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ノワール・ルージュ  作者: 花屋敷
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第21話


 結局10層の鍛錬を10日ほど続けた2人はようやく10層を攻略してクリアした。そして11層は同じ様にランクAが単体で出てくるフロアで、フロアが広くなっていただけだったのでさっくりとクリア。


 12層はランクAが2体固まって出てきたが、しっかりと魔獣対策をしていて実力を上げていた2人は13層に下りてきていた。


 階段を降りた2人の前、通路にはランクSが単体で通路に立ち塞がっているのが見える。


「ここでまた鍛錬だな」


 後ろから声をかけてくるデイブに首を縦にふるダン。


「自信がつくまで13層で鍛錬だ」


 階段を降りたところにキャンプをして通路に湧くランクS1体と対峙する2人。ランクSになると動きも早くなり、武器や魔法の威力もかなりアップする。2人はそれをなんとか交わしながら時間をかけて1体を倒していく。


 1体倒すとしっかりと休養を取る2人。


「流石にきついな」


「ああ。1体でこれだ。連戦になったら相当だろう」


 そうして休んで体力が回復すると再び通路のランクSに攻撃をする2人。ランクS相手の鍛錬は相当きついが強くなっていくのは実感できる。


「13層でこれだ。ボスのレベルは相当高いだろう」


「無理にクリアする必要はないんじゃないか?とりあえず13層でしっかりと鍛錬をして自分達が強くなったらそこでボス戦を見据えたらどうだろう?」


「ダンの言う通り。俺もそう思ってた。俺達の実力じゃとてもじゃないがボスどころか14層をクリアするのも難しいだろう。ここはしっかりと鍛錬をして出直ししよう」


 方針が決まると2人はこれからは3勤1休のうち2日はフィールドで金策、1日は13層で鍛錬、そして休日というローテーションを組む。


 ギルドで受けるクエストはランクAの乱獲クエストを受けて街から森に入ってはランクB、そしてランクAを倒してはクエストをこなし、1日は13層でランクS1体を相手に鍛錬を続けていた。


 2人がラウンロイドの街にきて2ヶ月が経っていた。




「お疲れ様でした。長期に渡りありがとうございました」


 馬車に乗ったサムが言うと


「いやいや、こちらこそ。また護衛の必要があればいつでも声かけてくださいよ」


 リチャードが言うとサムからクエスト終了の用紙をもらってこれで護衛クエストは終了となった。


「おつかれさん」


 リチャードがメンバーに言う。


「長かったけどペイはいいし。サムの護衛クエストならいつでもOKね」


 リリィが口に出すと皆そうだよなと言う。


「とりあえず一旦解散しよう。俺はギルドにクエスト終了の連絡と報酬をもらってくる。夕刻にいつものレストランでいいかな?」


 メンバーの了解を取るとラウンロイドの門を入ったところでパーティは一旦解散となった。リチャードは1人でギルドに顔を出してカウンターに出向くと受付にクエスト終了書を見せる。


「内容を確認しました。これが報酬になります」


 報酬の金貨を受け取ったリチャードはカウンターを離れかけたところで立ち止まると顔を再び受付嬢に向ける。何事かという表情をしている受付嬢に


「ヴェルスから来ている赤魔道士と暗黒剣士の2人組はまだこの街にいるかどうか知ってるかい?」


 リチャードの言葉を聞いていた受付嬢は正にダンとデイブとのやりとりをしている女性だったので


「ええ。まだいらっしゃいますよ」


 やっぱりいたかと思い、


「ダンジョンに潜ってるのか?」


「いえ、ダンジョンは4日に1度程度で他の日は地上で乱獲クエストを受けておられますね」


「なるほど。で、どこのダンジョンに潜ってるんだい?彼らとは知り合いでね」


 受付嬢はダンジョンの場所を言うとそこはリチャードも知っていた。10層で鍛錬をしたことがあるからだ。


「やっぱり奴らも10層か11層で鍛錬をしてるのかい?」


 その言葉に首を左右に振って


「いえ、あの人たちは今は13層ですね。12層までクリアしているという記録がありますから」


「13層?そこってランクSのフロアじゃなかったっけ?」


「その通りです。聞いたらなんでも13層で鍛錬をしてるんだって言ってましたよ」


 ランクBの2人組がランクSのフロアにいるのか。ヴェルスで聞いたとおりだ、あいつらは別格なんだと理解するリチャード。


 受付嬢に礼をいってギルドを出たリチャードは夕刻集まったメンバーといつものレストランに入っていく。食事を注文してから各自に報酬を5等分して渡すと


「これで一息つけるな」


 と戦士のロン。


「ほんと。サムの護衛はもう何度もしてるし気を遣わなくていいわ。それでこの報酬。長時間拘束されるけど十分に魅力的よね」


 僧侶のローズも嬉しそうな表情だ。


 そうして食事をして護衛の間にあったことを思い出して話しながら食事が進んだところで


「ところで行く途中であった例の2人組だがまだこの街にいるらしい」


 例の2人組とリチャードが言った時点で他のメンバーも誰のことかすぐに理解する。


「この街で鍛錬してるのか?」


 ロンが聞いてきた。リチャードはそうらしいと言ってから


「俺達が行った東のダンジョン、覚えてるかい? 歩いて2時間程のところにあるダンジョンだ」


「確か、10層でランクAを相手にしてたダンジョンだろ?」


 ケビンの言葉にその通りだと言ってから


「さっきギルドで聞いてきたんだがあいつらはあのダンジョンで13層でランクSを相手に鍛錬してるらしい」


「ランクS相手に鍛錬だと?」「うそ!」


 メンバーから声が飛んでくる。そんな中ロンが


「ヴェルスで聞いていた話通りってことか。あいつらに冒険者のランクは通用しないってことだな。実質ランクAだって言ってたしな」


「その通り。ギルドによると無理に潜らずに同じフロアで鍛錬を続けているらしい」


「俺達で13層、単体とはいえランクSが相手。できると思うか?」


 ケビンの言葉に首を振るリチャード。


「絶対倒せるかと聞かれたら無理だろう。敵のジョブが前衛系ならなんとか対処できるが狩人や魔導士がくるとかなりきつい。運任せになるだろうな」


「街道でランクAを4体倒した時は疲れてて口も聞けないほどだったけど、それでもあの戦闘は見てたわよ。凄かったの一言ね。見ながらああこの2人組はランクAだ。ランクAってこんなに強いんだって思ってたもの」


「リリィの言う通りだ。あの時に奴らをランクBだと思ったのはこの中にはいなかっただろう。あの時点で俺達よりも相当強かった。そして今はランクSを相手に鍛錬をしているという。また強くなってるのは間違い無いぞ」


「まだこの街にいるんなら一度話を聞いてみたいな。どんな鍛錬をしているのかとかさ。俺達に参考になるかもしれないし」


 ケビンが言うとそうだなというメンバー。彼らは強い奴は強いと認めることができる冒険者だった。そして強い奴から何かを得ようとする向学心も持ち合わせていた。



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