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必要がなくなった将軍の末路

4話までは転移(転生)するまでの経緯になります。

5/16:文章を校正しました。

辺境の小国の将軍の息子に生まれた私は、忍びの桔梗と共に王に仕えて各地を転戦してきた。


武と軍略の才に恵まれた私は、桔梗の優れた忍びの力を文字通り杖として軍略を練り、調略を行うことで戦略的な勝利へと導く。


さらに戦術的な面でも、日々の修練と戦場で磨き上げた武で先陣を切り、敵を討ち滅ぼすことで貢献した。


その結果我が国は天下統一を成すことができた。


国で私の功に及ぶものはなく私の領土は広大となったが、領民に対して善政を敷くことで民は私を慕ってくれた。


 *


天下が統一され国が落ち着いてきた頃、私は王に全てを返上して故郷に帰ってきた。


あまりにも功を立てすぎた私は警戒されて殺されるよりも隠遁生活を送り、平和で静かな生活を送りたかったからだ。


桔梗には国に仕えるようにと命じたのだが、どうしても私に付いて行きたいと固辞したので、仕方なくなく身の回りの世話を焼く御付の者としてついてきてもらうことにした。


故郷に戻ってきた私を最初は”軍神”と呼び、英雄として歓迎してくれた民たちであったが、次第に疎ましげな表情になっているのは、王が私を疎んでいるという噂が民たちに浸透しつつあるということだろうと私は推測する。


いかに領地を返上し隠遁生活を送っていても、やはり過ぎたる力はあらぬ疑念をもたらす。

このまま疑念が深まれば、そろそろ刺客が私に送られる頃だろうと思いつつ、天下の為であればいつでもその首を捧げる心づもりだった。


―ただひとつ、心残りがあるとすれば…


 *


桔梗が部屋に入ってきた気配を感じ、私はそこで思案を止めた。

「どうした桔梗(ききょう)?ついに王が私を殺しに兵をよこしたか?」


桔梗は若干拗ねた顔で私に(かしず)いて言う。

「…相変わらず、気配を消しているはずなのによく私に気づけますね。」


「お前が傍にいると安心するんでね。」


と私が返すと、桔梗は若干顔を赤らめながらもキッと顔を引き締めてこう告げた。

(がい)さまはお戯れが過ぎます。今にも兵が押し寄せようとしているのに、どうしてそんなに落ち着いているのですか。」


「私もそろそろ疲れたので、この首を献上することでお役目をご免になりたいところなのだが。」


「今まで、あれほど国に貢献されたお方が何故このような…」

とはらはらと涙を流す桔梗の頭をポンポンと撫でながら、


「貢献したからこそ、その恐ろしさを知っているだろう…ただ、できればもう少しだけ時が欲しかったな…」


そう桔梗を諭しながらも、外に多くの気配を感じはじめていた。



―この気配、よりにもよって父上の軍勢をけしかけるとは…

抵抗しては父上や親族にも咎が及ぶだろう。



私は手元にあった愛刀を手に取り、自分の首へ添えて桔梗に告げる。

「さて、いろいろとまだ心残りだったが時間のようだな。桔梗よ…これにて任を解く。今までよく仕えてくれた…」



桔梗がまっすぐに私の顔を見据えて私に飛びつく…

「お待ち下さい!最後に私の願いを一つだけ叶えてください。」



ふと唇に柔らかい感触が…そして入り込む何か…

何かを飲まされたと思った時にはすでに遅く、私の体は燃えるように熱くそして視界が閉ざされていく。

「な…桔梗…どうして…」



毒の幻覚なのだろうか、体がどんどん透き通っていく。



最後に見たのは、悲しそうな…でもとても穏やかな顔をした桔梗だった。

「凱さま…今おそばに……私は………」




私は最後まで桔梗の言葉を聞くことができず…その意識は世界の彼方へと飛んでいくように消えていった。

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平和な世界で魔王軍と人間の共生のために奮闘するような形で書いていきたいと思っています。
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