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ノワール・ルージュ  作者: 花屋敷
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第13話

 ダンとデイブはその後も地上でクエストをこなして金策をしつつギルドポイントを貯め、ダンジョンで格上と対戦をしてスキルを上げてランクBに昇格した。


 同じ頃にランクCになった周囲の冒険者よりはBに昇格するのが遅くなったらそれは全く気にしていなかった。なんと言っても2人組だから遅いのは当然だ。


 フィールドでクエストをこなして金策をしていたこともありランクBに昇格した時は2人ともそれなりのお金を持っていた。


 そうして今2人はヴェルスの市内にある雑貨屋に向かっている。ギルドに聞くと今から行く雑貨屋なら魔法袋が売っているだろう、ただし売り切れているかもしれないと。


「売っているといいな」


「最悪1つだけでもあればな。あると外に出る時やダンジョンで楽になるからな」


 そんな話をしながらヴェルスの大通りから細い道に入っていくと目的の店はすぐに見つかった。


『雑貨屋黒猫』


 と木の看板が出ていた。


 ここだとデイブが先に店の扉を開けると扉に付いている鈴が綺麗な音色を立てて、奥から1人の女性が顔を出した。


「いらっしゃい」


 この店の主人だろう。金髪の長い髪を後ろで一つにまとめて背中に垂らせている。30代の後半くらいか。聡明そうな顔をしている女性だ。


「こんにちは」

  

 デイブに続いてダンも店に入ると2人で挨拶をし、


「ここなら魔法袋が売っているかもしれないってギルドで聞いてやってきたんだ」


 女主人は店に入ってきた2人の格好を見て


「2人とも冒険者ね、そっちが赤魔道士でこっちは暗黒剣士かな?」


 そうだと答えると


「2人でパーティを組んでるの?」


「そうなんだ。お互いに中衛ジョブだからさ。普通のパーティじゃ中々席がなくてね」


 店員とのやりとりはデイブがしていてダンはデイブと女店主のやりとりを聞きながら店の中の品物を見るともなく見ていた。


「なるほどね。私はこの店をやってるミン。冒険者ギルドには贔屓にしてもらってるんだよ」


 そう言ってから魔法袋だよねと言って奥に引っ込むとすぐに魔法袋を2つ持ってきた。

これよとテーブルの上に2つ置く。


「売ってたんだ」


 2つの魔法袋を見て2人の表情が明るくなる。


「ちょうどいいタイミングだったわよ。つい最近入荷したところだったから」


「そりゃよかった」


「1つ金貨50枚だけど大丈夫?」


「貯めてきたからね」


 そう言ってそれぞれが50枚の金貨を渡して魔法袋を手に入れた。ミンは金貨100枚を受け取り、


「あると便利だよね。ダンジョンでも街の外でもこれがあると荷物がかなり減るからね」


「そうそう。これを買うまで金策をして遠出を我慢していたんだよ」


 デイブの言葉になるほどと頷くミン。聞くともうずっとここで雑貨屋を営んでいるらしい。


「しっかり準備をしてから遠出するつもりだったの? それはいい心がけよ。最近はとにかく外に出たりダンジョンに潜ったりする冒険者ばかり。いつか取り返しのつかないことになるってのがわからないのかしら。あなた達みたいにしっかりと足元を固めてから次の動きをする冒険者に会うのは久しぶりよ」


 冒険者をよく知る女主人から褒められてまんざらでもない2人。2人は魔法袋以外にテントなど野営用具も購入して店を出た。


「いつでもいらっしゃい」


 そう声を掛けられながら店を出た2人はその足で今度はワッツの武器屋に顔を出した。


「お前さん達か」


 奥から顔を出したワッツは相変わらずの無愛想な表情だ。さっきの雑貨屋のミンが愛想がよかったので余計に無愛想さが際立っている。もっとも当人は全く気にしていない様で2人に近づくと、


「ここに来たってことはランクBに上がったのか?」


 と聞いてきた。2人は頷き、デイブが、


「ようやくランクが上がってさっきミンの雑貨屋で魔法袋を2つ買ってきたところ」


「なるほど。金策もしっかりやってたってことか。いい心がけだ」


 ワッツはそう言ってから剣だろうと聞いてきた。そして奥にひっこんだワッツは4本の剣を持って出てきた。


 テーブルの上に剣を4本置くワッツ。この中から選べということかなとダンが置かれた剣を見ていると、


「しっかり鍛錬を続けているな。そんなお前らにアドバイスをやろう」


 そう言って顔を上げた2人を見て


「二刀流をやってみる気はあるか?」


「「二刀流?」」


「そうだ。片手剣の二刀流だ。お前らは2人組だ。盾ジョブがいない。二刀流なら左手に持った剣で相手の攻撃を止めつつ右手の剣で攻撃ができる。もちろん両方に持った剣を使って相手を攻撃することもできる。そしてだ」


 そう言ってワッツはテーブルの上に置いてある4本の剣の内青みがかった色をしている2本の剣を手に持つと


「これはミスリルで出来ている。剣としてももちろん優秀だがそれ以上に魔力の伝導に優れている。杖を持たないお前らには武器としても使えるし杖代わりにもなるぞ」


「つまり左手にこのミスリルの剣を持って突き出して魔法を詠唱すればいいってことか?」


 デイブの言葉に頷くワッツ。何も持っていない片手を突き出すよりも魔法の威力が上がると言う。


「だけど俺達二刀流なんてやったことないんだけど」


 剣とワッツを交互に見ながらダンが言うと


「お前さん達が良ければ俺が二刀流を教えてやろう。遠出をしたりダンジョンに潜るのは遅くなるがそれでも良ければだけどな。二刀流は簡単にはモノにできないぞ。会得するまで時間がかかる。ただモノに出来た時は大きな戦力となる」


 元ランクAの戦士の冒険者だったワッツが二刀流を教えてくれるという。ダンもデイブもその話を断る理由もないので二つ返事でOKする。ここで会得に時間がかかっても将来的に強くなるのであればそちらの方がずっと良い話だ。ワッツはわかったと言い


「その前にこのテーブルにある剣を売ってやる、金が足りないなら今持っている剣を下取りしてやる」


 そう言ってダンとデイブは手持ちの金貨と今まで使っていた片手剣を渡して代わりに2本の剣を手にれた。本当はもっと高いんだろうがワッツはこれでいいと言ってくれたのだ。そして


「明日の朝この店に来い」


 とだけ言って奥に引っ込んでいった。

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