者: 花屋敷
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第22話


 ダンとデイブは相変わらず3勤1休のペースで活動をしていた。地上の乱獲クエストでかなり金策もできていたが2人は武器と防具はヴェルスのワッツとレミーの店以外で買う気はなかったのでたまった金は使わずに貯めている。


「だいぶ安定していきたな」


 目の前で消えていくランクSを見ながらダンの背後からデイブが声を掛ける。


「ようやくランクSの動きに慣れてきたよ。それでもちょっと油断するとやられる。気が抜けないな」


 2人ともスキルが上がったせいもありお互いの剣の威力や魔法の威力がダンジョンに潜った当初よりアップしているのを実感している。


「13層を攻略する気になってきたか?」


「いやそれはないな。まだまだ修行が足りないよ」


 デイブの言葉に答えるダン。そうして2人でまた階段を降りた場所を中心に近くに現れるランクSを討伐して鍛錬に勤しんだ。


 夕刻にラウンロイドの街に戻ってきてギルドに報告をしたところで2人に声がかかる。酒場を見ると街道で護衛クエストをしていたこの街のランクBのリチャードの姿が見えた。2人でテーブルに近づいていくとリチャードとその時のパーティメンバー達が挨拶をしてくる。


「久しぶり。ヴェルスから戻ってきていたんだな」


 勧められた椅子に座るとデイブが話かけた。


「3日ほど前にな。往復の護衛のクエストだったんだよ。それよりもそっちはラウンロイドでずっと鍛錬かい?」


「そう。地上で乱獲したりダンジョンに潜ったりしてる。地上でもヴェルスとは違う魔獣がいるのでいい鍛錬になってるよ」


 リーダーのリチャードとデイブのやりとりを聞いているダン。


「聞いたんだがダンジョンの13層でランクS相手に鍛錬してるんだって?」


 リチャードの隣に座っているロンが2人に顔を向けて聞いてくる。それに頷くと、


「そうなんだよ。これがキツくてね。ダンと2人でひぃひぃ言いながら倒してるよ」


「それでも相手はランクSだろ?」


「だから鍛錬になる。おかげでスキルが上がってるのが実感できてるんだ」


 デイブの言葉にそれにしてもランクS相手に鍛錬って普通はしないぜと声が出るが、


「まぁ俺達は2人組だからさ。ギリギリの戦闘をしないとギルドポイントも貯まらないし、でも結構楽しみながらやってるぜ、なぁ」


 そう言ってダンを見るデイブ。


「最初は本当にきつかったよ。でも最近は討伐する時間も短くなってきてる。きついけどいい訓練になってるよ」


 ダンが言うと


「暗黒剣士のスキルの体力還元をフル活用してるって訳だ」


「そう言う事。最近は切った時に戻ってくる体力も増えた気がしてる。実感できるから鍛錬してても苦痛じゃ無いな」


「どういう風に倒してるの?」


 とこれは精霊士のリリィが聞いてきた。


「基本はダンが前で俺が後ろ。ダンが剣で俺が魔法というスタイルで対峙してる。でも時々入れ替わって俺が前になったりもしてる。鍛錬だからお互いに剣と魔法のスキルを上げてるんだ。それで敵が前衛系ならガチでぶつかって剣で体を斬りながら魔法を撃って剣と魔法で相手の体力を削ってる。敵が魔導士系だと相手が魔法を打つ前にこちらが魔法を撃って詠唱を中断させてる間に懐に飛び込んで相手に詠唱させずにこちらからずっと攻撃して倒してるかな」


「なるほど。敢えて相手の懐に飛び込んでいってるのか」


 デイブの話にリチャードが言う。


「盾ジョブがいないだろ?遠隔持ちの敵にはできるだけ懐に入る様にしてるんだ。それで随分と楽になったよ」


 デイブの話しを聞いていたリリィがダンを見て


「ランクSの懐に飛び込んで行くのって怖くない?」


「最初は怖かったよ。実際魔法を撃たれたこともあるし。でも結局これが一番楽に倒せるんだってわかってからは怖くなくなったな。魔法についてはデイブが必ず先に魔法を撃って中断してくれるのがわかっているからね」


 聞いていたリチャードはこの2人のチームワークの良さにも感心していた。お互いがお互いを信頼している。だからこその戦闘方法だ。味方が信用できなければそんな戦法は絶対に取れない。こいつらは2人組というメリットを最大限に生かす方法をしってるんだなと思っていた。


 リチャードの思いを感じたのかデイブが言う。


「俺達は2人組だ。普通のパーティの戦い方はできない。それでどうしたらいいか試行錯誤した結果、今のスタイルに落ち着いたんだよ。ただこれがベストかどうかはまだわからない、ひょっとしたらもっと良い方法があるかもしれないしな。毎日宿に戻るとダンと2人であーだこーだと言いながらの反省会さ」


「ところでリチャードらは普段はどうしてるんだい?やっぱりダンジョンに潜ることが多いのかい?」


 デイブが聞いてくるとケビンが


「そうだな。ダンジョンに潜るのがメインでたまに地上で乱獲かな。ギルドポイントを早く貯めるためにそうしているんだよ」


 やっぱりギルドポイントを早く貯めるにはダンジョンや護衛クエストが手っ取り早いらしい。なるほどと頷いているダン。デイブもそうなるわなと言ってから


「俺達は護衛クエストを受けるチャンスがまず無い。それはもう仕方ないから諦めてる。だから鍛錬重視でやってるんだ」


「それぞれのやり方があるってことだ」


 リチャードが言った言葉に全員が頷いた。そして


「いつまでここにいる予定なんだい?」


「そろそろヴェルスに戻ろうかと思ってる。この街の様子もわかったし周辺の魔獣の状態もわかった。ランクS相手の鍛錬ならヴェルスの近くのダンジョンでもできるしな」


「でもまた来るつもりだよ。いつかあのダンジョンをクリアしたいからね」

 

 デイブに続いて言うダン。


「今回はクリアしないのか?」


「無理はしないというのが俺達の基本方針なのさ。それに今の実力じゃランクSの複数体を確実に倒せるという自信がない。ボスは到底無理だろう。クリアなんてまだまだ先の話だよ」


 自分の実力もしっかりと把握しているってことか。ヴェルスのランクAのミゲルが褒めちぎっていたのも頷ける。デイブの言葉を聞きながらリチャードは目の前に座っている2人を見ていた。



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