異常な妹の異常な恍惚
―室内に月が浮かんでいる。
―妹の牿子の異常感覚が顕著になってきている。
物色したり品藻したりした末の遮蔽物すら、
―いや其れは量販店の家具コーナーで奪取してきたカーテンでしか無いのだが。―
―私の心は物質的に『遮蔽物』と呼称しはじめている―
―彼女の皮膚にはもう恍惚の源でしか無い様だった。
そもそも世界は転変してしまった。
―たぶん人間は蔓延り過ぎたのだ。『ターミネーターや、マトリックスの世界』の到来を待機するまでも無かった。
生体に不要となった自殺細胞や、増加群の鼠がひとりでに族種単位で自壊していく様に―、
―或る夏の一日に成人も小児も知能を喪い、肉体全体を癌組織さながらに変身させたのである。
―其れは時間にして一時間くらいの寸時だった。
―九割くらいの人類はあっという間に、人肌を持つ球体に成り変わって、化け果てた。
其の球は自爆機構めいた肉体構造を有していて、
―あまり快楽が蓄積すると、
―神経のたかぶりを鎮めきれずに異常発熱して、
―爆発するのだ。
破裂して、ワイン色やサーモンピンクの臓器を撒き散らすのである。
―かつ、球の表在組織である皮膚の部分は、
―性的器官の粘膜のごとく鋭敏化してしまっているらしい。
室内の微風が触れても、ポツポツ鳥肌を勃起さしていくのだった。
私は工夫として、
―宙空に浮かぶ、肉の満月の様な牿子にカーテンの遮蔽を施したが。
―何うやら、其れももう限界らしい。
―室内に月が浮かんでいる。




