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陰謀の影

『凱様』と『凱さま』の違い、

同じ呼び方なんですが案外こういうのって違うものです。


文章校正しました(2020/5/18)

無事、駐屯所に到着した私達は、ローブの男を尋問することにした。


バインダーに襲われたショックに震えながら、ローブの男が語りだす。


『私は…私は…何も知らない、すべてあいつが悪いんだ!』


 *


彼は数か月前に南の街(サウスの街)で小汚い野盗風の男達と賭けをして莫大な借金を負った。


―男は野盗風の男にこう脅されてやむなく実行した。

『俺達はイースタンの傭兵に恨みがあるんでね、ちょいとこの袋いっぱいの卵を東の街の鉱山(イースタンロック)の近くに埋めてこい。最後にこの袋を駐屯所に投げ込んだら借金はチャラにしてやる。』


 *


―その結果がこの蜘蛛(バインダー)騒ぎだ。


衛兵は、今にも彼に殴りかかりそうな剣幕で詰め寄った。

『この野郎、お前のせいで仲間が!』


私はそれを制して彼にその野盗風の男のについて聞いた。

『その野盗風の男だが、見事な曲刀を帯刀していなかったか?』


彼は思い当たる節があったようで何度も頷きながら答えた。

『あ…ああ! 身なりは汚いのにやたら武器だけいいもん持ってたんだ。』



ライアンがこちらの方を見て目を見開く。

『まさか、アルベルトを襲った奴らと…』


私は頷いて同意した。

『どうやら同じようだな。』


 *


夜も遅かったので今夜は駐屯所に宿泊することにして、ライアン達は駐屯所の詰所でさらに男の尋問、私と桔梗はそれぞれ寝袋をもらって馬車でで寝ることした。


桔梗が寝袋から顔を出してこちらを向く。

「凱さま…怒ってらっしゃいますか? でも、()()ではよくあることでしたよ」


私は深くため息をついた。

「別にお前に怒っているわけではない。()()()()は桔梗に傷を負ってほしくはないと思っただけだ」


彼女はハッとしたような顔をした後、意地悪な顔で私の目をのぞき込む。

()()の女は嫌いだとでも?」


私は若干焦った声を出しながらも真顔で返した。

「どんな桔梗でも私の()()()()だ。」



桔梗はクスクスと笑いながら、ちょっと残念そうな顔をした。

「冗談ですよ、本気にしないでください。大切な人…ですね。でも傷を負わないというのは約束できないです。私も凱さまと同じくらいに傷を負ってほしくないですから。」


私は苦笑しながら、軽口をたたく。

「じゃあ私も傷を負わないようにしなければな…」


だが彼女は私をじっと見た後に、にべもなく答えた。

「無理ですね。凱さまは昔から無理しないことがありませんでしたから。」


しかたなく、私は話題を変えてごまかすことにした。

「しかし、久々に桔梗から()()と形式張った呼ばれ方をしたな」


彼女は若干拗ねた顔で、私を詰る。

「今朝はそう呼んでいました。でも、()()()が悪いんですよ?」



普段、桔梗は私を凱さまと親しみを込めて呼ぶ。


―それが桔梗の矜持なのだ。


だが、本気で怒ったときは凱様とものすごく形式張った他人行儀な声で呼ぶ…。

表情をあまり変えないようにしている分、こういったことは結構心に堪えるものだ。


 

私は桔梗の目をしっかり見て、素直に謝罪した。

「そうだな、すまなかった。間違っても私が死ねばよかったなどど言うべきではなかった。」


彼女はホッとした顔で少し笑顔になり話を切った。

「それを解って下さっただけで十分です。さて、明日やらないといけないことがあるので、今日はこれくらいに。」


「そうだな、おやすみ桔梗」


「おやすみなさい凱さま」


先の戦闘で少し疲れたのか、私達はすぐに眠りについた。


 *


馬車の外でライアンが、先ほどの先頭のことを思い浮かべて一人呟く。

『今日のあの戦闘…確かにガイ君はとんでもないな。しかし、年の割にかなり落ち着いていた彼が

 あんなに感情的になるとはね。よほどあの子のことが大事なんだろうさ。』



そして、馬車の中の二人のことを思い浮かべ、ニヤニヤと笑っていた。

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平和な世界で魔王軍と人間の共生のために奮闘するような形で書いていきたいと思っています。
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