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操り人形

文章校正しました。(2020/5/19)

『我こそはイースタンがアケロスの息子ガイ! 黒狼のジャン、もう勝敗はついている、降伏をする意志はあるか?』


ジャンが少年を見て嘲笑する。

『坊や、出てくるところが違うんじゃないか?』



―その瞬間、少年から凄まじい威圧感が放たれ、それと共にに怒号が響き渡った。


『黙れ下郎ども、貴様らの生殺与奪はこの私が握っている!』


周囲の空気が震え、指揮官と賊は思わず後ずさりする。


 *


私の怒号を受け、指揮官と賊たちが怯えた様子でジャンの顔を伺う。


ジャンが人形を掲げながら負けずに吠えた。

『下がるんじゃねえ! わかってんだろうな。』


――私はジャンの様子を見て何か違和感を感じた。


私は刀を戟に変え、頭上で猛るように振り回す。


そして賊どもへ戟の先端を向け挑発した。

『どうした?そのように腰が引けては、私一人すら殺せんぞ!』


ジャンの人形を一瞥した賊達が意を決したように私に切りかかってくる。


騎馬に対して無策で突っ込んでくる賊の腕を戟で突き刺し、側面に寄って来た賊を石突で頬を殴りつける。


私は彼らの動きを見て違和感を感じた。


-おかしい?なぜこんな無防備に?

彼らのこの動きは、むしろ傷つけられることを望んでもいるような行動だ。


門の上からアケロスの叫びが聞こえた。

『ガイ! こいつらその人形に魂を繋がれていやがる。』


私は戟の石突でさらに寄ってくる賊の肩を砕く。

『アケロス!本当なのかそれは?』


アケロスが言い淀む。

『ああ…しかも』


――本当に嫌な、嫌な予感がしてくる。


私は思わずアケロスのほうを見つめて問いかける。

『しかも…なんだ? なんなんだ、アケロス!』



ジャンが狂ったように笑う。

『へぇ…よく解ったな? ああ、ブルが吐いたか。あいつは本当に駄目な奴だな。捕まってまだちょっとしか経ってないのに、自分の命綱をベラベラ話すとか、ありえねえにもほどがある。』


そして賊どものほうを睨みつけながら語り始めた。

『まあいい、そいつらの命は戦いが終わるまでは俺が握っている。()()というってやつの理力だ。金借りたやつは、返すまで働くっていう理ってやつよ。今回は、いい金払ったんだから契約主が満足するまでは逃げられねえ。 ()()()()()()()()息が止まるような苦しみをもたらす契約、それをこいつらはしてるんだぜ。』


そして、指揮官を汚いものを見る目で睨み付け、吐き出すように言った。

『まあ…指揮官(雇われ)はいいよな? こいつらと違って全財産没収ってだけだ。』



私の胸が氷のように冷えていく


――飛蝙蝠で兵たちを追い立てた時に四散せずに前に駆け出したのは、恐慌状態だっただけでなくこういった事情があったのか。


ジャンが私を心底馬鹿にしたようにに笑った。

『ほぅ…あいつらに同情しているのか?綺麗ごと言ってるんじゃねえよ。そもそも契約ってやつは強制されねえ限り自分で決めるもんだ。言葉がわからねえから適当にやるやつが悪い!』


続けて、私を心底憐れむような顔で見ながら嘲笑する。

『てめえみたいな如何にもきれいな道を歩いて来ましたみたいな、そんなガキには解らねえだろうがな。時には道を外れて世の理を外してでも、生きなければならねえ奴も一杯いるんだよ。』



そして…地獄の底から響き渡るような声で叫んだ。

『てめえらあぁぁぁ! いい加減にしろ! 金のために自分の魂まで売っておきながら、今更死ぬのが怖えだあ? おめえらはみんな屑だ…だがな屑だからこそ屑の矜持があるだろうが。俺が魂握ってるだけでもありがてぇと思え、お前らに最後の華を持たせてやるんだからな。馬鹿なお前らは死ぬまで奴隷の予定だったんだぞ! あの強欲の商人(ゴミ)がイースタンで欲が満たされるわけねえだろ? 契約した時点で、おめえらはみんな死ぬまであいつの奴隷って寸法さ。』



アケロスが叫ぶ。

『この糞野郎が! 結局死ぬんじゃ意味がねえよ。その人形から魂開放してやれば済む話じゃねえか。屑がどれだけ格好つけようが屑にしかならねえ、そういうやつは一変死んで、無から鍛造しなおしてもらえ!』


私は驚いて、アケロスに振り替える。

『助けられるのか?』



アケロスは深く頷いた。

『あの人形の心臓を撃ち抜けば良い…が、やれるか?』



私は頷くとジャンに向き合って宣言した。

『黒狼のジャン、一騎打ちを所望する。私に勝てば、その時点でイースタンを明け渡す。』



ジャンが一瞬目を見開く、そして心底呆れた顔でこちらを見て嘲る。

『面白くねえ…面白くねえ冗談だ…小僧。そもそもそんな約束を住民や領主が納得するわけねえだろ?』



門の上から威厳のある声が聞こえた。

『私はイースタンの領主カイン! 私がそれを保証する。』



ジャンが舌を巻く。

『マジかよ…あいつは確かに領主だ。本当にこのガキにすべてを…頭がおかしくなったんじゃないのか?』



私はジャンに再度問いかける。

『どうした? 小僧とやら一人に臆したかジャン。黒狼の二つ名は騙りであったか。』



ジャンが意を決したように叫んだ。

『てめえら! どいていやがれ! 小僧…そして領主達、後悔しても遅いからな…』


そして馬から降り、蛮刀にを力を込める。


 *


蛮刀の色が赤黒い血の色に染まっていく。

ジャンの入れ墨が首筋の下、そして腕に回る…

そして一気に鎧がはじけ、ジャンは黒い人狼となった。


人狼となったジャンが人形を口の中に放り込み、不敵に笑う。

『これが欲しいなら俺を倒すことだ。』



そして…私のほうを向いて吼えた。

『俺のもう一つの二つ名は知っているか? …千人殺しのジャンだ!』

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