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ノワール・ルージュ  作者: 花屋敷
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第19話


 リチャードらはサムと別れるとまずはヴェルスに来た時に泊まるいつもの常宿に向かい部屋を確保する。そうしてその日はゆっくりと休んだ翌日メンバー5人でヴェルスの冒険者ギルドに顔を出した。


 今回の護衛クエストは往復で受けているのでこの街で護衛クエストの達成報告をする必要はない。そう言う意味では特にギルドに顔を出さなくても良い立場ではあるがそれでも顔を出したのはギルドにいるこの街の知り合いの冒険者仲間に会うためだった。


 5人がギルドに入った時間はちょうど朝の混雑が落ち着きつつある時間でクエスト用紙を手に持った冒険者達が酒場のテーブルに座っては打ち合わせをしていた。


 どこの街でも同じだなと思いながらリチャードが酒場を見渡し、そこに探していた冒険者の姿を見つけると酒場の中を移動して彼らのテーブルに近づいていく。


 シモンズはパーティメンバーと今日の予定について打ち合わせをしていたが近づいてくる気配に気づいて顔を上げると片手を上げ、


「よお、久しぶり。またこっちに来たのか」


 近づいてくるリチャードらに声をかける。他のメンバーも久しぶりと挨拶を返す。


「隣に座っていいかな?」


「どうぞ。今日はすぐには出かける予定はないんだよ」


 シモンズの言葉にリチャードら5人が隣にすわるとお互いの近況報告から会話が始まった。ラウンロイドとヴェルスの街道の様子やラウンロイドの様子、そしてヴェルスの様子などを全員で報告した後でリチャードが切り出した。


「ところでこのヴェルス所属の冒険者で2人組のデイブとダンという赤魔道士と暗黒剣士のペアについて何か知ってるかい?」


「そいつらのランクは?」


「ランクBだと言っていた」


 シモンズがパーティメンバーを見て俺は知らないんだが誰か知ってるか?と聞くと1人が


「ここで何度か見ているしある程度は聞いている」


 そう言ったのはシモンズのパーティで精霊士をしているジョンだ。リチャードらが顔をジョンに向ける。


「2人は赤いローブと黒いローブを着ている。ジョブは確かに赤魔道士と暗黒剣士だ。両手に片手剣を持った二刀流の2人組だろう?」


 その通りだと言うと


「2人とも珍しい中衛ジョブだ。普通のパーティでじゃあ席がない。そういう事だからデイブがダンを誘って2人でパーティを組んでるのさ。まだランクBになって日が浅いはずだぞ」


 なるほどと相槌を入れるリチャード。


「いつも2人で行動している。そしてあまりダンジョンには潜らずにフィールドでクエストを消化しながら生計を立てているって話だ」


 ジョンが答えると酒場の違う場所から


「そいつらがどうしたんだ?」


 と声が飛んできた。


「ミゲルさん」


 シモンズが声のした方に顔を向けて言う。


「聞くともなく聞こえてきたんでな」


 ミゲルはそう言うと同じテーブルの仲間に声をかけてからリチャードらが座っているテーブルに近づいてきた。シモンズがミゲルをランクAのパーティのリーダーだと紹介する。お互いの挨拶が終わると、


「お前さんたちはダンとデイブに逢ったのかい?」


 ええ。そう言ってリチャードが街道の途中の出来事をミゲルやシモンズに話をする。話が終わると、


「ランクA4体を2人で瞬殺だと?」


 シモンズのパーティのトニーという戦士が声を出す。


「ああ。俺達はランクA4体を相手にして結構苦戦してた時に現れてな。あっという間に2人で2体ずつランクAを倒しちまったんだよ」


 リチャードが言うと横からロンが


「俺達5人でそれまでランクAの4体の魔獣の体力を削っていたとは言えおそらく4体の内2体はほとんど無傷、残りの2体も半分近く体力を削っていたくらいだろう。そのタイミングでやってきたと思ったら本当にあっという間に4体を倒したんだよ」


「2人とも片手剣二刀流だっただろう?」


 ミゲルの質問に頷くリチャード達。


「ミゲルさんは彼らを知ってるのかい?」


 シモンズが言うと知っているという。そうしてそこに座っているランクBのパーティの連中を見回して


「あいつらは2人組だ。ギルドのランクを上げるスピードは普通のパーティよりも遅い。これはわかるだろう?護衛クエストを受けられないからだ。ダンジョンにしても下層に潜っていくのに時間がかかる」


 ミゲルの言葉に皆が頷く。


「なるほど。ギルドポイントシステムのせいでランクと実力がマッチしていなってことか」


 誰かが言った言葉に頷くミゲル


「今のギルドのポイント制度は5名のパーティで活動をする事が前提になってるからな。ダンとデイブはその点では不利になってる。ただし奴らは自分たちが不利だとはちっとも思ってないぞ。ギルドのランクよりも自分たちの力を付ける事に軸足を置いているからな」


 そう言ってシモンズにヴェルス近郊にあるダンジョンの1つの場所を言って知ってるかと聞く。彼らが知っていると言うと


「あのダンジョンをダンとデイブはランクCの時に2人でクリアしてる。最下層のボスは一応ランクAだ。それを倒したと聞いて以来俺達のパーティの中ではあいつら2人は既にランクAクラスという見方をしている」


 ミゲルという男の説明を聞いていてリチャードも他のメンバーも納得する。あの2人に普通の冒険者のランクは適用できない。


「それで納得したよ。それにしてもすごい奴らがいたもんだ」


 リチャードが感心して言う。


「その通りだ。知ってる奴はまだ少ないがダンとデイブはこれから伸びて頭角を現してくるだろう。奴らを知ってる連中は皆、もちろん俺達もだがそう思っている」


 そう言ってミゲルは自分の席に戻っていった。


「それで今回はどれくらいいるんだい?」


 シモンズが話題を変えてリチャードに聞いてきた。


「今回は往復の護衛クエストを受けててここでは2週間滞在するらしい。だから俺達も2週間ここで鍛錬するつもりだ」


 その話を聞いたシモンズらはじゃあまた夜にでも酒を飲もうやと言って彼らとの話が終わった。


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― 新着の感想 ―
[一言] >そう言ったのはシモンズのパーティで精霊士をしているジョンだ。 たしかミゲルのパーティの方にも精霊士のジョンが居ませんでしたっけ?
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