第11話
地上に戻るとそこにいたギルド職員にクリアしたと話をする。
「ランクCの2人でクリアしたのか。大したもんだ」
そう言われて満更でもない2人はそのままヴェルスの街に戻ってギルドに顔を出した。受付嬢にカードを見せるとそれをカウンターの内側にある石板にかざし、
「確かにお二人ともダンジョンクリアしてますね。おめでとうございます。それでボスを倒した時に出たアイテムの鑑定をしますか?」
お願いすると言ってデイブが腕輪と指輪を渡すと少しお待ちくださいと奥に消えていった受付嬢。2人は鑑定が住むまでギルドの酒場に移動するとジュースを注文して結果を待つ。
しばらくして呼ばれてカウンターに行くとさっきの受付嬢が指輪と腕輪を持っていて
「この指輪は魔力が上がる指輪ですね。そしてこちらが腕力が上がる腕輪です。ギルドで買取もできますが? 買取ですと腕輪が金貨4枚、指輪が金貨5枚になります。どうされますか?」
「「自分で使う」」
腕輪と指輪をもらった2人は再びギルドの酒場に移動する。
「腕輪はダンだな。指輪は俺が使うのがいいだろう」
「そうだな」
ダンもそう考えていたので2人でそれぞれ装備を指と腕にはめる。
そうして今日のボス戦を振り返って反省会をする2人。あそこでああした方がよかったかなとかあの魔法はよかったなど良い点も悪い点も言い合ってボス戦を振り返っていた。
「2人でダンジョンをクリアしたんだって?」
テーブルで2人で話をしていると気が付かないうちに1人の冒険者がダンとデイブのテーブルに近づいてきていた。その声に顔をあげると話しかけてきたのこのヴェルス所属のランクAの冒険者のミゲルだ。背中に大きな大剣を背負っている戦士だ。
「さっきダンジョンをクリアしてきたところだよ」
デイブは顔見知りらしく気軽に話しかけている。ミゲルはダンの方を向くと、
「君が暗黒剣士のダンか。俺はミゲル。ランクAの戦士だ」
挨拶をした後で
「なんで俺のことを知っているんだい?」
「1つはデイブから聞いていたからさ。なかなか優秀なやつがいるってね。そしてもう1つはそのジョブだよ。暗黒剣士をやってる奴はこの大陸の中でもほとんどいない。そのほとんどいない奴の1人がこの街にいるって言うんで気になってたんだよ」
「なるほど」
受付嬢も暗黒剣士になる人は少ないと言っていたがまさかほとんどいない程に少ないとはダンも思っていなかった。ただ言われてみればこのヴェルスの街で自分以外の暗黒剣士には会ったことがなかった。
デイブがミゲルにクリアしたダンジョンの話をしているのを聞いているとこちらのテーブルに他の冒険者もやってきた。ミゲルと同じパーティに所属しているメンバーだという。
盾、戦士、狩人、僧侶、精霊士の5人メンバーで皆ランクAだ。デイブによると彼らに色々とアドバイスをもらってワッツの武器屋やレミーの防具屋を紹介してもらったらしい。ダンとデイブが座っているテーブルの隣に座るとテーブルを寄せて7人で酒を飲みながら話をする。彼らのパーティにいる女性2人は果実汁だ。
「お前さん達がクリアしたダンジョンはランクCも入れるっちゃあ入れるがランクCのクリア前提にはなってなかったはずだぞ」
ミゲルが言うと隣に座っていたナイトのスミスもそうだと言って
「あそこは確かボスがランクAだったはずだ。となるとランクBの5名のパーティで攻略することが前提になってるはずだ」
そうなのかと黙って聞いているダン。デイブは知っていたのか
「俺達はあのダンジョンをクリアするのに相当時間をかけた。各層でしっかりとスキルをあげて間違いなくフロアが攻略できると自信がついてやっとフロアを攻略して下に降りていったんだ。だから9層のランクBの複数体のフロアでもしっかりと時間をかけて敵に慣れていったんだ。だからボスを前にしてもそれほど恐怖は感じなかったよ」
確かに恐怖は感じなかったとダンも言うとデイブが再び口を開いた。
「あとはジョブの特性だろう。ダンは暗黒剣士で与えたダメージの一部を自分の体力に還元できる。ランクCだから還元できる体力は大したことないかもしれないがそれでも2人で戦闘している時には助かるよ。俺達は2人だし2人とも中衛だし短期決戦でケリをつけようと思わずにゆっくりとボスの体力を削っていったんだけどそれがよかったのかもしれない」
「与えたダメージの一部を自分の体力に還元できるって話は聞いてるけど具体的にはどれくらい戻ってきてる感じなの?」
パーティの僧侶をしているアンナが聞いてくる。
「どうだろう。薬草1回分も無いと思うよ。まだスキルが低いし。でも切った時に自分の体力が少し戻ってくる感覚はあるんだ」
「それでも長期戦になると積み重ねだから効いてくるわね」
「その通りよ」
同意したのは狩人のオリビアだ。
「暗黒剣士ってあまりいないからジョブのこともよくわかってないのよね」
と続けて言う。
「戦闘はどう言う風にしてたんだい?デイブが魔法でダンが剣なのかな?」
デイブは聞いてきたミゲルに顔を向けると、
「基本は今ミゲルが言ったスタイルなんだけどお互いに魔法と剣の両方が使えるから時々俺が剣でダンが魔法とかしてた。魔力にも限りがあるからね」
デイブがそうやって説明をすると今まで黙ってやりとりを聞いていた精霊士のジョンが
「赤魔道士と暗黒剣士の組み合わせってのはお前さん達が初めてだろう。でも今の話を聞いていると非常に理にかなった攻め方をしているのがわかるよ。後衛寄りの中衛の赤魔道士、そして前衛寄りの中衛の暗黒剣士。お前さんたちいい組み合わせだよ」
「ジョンの言う通りだ。短期決戦には向いてないかもしれないが聞いているとお互いにジョブの特性を理解してそれをうまく利用している様だ」
ダンもデイブもランクAに褒められて悪い気はしない。というか自分たちのやり方がランクAのメンバーにも理解されて間違っていなかったんだと安心する。