私が出来ること
桔梗の回想(2話目)です。
文章校正しました。(2020/5/17)
屋敷に連れていかれた私は、少年からの指示を受けた侍女に湯殿へ連れられ、血なまぐさかった体をきれいに洗ってもらった。
体を拭かれ、浴衣を着せらた後に、侍女にたしなめられる。
「若様の御前で失礼のないようにしなされ。」
そして少年がこの国の将軍の息子ということを教えてもらった。
*
侍女が娘を連れてきましたと、襖の向こうに声をかける。
「入りなさい」
あの少年の声がして、侍女が襖を開けた。
私は意を決して襖の向こうへ進み、周囲を確認する。
そこそこに大きな部屋の中に机があり、その奥に若様と将軍が座っている。
若様からの報告を聞いたのか、渋い顔で将軍が聞きと深く考え込んでいた。
「他国の忍びの娘か…しかも村長がそれを黙っていたとは…」
私はすぐに土下座して必死に嘆願する。
「私と母が悪いのです、父は関係ありません!」
そのとき、若様が穏やかな声をかけると共に私の肩を優しく叩いた。
「桔梗…だったよね、落ち着いて。」
若様が将軍のほうへ向き直り、自分の意見を具申した。
「父上、此度の一件は身寄りのない少女が野党に襲われたのです。まして今の状況であの村長を貶めても何も得られるものはありません。」
若様の意見にに将軍は言い淀んだ。
「しかし…」
若様は将軍の目を見つめてさらに言葉を続けた。
「初の仕事とはいえ、私に全てを任せると申したのは嘘でしたか? 私は桔梗を絶対に護るとこの子の母と約束したのです。」
若様の強い意志を持った目を見た将軍が、諦めたように彼の頭を撫でた。
「そこまで言うのならば全ての責を負う覚悟で護って見せよ」
決着がついた後、若様は私のほうに振り返って自分の名前を教えてくれた。
「さて桔梗、申し遅れたが私の名前は凱という。お前の母親からお前を託された以上、しっかりとお前を護るからな。」
私はこの人のためにできることは何かと思案し、そして決心した。
「凱…さま、私…あなたのために忍びになりとうございます」
凱さまが驚いた顔で将軍と顔を見合わす。
私は凱さまを説得するために、再度自分の意思を伝えた。
「幼いころから忍びの修行受けております。ゆえにきっとお役に立てます。」
彼が困惑した顔で私を止めようとする。
「いや…桔梗、それはあまりに…」
だが、将軍の強いまなざしを受けて、そこで言葉を止めた。
そして、不本意な顔をしながらも私に命じた。
「桔梗…おぬしの気持ちを汲もう、忍びの里へ行くが良い」




