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嫌疑を晴らすために必要なこと

私と桔梗は目を合わせ…そしてアケロスの顔を見た後にカインに答えた。

「私達はイースタンの嫌疑を晴らす手伝いがしたいです。」



カインが安堵した顔をして私達に深く礼をした。

「ありがとう…私に出来ることなら()()()させてほしい、それがせめてもの感謝の気持ちだ。」



私はカインとアルベルトへこの状況を打破するための方策を伝えることにした。


 *


―まず、初めにどんな作業よりも早くマキビシを撤去しなければならない。


我々は反乱の嫌疑をかけられており、マキビシが残っていては討伐軍の進軍を遅らせるために何か謀をしているのではと判断される。

そうなっては、こちらの言い分すら聞いてもらえなくなる可能性すらありうる。

だから、一刻も早くマキビシを撤去しなければならないのだ。


そのためにも、まずはその件についての確認を行うことにした。

「討伐軍はどれくらいでここに到着しそうですか?」


「捕らえた商人の話だと、あと2週間程度には到着するそうだ。」


「マキビシの撤去はあとどれくらいかかりそうですか?」


「街道の復帰を目指していたため馬が通れるようには直ぐにしていた…が、あと3日はかかる。」



―私はある可能性を考えて、このままではまずいと判断した。


「そうですか…他の商人たちが往来する前に片付けたいですね。二人か三人ぐらいの衛兵が指示を出す形で、街の人総出で処理しましょう。」


カインが不思議そうな顔で私を見た。

「衛兵ではだめなのか?」


私は首を振る。

「嫌疑がかかっているときに衛兵を総動員して街道で何かをしていたら、それこそ罠でも仕掛けているのかと思われてしまいます。」



―少し考えた後、私はこれについてカインに献策することにした。


「ちょうど…大金を持った商人がこちらに来てくれたものですから、彼が襲撃されたことにしましょう。」


そうすることで、万が一その場面を他の商人に見られた場合にはこう説明して誤魔化すのだ。

『賊が商人を襲って逃げてしまった。残していった金属の片の中に盗まれた品物が含まれているかもしれないから皆で集めているのだ』と。



カインが腑に落ちた顔で了承する。

「分かった…すぐに手配する。」



カインはすぐに執事を呼び、衛兵を呼ぶ。


そして手早く指示を与えて衛兵を下がらせた。


 *


―さて次の問題だが、こちらが襲われた証拠をどう示すか。


まあ、これに関してはそんなに問題はないものと思われる。

「おそらく王都に送った使者が討伐軍と出会うことになると思いますので、イースタンの街では討伐軍を盛大に歓迎しましょう。」


「そうだな、援軍として来てくれたということで盛大に歓迎すればあちらの心象も多少は良くなるかもしれぬ。」


「カインさん、討伐軍には尋問官も従軍しているとおもいますか?」


「そうだな…今回は従軍している可能性が高い。イースタンの街は今では国の収益にもだいぶん貢献している、そのため私の本意を確かめたいという意向はあると考えられる。」



私は首元の金属札を手に取りカインに確認する。

「なるほど、尋問官はこれに似たようなものは付けていますか?」


「尋問官は仕事上身に着けているから問題ないと思うが、騎士は付けていないかもしれないな。」


「わかりました、討伐軍の隊長と副隊長の分だけでも良いので用意して貰えるとありがたいです。」


カインの代わりにアケロスが力強く答える。

「分かった、それは俺が何とかしよう。」



―ここまで来ればこの問題についてはあと少しだ。


私はさらに蛮族の様子についても聞くことにした。

「鉱山で働いている賊の様子はどうですか?」


「そうだな、賊たちは鉱山で働かせるという方策を示したアルベルトを信用しているな。」


アルベルトが照れくさそうに笑っている。


私はそれを僥倖として、カインとアルベルトに献策した。

「それでは折角ですし、鉱山を視察してもらったらどうでしょうか。尋問官はこちらで対応に追われると思われるので、せめて騎士の方には蛮族に直接話を聞いて貰うほうが良いと思います。」


納得した顔のカインはアルベルトの方を見た。

そして一瞬成長したわが子を喜ぶ顔を見せ、すぐに顔を引き締めて告げる。

「では、アルベルトにそちらのほうは全て任せる。」



それを受けたアルベルトが笑顔で深く頷いた。

彼の人となりであれば、騎士たちが視察に来るまでに蛮族との信頼関係も築けているだろうし、討伐隊の隊長と副隊長が蛮族へ聴取するときの対応もそつなくこなせるはずだ。



―さて、一番の問題はどうやって今回の防衛戦が狂言でなかったと信じてもらうことか。


先の防衛線で私達は完勝しすぎてしまった。

防衛線とはいえ4倍もの敵にこちらの死者がゼロというのは余りに馬鹿げた戦果だ。飛蝙蝠のことを話せば確かに信用されるが、前の世界で天下統一を速めた兵器をイースタンで開発したなんてことになれば、それこそ世界の脅威とみなされてイースタンが潰されかねない…。


―ここが一番の難しいところだ、どうする?


私は無自覚に刀の鞘を撫でていた。

刀が私に語り掛けてくる気がする……


私はその意思を読み解き、それに応えた。

「-っ、わかったよ。そうだな…そうするべきだ。」



そして傍らにいる桔梗の顔を見つめる。

桔梗は覚悟を決めた私の顔を見た瞬間、何をするかを察して頷いた。



そんな私達をアケロスが怪訝な顔をして見ている。



私は意を決してカインたちに告げた。

「最後の問題があるが、それは鉱山から騎士が返ってきた後に解決しようと思う。」



―さて、賽は投げられた。


後は全員が総力を挙げてこの陰謀と戦うだけだ。

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魔王軍の品質管理人

平和な世界で魔王軍と人間の共生のために奮闘するような形で書いていきたいと思っています。
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