世界を越えた駆け落ち
文章校正しました。(2020/5/18)
私達が地上に戻ると、飛蝙蝠は自然に白銀のマントに戻った。
私達を待っていてくれたアケロスが豪快に笑う。
『ミスリルで自由に海を航海する奴は知っていたが…空を飛ぶなんて馬鹿なことやった奴は初めてだ!』
そして、何かを決心した顔で私達に問いかけた。
『ミスリルの棒の時からもしかしたらと思っていたが…ガイとお嬢ちゃんは超越者…だな?』
私は桔梗のほうを横目で見た。
桔梗は静かに私を見つめ返す。
―アケロスさんは信用できると彼女の目が語っている。
私はアケロスに今までの経緯を語った。
*
アケロスは神妙な顔をしながら考え込み、そして真面目な顔になった。
『ガイとお嬢ちゃんがどんな人生だったかは分かった。大したもんじゃねえか。』
そして彼自身のことを思い浮かべて語る。
『ガイ達がこっち来る頃の歳に俺がしてたことなんて、綺麗な嫁さんと小さい娘との生活、そしてミスリルの鍛冶といったところだ。世界が、天下がとかどうでも良かったからな。』
そして私を見て不敵な笑みを浮かべた。
『だがな、ガイ…お前やっぱりヘタレだな。俺だったら天下統一とかそういうの関係なしに、お嬢ちゃん連れてどこまでも遠くに逃げていくぜ。』
桔梗が私を弁護しようとする。
『凱さまには凱さまの事情が…』
彼女がそれを言いかけたところで、アケロスが私達に超越者についての自分の正直な気持ちを告げた。
『まあ、お前らの話を聞くと、伝承の超越者がどうしてあんなに歪んでいるのかは理解できる。ただ、勿体ないよなぁ…折角人生やり直せる機会得たのに、過去の苦しみや怒りに囚われて全部ふいにしちまってる。たとえ英雄様でも、辛気臭くて面白くねえ奴らだ。』
そして両手で私達の頭を撫でた。
『ただ、お前らは別だな。駆け落ちの振りをしていたって言っていたが、本当に世界渡って駆け落ちしてるじゃねえか。馬鹿みてえな世界が認めねえ恋路を、世界越えて成就する。これほど面白えことはねえぜ!』
私も桔梗もあっけにとられた顔をしていたが、こちらの世界に来てからのことを思い出し。
こらえ切れず吹き出した。
『そうだな…世界を越えた駆け落ちか、確かに成り行きとはいえそうなるな。』
アケロスが私達の肩をポンと叩く。そして真剣な目で私をじっと見て諭した。
『何の因果かはわからねえが、好きな女と一緒に生きる機会ができたんだ。今度こそ離すんじゃねえぞ…。』
そして悪戯っぽい顔で桔梗の顔をみてニヤリと笑う。
『まあ…さっきの熱い抱擁見せられたらその心配はねえか!』
桔梗が先ほどのことを思い出して真っ赤になる中、アケロスがさらにとんでもないことを言った。
『それでだな…お前ら、俺達の養子にならねえか?』