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防虫作業

実際のところ泥臭い作業は、

こういう風に納得してもらえないと長続きしないんですよね。

現場のリーダーとかって苦労しているんだと思います。


文書校正しました(2020/5/18)

馬車の幌の中に日差しが入りはじめた頃、私と桔梗は馬車の外へ出た。


ライアンは怪我が治った衛兵と、縛り上げた男を馬車に乗せる。そして、私達と衛兵らに声をかけた。

『俺はちょっとこいつを詰所へ連れていく、こいつらに例の作業教えてやってくれないか?』


そして、私達に手を振ると颯爽と街に馬車を走らせた。


残った二人が私の肩をポンと叩き、私達に指示を仰ぐ。

『ライアンから聞いたが坊主はとんでもないな。あのバインダー五匹を瞬殺したんだって?それで、俺たちは何をすれば良いんだ?』


桔梗がメディから借りた筒に除虫菊を入れ、除虫菊のエキスを抽出していく。

どうやら思ったより出来が良いのか上機嫌だ。

「不思議ですね…思ったより効果あるかもしれない。」



私はその間に衛兵の二人に頼みごとをした。

『たいまつ用の油樽頂けますか?』


彼らが持ってきた油樽に抽出した除虫菊のエキスを混ぜ、布に染み込ませてたいまつを点火する。


私は桔梗に効能を確認した。

「大丈夫そうか?」


彼女は自信をもって太鼓判を押した。

「効果は高いですが、人体には影響なさそうです」


衛兵たちが訝しげに私たちを見ている。

『何をぼそぼそ話しているかわからないんだが、俺たちにもわかるように教えてくれないか?』



私は彼らに昨日ライアンと話した内容を詳しく説明した。


 *


二人は私の説明を反芻している。

『なるほど。 ニクムシにつられてバインダーがここに来ていたというなら、ニクムシを駆除すればよいわけか。そんでもって、その除虫菊のたいまつ油を燃やせばニクムシを殺せると。』


さらに私はハッカ油の効能についても説明した。

『そうですね。あとは体にハッカの香油を塗ってください。蜘蛛系はハッカの匂いがとても嫌いなのでバインダー除けになります。』



衛兵の一人が、ちょっと考え込んで私に尋ねる。

『でもよ、またニクムシが発生したらどうするんだ?』 


私はすかさず答えた。

『そもそもニクムシは草食で草原に住んでいるそうです。一応ここにも多少は草が生えていますが、ニクムシがこれ以上増えるころには、草を食いつくして餓死しているでしょう。』


二人が腕を組みながら逡巡している。


私はもうひと押しだと思って、彼らにわざわざ今回のような手段をする理由を説明した。

『本来ならニクムシ達が餓死するまで待ちたいところなのですが、今はほかのことで兵を割けないはずです。だから少しでも早く事態を解決したいと考えています。』



衛兵の一人がしばらく考えた後、笑顔で私の肩を軽く叩いた。

『解ったよ、やってみるか。しかしあれだな坊主、お前の説明を聞いていると、まるで有能な指揮官かが兵士に指示を出すって感じだ。見事なもんだぜ。』


もう一人の衛兵も、納得した顔で私に笑いかけた。

『もともとライアンからは坊主の指示に従ってくれと言われているからな。やってみることにするぜ。』


その後、とりあえず四人で手分けして作業したが、特にバインダーも出ることがなく一日が終わった。


 *


夕刻になり、ライアンおよび交代要員の複数の衛兵がハッカの香油を積んで馬車で戻ってきた。



ライアンが私達のほうへ駆け寄り、作業の結果について聞いてきた。

『ガイ君、ありがとう助かったよ。バインダーの方はどうだい?』


衛兵の二人が満面の笑みで答えた。

『今日は出没しなかったぜ。ライアン、どうやらこれで良さそうだ。』


そして、私たちの頭を鷲掴みにしてくしゃくしゃにしながらお礼の言葉を言った。

『坊主、嬢ちゃん、あんた達は若いけど大したもんだ。』


衛兵たちの作業などについての引継ぎが終わった後、ライアンが微笑みながら、桔梗に目配せした。

『さて、少し遅くなってしまったが、君達を町に送るよ。お嬢ちゃんもお風呂に入りたいだろう?』


桔梗がニッコリとライアンに忍者特有の言ってはならないことを言いかける。

『大丈夫ですよ、2週間程度なら入らなくて…モガェ…』


―それは女の子が言ってはいけない言葉だ


私は彼女があまりに危険なことを言いかけたので、慌てて口を押えた。


桔梗の口を押さえながら、ライアンに町へ戻りたいと頼む。


ライアンが当惑した顔をしながらも、私達を馬車に乗せて街へと向かった。

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魔王軍の品質管理人

平和な世界で魔王軍と人間の共生のために奮闘するような形で書いていきたいと思っています。
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