名士との謁見
何か大きな勘違いをされているようです。
文章校正しました(2020/5/17)
威厳のある紳士が私たちを指差して衛兵が動こうとしたとき、アルが紳士に向かって大声で何かを叫んだ!
『~~!~!?』
紳士が驚いた様子でこちらを見てあるに何かを確認している。
『~!?~~~?』
そして慌てた様子で衛兵に向かって命令を下した。
衛兵は急いで馬に乗り、私たちが来た道へと走り去っていった。
桔梗が状況を要約して私に説明する。
「どうやら私たちがアルを誘拐した賊で、身代金を要求するのではないかと誤解されていたようです。アルが釈明してくれたようで助かりました。」
そして、先ほどのアルとのやり取りについて教えてくれた。
帰郷曰く、アルに対してこう説明したらしい。
「遠い国出身の者なのですが、旅の途中で道に迷った挙句にこの国に迷い込みました。」
―確かに言葉が通じない私達ならばそういうこともあり得ると信じてもらえるかもしれない。
私はいつもながら見事な手腕だと思いながらも、少し焦った。
―私って異なる世界にきてからあまり良いところを見せられていないのでは!?
桔梗はそんな私の心を察したのか、私に笑顔を向けた。
「凱さまは肝心なところで堂々と前に進んでくださればよいのです。」
衛兵が縛られた賊を馬の背に乗せて戻ってきた。
紳士がこちらに向き直り、深く礼をして衛兵に指示する。
門の前にいた衛兵が、私たちを手招きして街の中に入れてくれた。
私は活気のある様子の街の姿を見て、胸がすく思いで桔梗に話しかけた。
「山で隠居していたせいか、こういった光景一つでも感慨深くなるものだな。」
桔梗は嬉しそうに笑顔を返す。
「ええ凱さま、そうですね。」
アルがここが自分の家だと案内してくれた屋敷はとても大きかった。
―思ったよりも彼は大物の息子だったらしい。
*
屋敷の応接間の通された私達は名士から色々と聞かれたが、桔梗が身振り手振りを交えながら受け答えをしていた。
そして、名士がとある質問をした瞬間に、桔梗の顔がアルに何かを聞かれた時と同様に真っ赤になった。
アルが私のほうを見ながら意味深な笑顔で、何かを伝えた瞬間にさらに耳まで赤くして下を向いてしまった。
―桔梗ははアルに何を伝えたのだろうか?
名士は納得した顔でアルに何かを伝えた後に、私達を下がらせた。
私は桔梗に何か起こったのか確認しようとした。
「どうしたんだ桔梗…顔が真っ赤だぞ?。」
普段は有能で冷静な桔梗が半ばパニックになりながら叫んだ。
「…後で説明させてください!!。」
そして、耳まで真っ赤になりながら下を向いてしまった。
アルが微笑ましげな顔で見ているので、
―何か嫌な予感がする…
私はその何かに恐ろしいものを感じて身震いした。