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強欲者たちの誤算

文章校正しました。(2020/4/18)

イースタン付近の街道沿いに布陣したジャンは思わず目を見張って言った。

『おいブル! あれはなんだ!?』


イースタン付近の丘から飛び去った銀色の蝙蝠、あんな生物がこの世にいるのだろうか?


ブルは脂汗を流しながら狼狽えながら答える。

『銀色の鳥…いや蝙蝠でしょうか? 随分と大きいようですね。』


飛んで行った蝙蝠を見つめてジャンは呟いた。

『戦場のほうに飛んでいったか…。』


ジャンは舌打ちしてブルに蛮族の兵たちのことを確認する。

『あの蝙蝠ことは置いておく、あいつらの指揮は大丈夫なんだろうな?俺には何言っているのかわからないからな。』


ブルはにやりと笑いながら、自分の心臓を指さして不気味な声で答える。

『彼らは私が雇った指揮官の()()()()()()()()ので大丈夫です。』


ジャンがブルの顔を凝視する。

『おまえ…まさか!?』


そのとき、前線からはものすごい絶叫が聞こえ、悶え苦しむ声が聞こえていた。


『ほう…目でもえぐられたような声だな、お前の雇った奴らもなかなかやるじゃないか。』


『それはありがたいお言葉です。』


 *


それからしばらくして、さらにものすごい絶叫が聞こえる。

この世の終わりのようなそんな恐怖にかられた声だ。


ジャンはブルにさらに念押しした。

『あいつら…やり過ぎていないよな?』

『大丈夫ですよ、指揮は絶対に従うように調教はしてあります。』


 *


そして静かになって…暫くの時間が流れた。


ブルが連絡が来ない状況に癇癪を起こして周りの伝令たちに当たり散らす。

『連絡はまだか! なぜ前線から連絡が来ない!?』


そして送ったはずの伝令が来ないことに焦り言ってはならないことを言った。

『伝令はまだ戻ってこぬのか! まさか略奪をもう始めてるのではないな!』



蛮刀を手に、ジャンがブルに詰め寄って問い詰める。

『妙だな…おい、ブル、あの蛮族どもは、しっかりということを聞くと言っていたよな?』


そして最後の念押しをした。

『…俺達が行く前にお楽しみなんてことは…ないよな?』


ブルが焦った顔で、どもりながら提案する。

『そそそ…そうですとも、ジャン様、イースタンはもう陥落しておりますでしょうし、向かわれては?』


ジャンが恐ろしい目つきでブルに凄んだ。

『俺の獲物にもし一舐めでもしていたら…、その時はお前の命が終わる時だと思え。』



顔色を土気色にしながらも、すぐに欲にまみれた顔に戻ったブルは周囲の兵に向かって叫ぶ。

『何をしておる!全員、すぐにイースタンに向かうぞ、我々の取り分がなくなってしまう。』


ジャンも怒りに燃えた目で、負けずに叫んだ。

『おめえら、蛮族の好きにさせるな!』


そして、二人は我も忘れてイースタンへ向かう。

兵たちは動揺しながらも、遅れるわけにはいかないと急いで二人の後を追っていった。


 *


兵たちが走り去ってしばらくした後、その後ろの草むらが()()()()動く。


『イースタンは本当に大丈夫なのか…』


とぼやく声と共に、草むらから樽が現れ、街道をふさぐように置かれていった。



ジャンとブルは先頭を切って馬を走らせる。

頭の中は()()()略奪することで一杯だ。

後方の兵たちも我先にとイースタンへ向かう。


それはもはや行軍と呼べる代物では無かった。



程なくしてイースタンの街が見え、門が半開きになっている。


ジャンは憤怒に目を光らせて門へ突進する。


『俺のものに手を出そうなんてふざけやがって!』


…がそこで動きを止めた。


ジャンは周りに向かって叫んだ。

『止まれ! 待て、お前ら待てと言っているだろう!』


ブルが制止を聞かずに門へ突っ込む、


『何を言っているのですか! 今行かずにいつ行くのです。』


門にまであと少し、あともう少しでイースタンに入る…というところでブルの馬がいきなり棒立ちになり、ブルは馬から振り落とされた。


『なっ…どうして!? くそっ、離せ! 離さぬか無礼者!』


ブルは起き上がろうとして叫ぶが体が動かない。鞭のようなものが巻き付いているのだ。


そして鞭の先には桔梗が居た。


彼女はそのままブルを引き寄せて耳元でささやく。

『あなたは大事な証拠なの。』


彼を抱えた桔梗は屋根伝いに飛んでいき、イースタンの街へと消えていった。


ジャンは舌打ちをしながら呟く。

『やはり罠だったか…いくら蛮族が強くても、敵の死体が戦場に無いわけだろうが。全部食ったとでも思ってるのか? あの馬鹿が。』


そして違和感を感じた。


―それにしても後ろの奴らが来るのが遅い。

俺についてきている奴はには三十人強、兵力的にはあと半分は着いて来るはずなのだが、どういうことだ?


後ろを振り返ると、腿を刺された賊が、ふらふらとこちらに近づき…倒れる。


―なるほど…伏兵ってことか。

だがイースタンにそれだけの戦力は無いはずだ。

”何か”がおかしい。


ジャンがあり得ない状況に逡巡していると、はるか後方にあった本陣から火が上がっている。


―まさか…退路を断たれた?

ジャンが混乱している中、蛮族の指揮官たちがジャンの顔色を窺う。



ジャンが怒号を放った。

『てめえら、シャンとしねえか、俺の言葉が伝わらないのは構わねえ。だがな、ここでイースタン攻め落とせねえと、俺たちは終わりだってことだ! 死ぬ気で戦え。』



それにな…と、ジャンがブルからいつの間にかすめ取った人形を持ちながら指揮官の心臓を指さすと、指揮官と賊たちに脅えが走った。



そのとき、街の門から銀のマントに身を包んだ少年が馬に乗って現れ、門が閉められた。



『我こそはイースタンがアケロスの息子ガイ! 黒狼のジャン、もう勝敗はついている。降伏をする意志はあるか?』

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平和な世界で魔王軍と人間の共生のために奮闘するような形で書いていきたいと思っています。
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