アルとセリスの結婚式
この話で第一章は終了となります。
文章校正終了しました(2020/5/19)
戦が終わって数日経った。
今回の騒動については早馬で王都に連絡がいくらしい。
捕縛した賊達はそれぞれの怪我が治り次第、刑として、ある程度の期間鉱山での労働をすることになったそうだ。
ただ、詐欺みたいな契約内容から解放された感謝と、少額ながらも賃金と食事が与えられるという温情に泣いて喜ぶものも居たらしい。
もちろんイースタンとしても労働力の確保ができるため、お互いに益があるものと思われる。
*
指揮官とブルについては、恐らく王都からくる尋問官に取り調べを受けて、しかるべき刑を受けるだろう。
その時に色々と確認したいことについてブルが黙秘するかは…
桔梗が来た時のブルの顔色を見れば一目瞭然の結果だと分かる。
桔梗が戦いの後、私にブルのことを報告した。
『これほど簡単に喋ってくれる人はいませんでしたね~。』
そして怖い笑顔で私へ不穏なジェスチャーをしながら彼女の希望を語る。
『セリスの気持ちを勘案すればもっと頑張ってくれれば良かったのですが…』
アケロスがニヤニヤしながら同意した。
『おう、またやってやれ!』
だが、彼らのそばでブルに対する何かを見てしまったカインが顔色を変え、狼狽していた。
*
アケロスを弓で射た市民は、ブルが失敗したときの保険として、サウスの街の商業ギルドが手を裏で回していたらしい。
取り調べに来た桔梗を見た瞬間に、絶叫と共に気絶したブルを見てすぐに白状したそうだ。
桔梗が彼を見ながらとても残念そうな顔をしてこう言ったらしい。
『残念です…私、お父さんのためにも3本ぐらいは折れるかと思って少し期待してました。』
そして、手で何かを握りつぶすようなしぐさをしながら、満面の笑みを浮かべる彼女を見て、立ち会った衛兵たちは色を無くしたそうだ。
イースタンの防衛線後に衛兵たちのひそかな憧れとなった桔梗が、この一件から”イースタンの恐怖”と呼ばれるようになったのは、ここだけの話だ。
*
後日、衛兵から報告を受けたアルベルトがセリスと一緒に燕月亭に来た際に、こっそり耳打ちをした。
『ガイ…キキョウちゃんだけは怒らせちゃいけないよ。』
それを聞いた私は、アルベルトにこそっと耳打ちした。
『大丈夫だ…もう何回怒らせたかわからない。』
アルベルトはとんでもないものを見るように私の顔を見つめていた。
そんな私達をセリスと桔梗が首をかしげて見つめていた。
*
それから一週間後、アルベルトとセリスが結婚式を挙げることになった。
本来はもう少し先の予定だったが、王都の尋問官が来てからでは様々な実務が生じるため、尋問官が来る前に挙げてしまおうということになった。
アケロスがセリスの花嫁姿を見て号泣している。
『おお…セリス…アルベルトが気に入らなかったらすぐに離婚していいんだかな。俺達が恋しくなったらいつ帰ってきてもいいんだぞ! それこそ明日でも、いや明日がいいか。』
アルベルトが苦笑する中、セリスはアケロスの手をやさしく握って涙を流しながら笑顔で返した。
『お父さん、今まで育ててくれてありがとう。』
アケロスはその言葉に感動して男泣きした。
クラリスが二人を抱きしめる。
『アル君…立派になったわね、セリスのことよろしくね。』
そしてセリスの両肩に手を乗せて、じっと見つめながら諭す。
『セリス、アル君のことしっかり支えるのよ。男がしっかりとやってるように見えるのは、見えない所でで女が芯となって支えているからなの。』
セリスとアルベルトを優しく放したクラリスは、男泣きをしているアケロスの元へ行き、その背中をさすって慰めた。
セリスとアルベルトは深く頷き、広場の壇上に向かっていく。
そして壇上でアルベルトとセリスが愛を誓った後、皆に手を振ろうとした瞬間…
―空から白銀の輝きが煌めいた。
二人の上を旋回する白銀の蝙蝠から、七色の花びらが降り注ぐ。
日に照らされて輝きながら降り注ぐ花吹雪は、これから新しい道を共に歩むアルベルトとセリスの前途が幸せに溢れていることを示すようだった。
読者の皆様へ
初めての作品でしたが、第一章を描き切ることができました。
書いていくのがとても楽しく、筆がどんどん進んでいきました。
また、読んでくださったり、
ブックマークや評価を頂けたこと本当に感謝します。
モチベーションが途切れずに一週間で一気に書ききれたのは、
皆様のおかげだと思っております。
この先については、初めの二話ぐらいは構想が固まっているのですが、
どの地方での話にするかで悩んでいるところです。
それでも、しっかりと第二章初めて行こうと思いますので、
引き続きよろしくお願い致します。
感想などがありましたら是非書いていただけるとありがたいです。
最後になりますが、
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とても嬉しいです。