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被毛天使
ペットなど飼っていないのに、
万年床のシーツや枕元に動物の其れらしい毛が絡まっているのが不可解であるし不快だと思う間にまた指先に触れるのだから嫌になり溜息が止まないのはまるで都市世界の下にある地下水脈が沸騰する様な人知れぬ孤独な困惑であると私は思う次第だ―、
―と。
―やたら長尺な思考が渦巻いたのは。
宿酔の所為だろう。
否。
否。
否。否―、
否。
酔眼を開けば、うっすらと結像するのは何か。
私は開く目を、瞬刻にやはり閉ざしたのだ。
私の隣に、乳房と乳房のあいだへ短刀が突き立った血塗れの女の肉体が在り、其のからだはマンモスの様な被毛と天使の様な翼を備えていて、眼はみっつ有る。
息はしていない。
其れは私自身も同様である。
黄泉だろうか。
涅槃だろうか。




